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スポーツブランドが選手契約をキャンセルする理由について考えてみた

少し前にヴィッセル神戸の前川選手がメーカーとの契約解除についてnoteに書かれてましたが、最近は世界的に有名な選手であってもメーカーとの契約が切れてしまう選手が増えているようです。

そこで、今回は「スポーツブランドが選手契約をキャンセルする理由」について、ブランド視点でまとめてみたいと思います(今回は基本的にサッカー選手に焦点を当てて書いていきます)。

ブランドがプロ選手と契約する理由

そもそもスポーツブランドとプロ選手の契約と言ってもいくつか種類があります。商品プロモーションの契約で、商品のメインビジュアルやプロモーションに使用するものもあれば、ブランドアンバサダーとして主にCMやプロモーションに出演してもらう契約もあります。知名度の高い有名選手になれば契約金も年間数億円にもなるケースもあります。また、契約とは少し違いますが、スパイクやそのブランドの商品を無料で選手に提供する物品提供という形もあります。

上記契約において、ブランドがプロ選手と契約する理由として個人的に思いつくのは以下の2つです。

1つ目は、売上向上及びブランド価値の向上です。有名選手に自社ブランドの商品を見につけた上でメディアに登場してもらったり、自身のSNSで商品の紹介をしてもらうことで、その商品情報が拡散し売上向上に繋がりやすくなります。また、”有名選手や身近な選手が着用しているからこの商品は安心できる”といったハロー効果も期待できます。そもそも契約選手が有名になればなるほど、そんな有名選手と契約できるだけのブランドであるという対外的なブランド地位も確立することもできます。

2つ目は、プロトタイプのフィードバック及び次の商品開発にむけての情報収集です。プロ選手に自社商品を着用してもらうためには、その商品がプロ選手が着用できる品質や機能を担保している必要があります。近年は各ブランドともプロダクトのイノベーションに力をいれており、今までにない機能やデザインが商品の中で機能するか実際のプロ選手を使って確認することができます。また、現状の商品に対する不満やニーズをプロ選手から引き出すことで将来の商品開発につなげることもできます。

コロナウイルスによる需要低下

では、最近になってスポーツブランドがプロ選手との契約を解除する動きが増えた理由は何でしょうか。

上記で述べたような契約や物品提供の流れを変えた決定的な要因は、やはりコロナウイルスによるビジネスへの悪影響だと考えられます。

例えば、業界トップのナイキですら、今年のQ1は収益自体は為替の影響を除いた金額では前年と変わりませんが、コロナウイルスによる店舗の閉鎖でWholesaleや実店舗での売上は減っています。また、在庫が前年比15%増と、在庫過多になっているようです(セールを実施して在庫過多を減らす施策をとっていますが)。

特に、サッカーなどのチームスポーツはロックダウンや人との接触を避けるために、そもそもまとまな練習や試合ができないといった問題が発生しており、需要低下リスクが高く以前に比べて在庫が余りやすい傾向にあります。そして、リーグ戦や国際試合でスタジアムに足を運んで試合観戦する機会も減ったことで、そもそもプロ選手の露出が減少しています。

つまり、コロナウイルスによって、そもそも売上が減少するリスクがある現状下で、選手の持つプレゼンスや重要度が相対的に減少している状況にあるわけです。

スポーツブランドもスポーツマーケティングを使ってビジネスをしている以上、実際にその売上が減ってきたら経費で削れるところは削りましょうという動きになっているのではないでしょうか。

CEOの経歴や考え方

コロナウイルスのビジネスへの悪影響が一番の理由だとは考えられますが、一方でスポーツブランドのCEOの経歴や考え方もプロ選手との契約に影響しているのではないかと個人的には考えています。

というのも、そもそもこういったスポーツマーケティング費は効果測定が難しいためです。例えば、世界でも5本の指に入る超有名サッカー選手Nと契約したとします。そしてブランドはその選手に紐づくN選手モデルという商品を販売するとします。この場合、確かにそのN選手モデルの売上は集計したら分かるでしょう。しかし、その選手がファッションにも影響力がありそのブランドのスニーカーの売上も伸びる可能性もあります。その場合、売上の増加分がどれくらいN選手に起因するものだったのかを定量的に分析するのはかなり困難です。

このような費用対効果として正確な数字が見えにくい部分をスポーツブランドとして大切にするかどうかは、それぞれの会社の考え方次第といえます。特にCEOのスタンスが大きく影響していると個人的には考えています。

参考までに、ナイキの元CEOであるMARK PARKERさんはもともとシューズデザイナーをしていましたが、現CEOのJOHN DONAHOEさんは元バスケットボールプレイヤーで元eBayのCEOです。

アディダスの元CEOであるHerbert Hainerさんは、キャリアのほとんどをアディダスで積んでおり、現在はFCバイエルンミュンヘンの社長をしています。現CEOのKASPER RORSTEDさんはOracleやHPなどIT畑でキャリアを積んでこられた人です。

https://www.adidas-group.com/en/group/executive-board/

一方、最近選手契約に関して活発な動きを見せているプーマの現CEOであるBjorn Guldenさんは、実はボルシア・ドルトムントの役員もしています。

https://www.marketscreener.com/business-leaders/Bj-rn-Gulden-5798/biography/

これは個人の勝手な感想でしかありませんが、サッカーに関わっている(関わっていた)CEOほど、上述したスポーツマーケティング費に関して寛大な部分がある印象を受けます。最近プーマが選手契約に力を入れることができているのも、もしかしたら現CEOの理解があるからなのかもしれません。


というわけで今回は「スポーツブランドが選手契約をキャンセルする理由」について個人的な考えをまとめてみました。

そうなると、「スポーツブランドとプロ選手の関係は今後どうなるのか」について気になるところですが、それについてはまた時間があればまとめてみたいと思います。

それでは。


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