蒼薔薇まとめ4

ハゴロモのツナ缶を選るその指で僕のからだも弄もてあそぶのだ
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ツナ缶はリーズナブル。それを選る指とは何と軽い指だろうか。しかし主体はそれをむしろ望んでいるように感じる。「のだ」による終止、「僕のからだ」という俯瞰。技巧の映える歌だ。


オイミャコンのこたつの中で世界一幸せそうにねむる猫たち/5.74ft 

人間の頭は不思議なもので、寒さが逆に暖かさを連想させる。世界一寒い街ならばコタツの中は世界一幸せだろう。実景とは思えないが、むしろリアルに猫たちの寝顔が想像できる。面白い歌だ。


適当な理由を付けて上の付く定食頼む何もない昼/朧葱(ロウソウ)

人生、何もない日の方が圧倒的に多い。主体にとって理由なんて何でも良いのだろう。上のつく定食で今日を特別な日にするのだ。ちょっとしたことで人生は素敵に変わる。


静かなる死として描く静物画 朽ちゆく林檎ひとつを選ぶ/けら 

考えてみれば果物は、もぎとられた時から静かなる死へ向かうのである。しかしながら主体はそれを描くことで、逆に命を残そうとしているかのように感じる。まるで自分の生を確かめるように、朽ちゆく林檎に重ねながら。


母の字を貫いている横棒のような覚悟が男にはない/袴田朱夏

男には無いと書くことで、逆に母の覚悟が読み手の心に響く。貫いている、という表現には強さを感じる。正に母の字の形そのものである。発見の歌だ。

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