蒼薔薇まとめ6

夜も更けて進路に悩む娘の愚痴をつらつらと聴くつらつら答ふ/ぽつり

「つらつらと」ということは、もはや習慣化した愚痴なのだろう。それに答える主体の「つらつらと」は決していい加減なのではなく、敢えて合わせることで娘に気を使っているのだろう。「つらつらと」の対比が面白い歌だ。


迎え撃つつもりで覗く真夜中の望遠鏡の透きとおる闇/古河知尋

迎え撃つ、といわれると空に向く望遠鏡はまるで銃のようでもある。でもそれは純粋に宇宙への渇望から向けられたもの。透きとおる闇は、主体自身の奇麗な心なのかもしれない。例えそれが闇であっても、だ。


花であり葉であり茎である事をそれぞれ知りてそれぞれの生/聴雨

植物を部位ごとに分けて捉える発想が新鮮。そう考えると人間だって多数の器官の集合体である。それが人間という集合体になると争う。まるで社会全体を揶揄した歌ともとれる。それは自然の生命力を再認識することでもある。


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