蒼薔薇まとめ その3

私たちサンドウィッチの端っこで抱き締め合えるパンでいようよ/あきやま

サンドウィッチの端っこ、という着眼点がいい。サンドウィッチとしては価値は低いかもしれないが、当人たちはそれでいいのだ。他人のうまくいってる恋愛には世間は案外興味を持っていない、という隠喩にもとれる。


液晶の向こうの人も生きていて保護シートまで気泡が届く/長井めも 

今やウェブ上の世界の距離感は現実のそれを超えようとさえ感じる。そんな現実を揶揄したかのような一首。気泡という空気感がむしろその距離を隔てているという皮肉。保護シートには深い関係を拒む主体の繊細さが滲む。


いつかまた 握手した君のぬくもりをそのいつかまで温めている/有利 

ぬくもりを忘れない主体の想いの強さが伝わる。次のいつかまで温めているのだ。これは強い。そしてそんな相手はきっと幸せだ。しかし伝わっていないことも、また予感してしまう。いつかまた、のリフレインが切ない。


血液を通わせたまま水銀の体温計は眠り続ける/坂名かな 

水銀の体温計は現在、法的に消えゆく運命にある。その血液ともいえる水銀ゆえに。罪など知らず眠りつづける体温計。時代という残酷さを感じる。結句の終止形が切なさを助長する。


万里ゆく砂漠に朽ちし防塁に涙の跡は月光に浮く/バンチャ 

万里の長城を作った人々の気持ちが滲む。そもそも、その人たちは国に虐げられていたのだ。そんな想いもしらずに、建つ。目には見えない涙の跡は、私達が見なければならない涙。歴史の真実を我々はもっと学ばなければならない。


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