Poor Things (哀れなるものたち)

ここまで最高な金曜日は久しぶりかもしれない。
高まる鼓動と頭の中で巡る言葉たちを、どのようにしてまとめようかと、
うずうずしてしまい、帰りの自転車を漕ぐスピードが速まってしまった。
恐らく、私はニヤついていた。


Poor Things。
最初のカットで全てをもっていかれる。
キルティングされた白い生地、四角に連なる文字、そしてもちろん最初のシーン。青いドレス。
そして、ベラの冒険が始まる途端、モノクロの世界が色付く。
映画を観終わった後、この映画のメッセージはなんだったのかとしばらく考える時間が必要だった。
しかし、エンドロールが終わる頃には爽快な気分になっていくのを味わった。
私も、ベラに恋に落ちてしまったようだ。

ベラは、凄まじいスピードで成長をし、喜怒哀楽を経験し、知らないうちにフランス語さえ習得していく。
ベラに惹かれる最大の理由は、彼女の生き方にある。
至って、シンプル。これに尽きる。そして、冒険家の娘であるように、彼女の人生は冒険そのもの。
ダンカンとの出会いから、彼女は性の解放、悦び、悲しみ、憎しみ、恐怖を味わう。パリで娼婦として過ごしていた時は、何故こんなことになってしまったのかと、ベラが泣くのではないかと思った。甘かった。
彼女は泣かない。自分を責めない。なぜ、私はこうなったのかと喚かない。
なぜ、責めないのか。自分を誰かと比較していないからだと思った。
他の女性と自分、世間体と自分、比較するという概念がないように思えた。だから、周りと比べてあーだこーだと自分を責める事がまずない。

ベラの目的は世界をより良くする事。改善をする事。
唯一、涙を流したのは死にゆく赤ん坊を見て現実を知った時だった。
その純粋さは正に聖人。

劇中に流れる不協和音がベラのユニークさをひきたてていた。
彼女の生き方は、現世界では異常だ。
でも、私はベラのように生きたい。生きてみたい。生きることを忘れていた。
結婚式に突如現れた元夫に、ベラは興味本位でついていった。自分のルーツを探りたかったのかもしれないが、結果は最悪。
でも、それもまた経験。学び。冒険。だから、元夫を殺さない。より良くする。
結果、ヤギになってしまうけど。最高じゃん。

出歩きたい時に、出歩き、思うがままに気の向く方へ歩く。
興味のあるものには熱心に。嫌なものには嫌と。
そして愛する人には愛を。欲望のままに。

成長をしても、純粋な心が消えなかったベラ。
大人になるにつれて世間体、いわゆる「良識ある社会」に捉われてしまう。最近の私は、正にそうだった。哀れなるもの。
だからこそ、この映画はとても響いた。自分軸を忘れないように生きていきたい。

また、観ます。

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