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おうちDE茶の湯③-小さな幸せの見つけ方

茶道を学ぶ方も、まったく縁のなかった方にも、今こそ出会っていただきたい茶の湯から得る大切な気づき。今日は、巣ごもり生活は茶室に似ている?!ステイホーム中もこころ豊かに過ごすための「小さな幸せの見つけ方」について綴ります。


巣ごもりで気づいた小さな幸せ
突然始まった外出制限。長丁場になることを覚悟したあたりから、いつもよりも五感が冴えることに気づき始めました。食材の香りや味など、特に食べ物に関して、いつも以上に感じられるようになったのは、私にとって小さな幸せの発見です。

これまで毎日の家族の食卓は、育ち盛りの旺盛な食欲を満たすことばかり考え、仕事の合間に慌ただしくパパッと作り、ささっと片付けらる献立にしがちでした。でも、巣ごもり生活になってからは時間に追われることもなく、じっくり調理する献立が多くなりました。目の前の調理に集中できるので、今まで以上にお出汁やレモンの香りを感じ、思わず嬉しくて深呼吸をしてしまいます。素材の持ち味を活かして丁寧に作った料理は家族にも好評です。(味覚は正直だから...笑)


巣ごもり生活は茶室に似ている?!
巣ごもり中の小さな幸せ発見は、私だけのことではないようです。同じような声を周りでも聞き、最近はテレビや新聞のコラムでも同意見を見かけます。

不便で閉塞感のある巣ごもり生活なのに、こんな非常事態なのに、なぜ小さな幸せを感じることができるのでしょうか。コロナ自粛が落ち着いた暁も、この感覚は失いたくありません。小さな幸せを感じるアンテナを保つにはどうしたらよいのでしょうか。

私は、今の巣ごもり生活全般を通して、ふだんお茶のお稽古で得ている感覚に近いものを感じています。なので、自粛が解消された後も、誰もがちょっとした心がけ次第で、小さな幸せの発見は継続させることができると考えています。少し詳しく書いてみます。


巣ごもり生活では、普段と比べて活動量がぐんと減りました。その代わり、家で過ごす時間が格段に増え、五感をつかさどる身体感覚の刺激もその質が大きく変わりました。特に都会でのステイホーム生活では、物理的な移動が減り、満員電車での移動のストレスや、街に溢れる広告など現代社会の人工的な、好むと好まざると一方的に浴びせられる刺激から一定の距離を保っています。日々の食事も、外食や出来合いのお惣菜を買って済ませる代わりに、自ら手を動かして三度の食事を自炊するようになりました。

その結果、命をつなぐ根源的な、そして主体的なかたちで刺激を得る日常に変わりました。巣ごもり生活が茶室で過ごす時間に似ていると感じるのは、命を支える基本的な衣食住にフォーカスできるという点にあると考えるからです。


茶室で過ごす時間とは
飲食は生きるために欠かせないものです。人間はここに、精神的な意味づけを与えて文化を発展させてきました。茶の湯は、衣食住の生活様式全般をアートにまで洗練させたものと言えます。がんじがらめの型、そこにはまる不自由さ。これらを、身をゆだねる安心感と捉えるといかがでしょうか。連綿と受け継がれてきた歴史の一部になる感覚、これを誰もが味わえる空間。私は一人じゃない。大いなる自然に抱かれる安心感。これを体感できることは、茶道の大きな醍醐味です。

茶室には掛け軸や花、茶碗やお菓子などがしつらえられますが、ただ漫然と荘(かざ)っているわけではありません。茶室にあるモノ、そしてそれらを扱い、お客様をもてなす所作には、大切なメッセージが込められています。招かれた客人はそれらに気づくたび、自分ごとに置き換えてみたり、同席する人たちと感動を共有することで特別な体験となります。

こうした体験は、こころを満たすものであり、小さな幸せを感じさせてくれます。そのためには五感を研ぎ澄ませ、こころの感度を上げておかなくてはなりません。茶室は大切な気づきを与えてくれる象徴的な空間ですので、そのまま日常生活に置き換えることができます。


五感は裏切らない。
人間が外界から情報を得る時の五感の知覚の割合について、こんな情報があります。

視覚83%、聴覚11%、味覚1.0%、触覚1.5%、嗅覚3.5%
出典:産業教育機器システム便覧

味覚、触覚、嗅覚は、割合はわずかであるものの、私たちに大切な情報をもたらしてくれます。特に嗅覚については、記憶との密接な関係がノーベル医学賞の研究で明らかになっています。過去の記憶は自分自身が生きてきた証ですので、特に大切にしたいものです。

五感を研ぎ澄ませて得た体験は、記憶や感情と紐づきます。更にこころで咀嚼され、自分にとって意味のある経験となります。茶室でもステイホームでも、五感を研ぎ澄ませることで、私たちは小さな幸せを見つけることができるのです。


おうちDE茶の湯-小さな幸せ探し
五感というセンサーが感度高く拾える情報は、何気ない日常のひとこまに沢山あります。身近に気づく小さな幸せ、それらが積み重なることは、私たちに生きている実感を与え、人生を豊かにしてくれます。

茶道では抹茶を点てる全ての過程にこころを込め、意味を与えています。抹茶を点てる場所は茶室にこだわらず、ゆったりと深呼吸ができる環境ならどこでも構いません。ステイホーム中の今なら、ご自宅のお気に入りのコーナーやベランダで、お好きな器を用いてぜひ気軽にお愉しみください。

茶席での会話は原則、いま目の前にあること、モノ、そしてそこから派生する話題です。器のこと、お菓子のこと、季節の花などが良いですね。社会問題、お金の話などはタブーです。明るい気持ちになるような話題で、笑顔をいっぱい引き出します。抹茶の栄養と笑顔は、あなたと大切な方々の免疫力を上げます。

先行きの見通せない日々が続きますが、一日のどこかに、ほんの短時間でもこうしたひとときを持ってみて下さい。飲食が単なるカロリー補給ではなく、こころの栄養となるように意識してみて下さい。窮屈な巣ごもり生活が、少しでも豊かになることを心より願っています。

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保科眞智子/茶人。ステイホームは茶室空間に似ていた?!本当のwellbeingとは?"お籠り力"を再確認中。茶道裏千家教授。茶名宗眞。著書「英語DE茶の湯〜こんなとき、どうする?!〜(淡交社)。三児の母。東京都在住。

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コロナ自粛でステイホームしている皆さまへ。心を整え、笑顔で過ごすための、裏千家教授・バイリンガル茶道家による茶の湯エッセイです。私もテレワーク、そして3人の子ども達のママもしているので、巣ごもり生活のストレスにさらされていますが、日々お抹茶をいただくことで心身のバランスを保っています。今こそ茶道の魅力をお伝えしたい!茶道をされる方も、未経験の方も、いますぐ実践できる「おうちDE茶の湯」のヒントをシェアします。

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