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シルエット・ロマンス ~受け身と使役の狭間に燃え立つ恋の情念~


私と一緒にnoteデビューした、お友達のノスタルジアさんが先月記事になさっていた、大橋純子さん歌唱「シルエットロマンス」。

【ノスタルジアさんの記事はこちら↓】



なぜかほぼ同じタイミングで私もこの歌の鑑賞・考察を書きたいな、と思っていたところだったので、ノスタルジアさんにそのことをお伝えし、関連記事を掲載しようと決心。

しかし、過去に自分が歌曲研究していた頃の論文・レポートなどを読み返したり、もう一度じっくり考察し直してから記事にしたいなぁ、などと考えているうちに、一ヶ月が過ぎてしまった💦💦💦

さて、そんな言い訳はさておき、今回は歌詞の文法的な部分への着眼点をそのまま記事タイトルにしてみたが、けして小難しい話をしたいわけではない。

結論から先に申し上げると、この歌の詞は「受け身」と「使役」という文法の使い分けによって、恋に溺れていく女性の心理がとても巧みに、繊細に浮かび上がってくるよね、という話がしたいのだ。

「シルエットロマンス」 大橋純子さん歌唱バージョン

作詞:来生えつこ
作曲:来生たかお


来生たかおさん歌唱バージョン


「あなたに恋心ぬすまれて」
「あなたに恋模様染められて」

これらの受け身形の表現は、自分では制御しがたい、抗おうにも抗えない、そうした「恋に落ちていく女性心理」を表していると同時に、ゆったりとしたバラード調のメロディーに詞が乗っていることで、恋仲の男女の間に流れる時間スピードがとても穏やか、かつ緩やかであることがリアルに伝わってくる(と私個人は感じる)。

また、大橋純子さんと来生たかおさんの歌唱テクニック的な相違…については本記事では詳しく触れないが、両者とも一番の歌詞はかなり抑制をかけて歌っている。

そして二番の歌唱から終わりにかけては、恋の情熱の火が大きくなり、胸の鼓動も大きく響くような、そんな熱唱に移行していく。

この歌は元々、同名の恋愛小説の新書レーベル・イメージソングとして制作されたものであるため、やはり歌詞の内容もドラマティックで官能的。

作曲者である来生たかおさんご本人は、その濃密な歌の世界をややあっさりとした表現で歌いこなしていらっしゃる。

が、好きな男性に「恋心を盗まれ」、「恋模様を染められていく」女性心理を男性歌手が歌う場合、あまり感情移入せずに軽く歌い上げてもらったほうが、女性リスナーのハート❤は「その歌の世界に深く染められていく」のでは? などと思ったりする(これまた、私の個人的な感想)。

一方、大橋純子さんの細かなビブラートたっぷりの歌唱も、恋に落ちた女性の心の振動、その大きさが伝わってきて、やはり「歌の世界に引き込まれていく」。

ただし、「受け身形」だけでこの歌の感想をまとめることはできない。

というのも、この歌で最も大事なキーワードになるのはやはり、歌の主人公の

「もっとロマンス 激しく感じさせて」
という、使役表現や、

「もっとロマンス ときめきを止めないで」
という、能動的な表現。

恋心を盗まれ、恋模様を染められ、その心の変化の中で「もっと仕掛けてきて」「もっと感じさせて」と思いをストレートに言語化するようになる歌の主人公。

しかしながら、そこには言葉にすると野暮にしかならない、大人の恋の世界が広がっている。

愛し合う二人はアイコンタクトや、互いの手の温もり、求め合う心と心で想いを伝え合い、やがて「両得の恋の世界」を築いていく。

それが深い愛情へと変わるかは解らないが、ともかく、新しい恋の扉はこうしてそっと開かれていくのだ。

私はこの歌の「受け身」と「使役」に耳を「奪われる」たびに、「もっとロマンス 私に仕掛けてきて」と素直になれる恋っていいなぁ、「身動きできないほど抱きしめられたいなぁ」などと思う。

つまり、何度聴いても、この歌の詞の巧みな仕掛けに「引き込まれ」ていく私がここにいる。

……

こんな締め方でいいのか甚だ疑問だが、シルエット・ロマンスの歌の世界・余韻に浸りつつ、今日の記事はここまでとしたい。



ここまでお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m


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