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小河内の鹿島踊が上演されます!

noteの投稿をはじめた頃に書いた頃、小河内おごうち鹿島踊かしまおどりについて、記事を書いたことがあります。

昨年11月、日本国内24都府県に伝わる41件の「風流踊ふりゅうおどり」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。東京都奥多摩地方に伝わる小河内の鹿島踊もその一つで、小河内ダム建設の際、ダムの底に沈んだ小河内村で受け継がれてきた郷土芸能です。

ダムの建設と共に故郷を失い、一度は途絶えた鹿島踊りはその後、村と踊りを愛する旧村民の手によって復活しましたが、代を重ねるごとに小河内村と人々のつながりが薄くなる中、離散した人々の手によって受け継ぐことの難しさを抱え続けています。

さて、奥多摩の山のふるさと村から、春まつりで小河内の鹿島踊を上演するというおしらせをいただきました。

山のふるさと村 春祭り
小河内の鹿島踊 上映日時:2023年4月9日(日) 13:10~13:40

奥多摩地域は、秩父多摩甲斐国立公園の一角にある風光明媚なところです。花が咲き乱れる奥多摩で、若衆歌舞伎のおもかげを伝える芸能を楽しみながら、江戸初期の空気を味わうのはいかがでしょうか。


ここからは、春まつりとは関係ない、小河内の鹿島踊雑感です。

この踊りを2度見たことがあります。一口に上演といっても、踊り手、囃子方、着付や化粧担当の方々と、大勢の人手が必要です。上演するための最低限の人数を確保するのも大変なことが容易に想像できますが、そんな苦労を感じさせない、華やかな踊りでした。

瓔珞ようらくと呼ばれる金色の冠をつけ、紫色の美しい振袖姿で女装した男性が踊る姿は江戸初期の若衆歌舞伎の面影を残し、新潟県の綾子舞、静岡県の徳山の盆踊と共に、古歌舞伎の流れを汲むと言われます。

瓔珞は、私もつけたことがありますが、硬くて重く、踊っている際には首の角度にも気を使います。落ちないようにあごや頬に食い込むほど、ヒモできつく締め、結構つらかった記憶があります。
女性の姿を模したたおやかな踊りですが、腰の切れや裾を蹴り飛ばす足さばき、いくつもの演目を休みも挟まず上演するタフさは、さすがに男の人だなあ、と思います。

小河内の鹿島踊に限った話ではありませんが、郷土芸能は人から人へと伝えられます。伝える人と伝えられる人の解釈の違い、体つきや身体能力、文化や生活の違い、衣装や小道具の材料など、その時々の事情に左右され、全く同じ形で継承されることはないでしょう。江戸初期に踊られたものと今踊られるものは、演目が同じであっても、どこかしら違いがあるはずです。

昔の姿を守ろうとしつつも、変わることでのみ継承されていく芸能。
春まつりで上演される小河内の鹿島踊も、今だけみることができる現代の踊りであるとともに、江戸と令和の二つの時代を重ねてみることができる貴重な機会なのではないでしょうか。

(ここまで熱弁をふるっておきながら、子供の入学式と重なってしまい、私自身はいけないのです‥。)

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