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義母には秘密の会 2

義母には知らせず、三番目の子の一歳の祝いの会(ドルチャンチ)を、ごく内輪で開いた。
夫は、二番目の子の時、仕事関係の招待客に、義母のことで「大変だね」と言われた。本当に恥ずかしい思いをしたらしい。二度とそういう会に義母を呼ばない、と決意するに至った。ただ、義父までとばっちりを受けて出席ができなかったのは、気の毒に思う。夫もその点については悔いていた。

この顛末を書いていて、だんだんと記憶が蘇ってきた。義母が会場で何をしたかである。
昔は、自宅に親族や近所の人を招いてチャンチ(祝いの会)を行った。料理や餅菓子を自分達で用意し、残った餅菓子は包んでお客さんに持ち帰ってもらった。
そこで義母は、ビュッフェにある餅菓子を皆に持ち帰らせようと、私に「小さいビニール袋を人数分持ってきて」と言いつけたのだった。餅菓子を袋に分けて、皆が帰る前に配れ、というのである。
しかし、ビュッフェレストランは何組もの客を同時に入れる。私達がドルチャンチをやっている会場の横では、別の団体のドルチャンチ、その横ではまた別のグループが古希の祝いの真っ最中、という具合である。ビュッフェの料理は、全ての団体が同時に利用する。
だからレストラン側は、料理や菓子を客が持ち帰り始めては困る事態となる。当然ビニール袋やパックなど会場に置いてはいない。しかし義母は「厨房に行って、もらってこい」と主張する。
夫が、
「ビュッフェで持ち帰りなんかするもんじゃない」
と言っても、
「無くなればまた補充されるんだから、もらっていけばいいんだ」
と聞かない。ビュッフェの代金は変わらないのだから、少しでも多く持ち帰ろうという考えなのだった。
夫にはねつけられても、しばらくするとまたそれを言い出す。直情的な夫はカッカして、祝いの席だというのに、つい大きな声を出してしまったという訳だった。

今更だが、思う。この時義母を封じる一番良い方法は、
「持ち帰ると追加料金を取られます!」
と言うことであった。

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