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断言したのに・・・

黒田福美氏は言った。
「韓国人にとって、言葉は相手を自分の思う通りに動かす手段なので、自分の言葉に責任があるという意識が薄い。」
それは本当だと思う。しかし、それにしても、義母はあまりに堂々と嘘をつく。感心するほどである。義母のセルフイメージは、「わがまま言っても、嘘をついても許される、幼女」なんじゃないだろうか。

義父母が自宅を改装して、その4階に住み始めてからのことだ。夫と長女とともに、義両親宅を訪問した。
4階に居住スペースが半分しか取れず、部屋が東西に一列に並んでいた。
義母は娘を見て相好を崩し、
「こっちおいで〜。ミカン食べるか?菓子をやろうか」
と、ミカン、菓子、と連呼しながら、一番東側の部屋に連れて行こうとした。そのせりふがしっかり聞こえた私は、娘を連れ戻した。
「なんで!」
と声を張り上げる義母。
「お菓子をやらないでください...」
「やらないよ!!」
いや、今「菓子食べようね」と言っていたではないか!?
「さあ行こうね」
とあくまでも娘の手を引こうとする義母。
「向こうの部屋に連れて行って、お菓子を食べさせるんでしょう」
やんわりと抵抗する私。義母は叫んだ。
「やらないから!何も食べさせない!!」
断言するので、半分は疑っていたものの、私は手を離した。うきうきした様子の義母に、娘は連れられて行った。
しばらくして様子を見に行くと、思った通り、娘は口をもぐもぐと動かしている。居間に連れ帰り、口の中を見るとやはり、チョコレートコーティングされたヌガーのような菓子を食べていた。幼児にはなかなか噛み切れない、固い塊である。前の週に義母がこっそり食べさせたものと同じ菓子だった。
どうやら、どこかでこれを入手し、孫に食べさせるんだという熱意を、先週からずっとごうごうと燃やしていたらしい。
居間に戻ってきた義母に、無駄だと思いつつも言った。
「こういうの、食べさせないでください」
義母は叫ぶ。
「分かった!」
居間には義兄も義姉も居て、無言で見ている。余りにも情けない状況だった。阿呆のように同じせりふ(菓子をやらないでください)を繰り返す私。聞こうとしない義母。
そこヘ、ずっと姿が見えなかった夫が入ってきた。何があったのかを察し、出て行った義母を呼び戻す。
「〇〇に謝って」
驚いたことに、義母に、私に対して謝るように要求したのだった。見るに見かねたのだろう。
もちろん、素直に謝る義母ではない。
「なんで!」
しかしついには折れて、叩きつけるように吐き出した。
「ごめんね!!」
と。その口調は、鶏が「コケーーッ!!」と叫ぶのとそっくりだった。

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