【ポケット物語】怪獣と害虫

「はぁ…」
「大丈夫?」
「…ぅ…ん…」
私の友達は瀕死状態。
しかも腕が1本無い。おまけに背中にぐしゃりとくぼみができて、曲がっているし、謎の液体で濡れている。
それなのに治療道具なんてない。自然に治るのを待つだけだ。
「私は…置いて…子供たちのために…」
残念なことに私達の祖先も子孫も、どれだけ傷ついていても、死ぬことはなかなか無いそうだ。
ずっと痛みを感じているしかないのだ。
「でもあなたも一緒に帰るって言ったじゃない!!約束したじゃない!」
はぁ、と息を吐いて疲れたように友達は壁によりかかる。
「昔…お母さんの言うことを聞かないで…縄張りから出たこと…あるよね…」
「…うん」
「『約束は破るためにある』って。言いながら出ていって…」
「……」
「その…一緒に帰るって約束は…破るためにあるんでしょ?」
友達は微笑んだ。
「でも…」
「いいから置いてって…」
「でも怪獣が来るよ…!」
私達は子供たちのために、わざわざ怪獣のいるところに侵入して、食料を確保しに来た。
ここは3つの間で別れている。
1つは、毒ガスを使う大きな巨大怪獣がいる間。2つは、大きな手のひらで潰してくる怪獣が2匹いる間。3つは、小型だが俊敏で、目の良い怪獣がいる間。
私達は今、怪獣が2匹いる間にいる。
「…分かったってば!」
「それは…良かった…」
友達は力を落とした。
私は思いっきり動いて、巨大怪獣がいる間に向かった。

巨大怪獣が現れる。私は怪獣の足につかまって、ナイフで刺す。
ピュッ、と。出た真っ赤な血を貯め、変わりに毒を注入する。

『がああああああああああああああ』

しばらくすると怪獣が低い声で叫んだ。
(来る…)
すると、円盤を取り出して、周りに、焦げ臭いむんとする臭いを漂わせる。
これが毒ガス。
(2匹がいる間に…!)

私はまた思いっきり動いて、さっきの2匹いる間に戻る。
友達がいたところは………

黒色と赤色が混ざったような液体がびしゃりと飛びちって、関節が曲がった腕が散らばっていた。さらに腹のあたりの肉が、挽肉のように粉々にされて、生々しい色をして、頭は半分欠けていた。

(〜〜!!!)

私は言葉にならない悲鳴を心の中で上げる。
友達は怪獣に叩かれて、潰れた。


友達は…………………死んだ……………

私が動けないところに、怪獣2匹がドタドタと近寄ってきた。

あぁ、殺される。
私はあんなふうに、死ぬんだ。

走馬灯が頭をよぎった…その瞬間。

『ばぁぁんごはぁぁんよおおぉぉぉぉ』

怪獣が集まる合図。
これが鳴ると、巨大怪獣がいたところに全員が集まってくる。
死んだ仲間たちが晩御飯になって…


『はぁぁぁあーい』


断末魔に似た声を上げ、怪獣たちは私と反対方向に走る。
と思ったが、怪獣の一人が私に向かって手を振り上げ、叩いた。
ばちん、と。全身に焼けるような痛みが───



「ねーおかーちゃん、蚊がいたよ。」
「あら。倒した?」
「うん。2匹も倒したんだ。」
「お手柄ね〜。」
「今日の晩御飯は?」
「ハンバーグよ。」
「ヤッター!」
「蚊取り線香つけてる?」
「ええ。蚊がいるものね。」
僕はこの家族の長男。
今日は蚊が多かったようだった。




皆さんそろそろ夏ですね。
蚊取り線香の匂いは夏を思わせます。
あとムヒとか虫除け、日焼け止めとかも。
あと地獄のシャワーも、プールの授業で浴びますよね。
そろそろ夏の風物詩が見えてきました。

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