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喰らいつく、追い求める、そして。

 確か、Mr.サンデーだったかな?オテル・ドゥ・ミクニが店を閉めたということを知ったのは。そして、この本の存在を知ったのも、その番組の中で。いつかは行ってみたいなぁと思っていたお店の閉店という事実に驚きつつ、すぐにこの本を買いに行ったのですが、中々本を開くことができずにいました。読み始めると勢いが止まらず、一気に読み進めてしまいました。

 20代の頃、ほんの少しだけ飲食業界でお世話になっていて、その頃、調理の担当だった先輩から三國清三という、すごい料理人がいて、オテル・ドゥ・ミクニというレストランはとんでもないレストランだということをことあるごとに聞かされた記憶があります。中々東京まで足を伸ばすことはできなかったけれど、彼のプロデュースしたお店が大阪にあるという情報を得て、背伸びしてお店に行ってみた記憶が蘇ってきました。

 かなり前のことで、食べたものを細かく覚えてはいないのですが、どの料理もインパクトがあって、見た目でまず圧倒されて、更に味わいながら、味付けはもちろん、食感も含めて最後まで楽しめたようには記憶しています。ただ、かなり緊張していたので、そのお店の中で格好つけて振る舞うのに必死だったようにも思います。今だったらもっと余裕を持って味わうことができたのかもしれません。

 その反面、色々な事件があって、報道されるようなこともあり、一時期はメディアでほとんど取り上げられることがなくなったりした時期もあり、残念に感じたこともありました。この本の中ではそんなことについても赤裸々に書き記されていました。

 幼少期から、過酷な環境の中で育ってこられて、その中であっても常に何か目標を見つけ、喰らいついてきた姿が本の中からひしひしと伝わってきます。何が何でもという姿勢で切り拓いてきた、そんな若手時代。フランス人になりきろうとするまでフランスにどっぷりと浸かり、それでも同しようもない文化とぶつかって、日本での勝負を決めるまで。

 そこから経験を経て、自分自身のスタイルを追い求めてきたのが、オテル・ドゥ・ミクニだったのではないかと思います。吸収してきたものを、素材にぶつけて、お客様にぶつけるという手法で。沢山の人を驚かせ、唸らせてきた時間だったのではないかと思います。

 彼はまた、これから新しいスタイルのお店を出そうとされているようです。たまたま上がってきた、Instagramの様子を見ていると、料理を楽しそうに作り、美味しそうに味わっている姿。新たなスタイルはその先にあるのかもしれません。

 そのお店にいつの日か、座っている自分の姿をイメージしつつ、私自身も頑張らなくてはと、背筋を正した、そんな素敵な1冊でした。

三流シェフ

幻冬舎発行 三國 清三 著 を読んでの感想。

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