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㉕スプーンの共有をやめてほしいとお願いしてみた結果 2

義母と、今義母と住んでくれている義姉、そして娘と一緒に、外に出かけたことがあった。
娘はまだベビーカーに乗っている時期だった。昼ご飯を食べようと、食堂に入った。大きな蒸しマンドゥ(餃子)が売りの店だった。注文すると、薄い水色のプラスチックの大皿に、10個ばかり載せられて出てきた。具を包んで皮の両端をくっつけ、丸くしたものだ。美味しそうに湯気を立てている。
義母は娘を隣に座らせようとしたが、義姉が気を利かせて自分が義母と座り、私と娘が隣になるようにしてくれた。
義母が真っ先に、ステンレスの容器に入ったご飯を二口ばかり食べた。そして次にそのスプーンで、テーブルの向かい側にいる娘に食べさせようとした。私は断り、あらかじめ取り分けておいたご飯を、新しいスプーンで食べさせた。この時また、もう何十回目だかわからない、「ウェー!(なんで)」「スプーンは別々にしていますので…」のやり取りがあった。
すると義姉が、義母に向かって、
「スプーンと箸は、別々にしなきゃいけないよ。分かった?」
と申し添えてくれた。ありがたい事だが、逆にヒヤリともした。義姉の口調が、まるで大人が小さな子供に向かって言い聞かせるような調子だったからである。
義母は無言で、むっつりとした顔をしていた。少ししてまた先程と同じやり取りが繰り返され、義姉はまたもや子供に言い聞かせるような口調で義母をさとした。
こんな状態なので、私の食欲はどこかに行ってしまい、食事が進まなかった。大皿のマンドゥは大半が手つかずで残ってしまった。
すると義母が言った。
「このマンドゥ、もったいない。もっと子供に食べさせなさい」
もう少し食べさせてもいいかな、と思い、「はい」と返事した。すると義母は自分のスプーンを持った手を伸ばし、手つかずのマンドゥを端から突き崩し始めたのである。
「ほら、こうやって、細かくして、食べさせなさい」
残っていた全てのマンドゥはまんべんなくスプーンを突き刺されて、ぐちゃぐちゃになった。包んでもらって持ち帰ろうかと思っていたのだが、諦めた。
義母が、
「さあ、食べやすくしたから、やりなさい」
と急かす。
この時、
「でも、お義母さんのスプーンが全部触ってますよね」
という言葉が喉まで出かかっていたのだが、あと10センチ、という所で止まってしまった。私は端のほうの、義母のスプーンが触れていないだろうと思われる所を少し取って娘に食べさせた。
義母のこれ程の執念はどこから出てくるのか。「嫁の分際で指図するのが気に入らないから、あくまでも言う事を聞いてやらない」ということだったのだろうか。それとも、「唾液が汚いなんて、あり得ない。間違っていることを教えてやる」という考えだったのか。
どちらにしても、私にはとても真似できない偏執だった。分析不能、それが私にとっての義母である。

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