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インカの驚異 2

オシロイバナの記事の続きです。

ありふれた花だと思っても、よくよく見ると、思わぬ姿を見せてくれることがよくあります。

オシロイバナも、何か面白い秘密を持っているかも、と思い、ちょっと観察しつつ、調べてみることにしました。


オシロイバナのシベは、蕾の中ではクルクル丸まっていて

花が開くと、シベをグンと伸ばします。

ところが。
オシベはあってもメシベがあるようには見えません。

調べてみたら、こういうことでした。

オシロイバナはメシベ1本、オシベ5本、見た目はかなり似ています。
めしべは長いことで見分けがつきますが、どちらも同じくらいの長さだと、区別が難しくなります。

区別しやすい花を選んで撮ってきました。

一番奥の、長いシベがメシベでしょうか。

さらに驚いたことに、オシロイバナにはいわゆる花びらがないそうです。花びらに見えるのは萼。そして、その下にある萼のような緑色の部分は苞です。

萼と苞については、今までも、タチアオイドクダミユリで出会ってきました。花びらのように見えているのに実は違う、という花は、意外に多いんですね。
それにしても、オシロイバナの色とりどりの部分が萼だとは!

さらに、不思議なことがありました。
オシロイバナは、花色が多彩です。
白、黄、赤系統の単色のほかに、斑入りのものや、一つの株からいろんな色の花が咲いている、いわゆる咲き分けもあります。

どの色になるかは、C遺伝子とR遺伝子という2種類の遺伝子の発現の組み合わせによって決まります。

CもRも発現すれば赤。
Cだけが発現すれば黄。
Rだけが発現、もしくはどちらも発現しない場合は白。

このC遺伝子やR遺伝子に「動く遺伝子」トランスポゾンが入り込むと、斑入りになるそうです。

「動く遺伝子」が入ることで、CやRの働きが阻害され、色素が作られなくなり、白くなる。そして「動く遺伝子」が飛び出すと、遺伝子の働きが復活し、色素を作ります。白いところからトランスポゾンが飛び出せば、その部分だけが黄色くなったり赤くなったりする。これが斑入り、というわけです。


ところが「動く遺伝子」は、細胞が分裂するときに動くものの、何がこのトランスポゾンが「動く」タイミングを決めているのかが解明されていないのだそうです。
出たり入ったりする、動く遺伝子。
既に「遺伝」の概念を超越している気がします。

オシロイバナの色については、下記のサイトに詳しく書かれていました。が、ちょっと面白いことが書かれていたので、紹介させていただきます。

オシロイバナ(英語で four o'clock と言います。夕方から咲くのでこの名前があります。夜に活動する蛾が花粉を媒介しています)の色の研究は、メンデルが遺伝学的な解析を行った材料の1つです。ご存知のようにオシロイバナには白花、黄色花、赤花があります。白花と黄色花を交配したとき、黄色花だけになるはずのところが、ある系統の白花と黄色花を交配すると赤花が出ることから、遺伝様式が単純ではないことに気がついて、それ以上の研究を続けなかったのだろうと私は推測しています。

なんと、オシロイバナはメンデルが研究に挫折した(かもしれない)花なんですね。

なお、動く遺伝子、突然変異や病気の原因となりえ、多様性を増幅することで生物の進化を促進してきたのだそうです。

生物は本当に、一筋縄ではいきません。

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