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「英語詩」なんて触れた事がなかった

初めて「オンラインの講義」を受講した。

大阪にあるNPO法人「こえとことばとこころの部屋」(ココルーム)主催のオンラインイベントだ。

タイトルは「哲学と芸術」で、最近、哲学に興味が出てきた私にとっては運命的な出会いだった。

全く何もわからない状態。
でも、興味があるから飛び込んでみたい。
でもでも、実際に飛び込んでいくのはちょっと勇気が必要で……。

いつもならそんな思考に陥って参加を断念していたけれど、オンラインイベントが増えてくれたおかげで、参加に対するハードルが下がっている。
私みたいなチキン野郎にとっては、とってもありがたい話だ。

講義内容としては「英語詩を読み解いていく」というものだった。
私にとっては全く全く馴染みのない世界。
詩は読まないわけではない。
「金子みすゞ」とか超絶有名所だけなんだけれど。

しかし、これが「英語の詩」となったら話は別だ。
全く馴染みがない。えぇ、全くない。
もしかしたら翻訳した詩は知らない内に読んでいたのかもしれない。
しかし、原文から挑戦した事なんて、生まれてこの方、全くない。

未知との遭遇からスタートした講義でした。

最初は「ウィリアム・ワーズワーク」「The Rainbow」という詩。

初めて知ったけれど、英語の詩も韻を踏んだりするんだね。
「頭韻」とか「脚韻」があって、ある程度の規則性を持っている。
これは新たな発見だった。

また、面白いのは英語を日本語に訳す過程で「どうしてこの英語表現を使用したのか」という事を追及していく。
そして、「日本語にしてその意味を考えていく」という2回、思考を挟まなくてはいけない。
慣れない作業なので凄く頭を使った感じがある。

でも、こうやって詩を読み解く中で「文章表現としての詩の面白さ」にプラスして「立体的に詩を捉える面白さ」を感じる事ができた。

いや、これは本当に面白くって、
詩を見る時って「紙」に書かれていたり、「モニター」に映っていたりするものだ。
でも、これが詩を読み解いていくことによって、文章が立体になっていく。

全く上手い表現が見つからない。もどかしい。

えーっと、文章の構成自体が虹を表していて、
上から下へと虹の色分けがされていて、
なおかつ単語の意味を知った瞬間に、その虹がアーチ状になって、
その虹の下に真っ暗な暗黒の大地が広がっている、というか……。

上手く説明できない!面白いのに!

この読み解けば読み解くほど面白くなっていく快感は何物にも変えられないものだ。
たった数行の文章の羅列が、色をもって立体的に立ちあがっていく感覚。

この瞬間に完全に英語の詩の世界にはまりつつありました。

次に読み解いたのは「アルフレッド・テニスン」「Break,Break,Break」という作品。

先ほどの「The Rainbow」とは打って変わって、もう少し長文の詩。
この作者の「人間と海」の対比が物凄かった。
最初は「何だか屁理屈っぽいなぁ」とか感じていたが、作者のこの作品が書かれた背景等を知っていく中で「言葉を操る詩人が故の苦しさ」というモノが垣間見えた。

この辺りは、もう、理屈ではない。
感覚的な苦しみだし、もがいてももがいても、絶対的に解決できない部分だと思う。
それでも、そこに向き合って言葉を紡ぎ続けるなんて、詩人ってとても因果なものだと感じる。

しかし、ここからが恐ろしい所だった。

タイトルにある「Break,Break,Break」を選んだ理由が「波の表現」と知った時は、全くもって意味がわからなかった。
最初のワーズワークは言葉の並びで立体的な虹を創り出していたのに、今度のテニスンは紙の上に波を表現しているのか!?って。

説明をひと通り聞いて理解はしたが、実感して説明できるほど理解はしていない。
そんな中で説明すると「Break」の「Br」は言葉と音の境目であり、言葉だけれど音という認識で……いや、無理だ。説明できない。
要するに言葉にならない音が波を表現している、という理解しても意味がわからない恐ろしい表現だった。

この話を聞くまでは、詩人という生き物は限られた言葉で、目の前の事象の色や匂い等も表現する人種、だと思っていた。
しかし、この言葉の豊かさにプラスして、紙に書かれた文字という2次元の空間を、こんなにも立体的に表現していく人種なんだと感じた。

この「言葉・文章・音・構成への向き合い方」が凄すぎる。


私が全く触れてこなかった世界に触れて、その瞬間に世界が波状的に広がっていく感覚があった。
一気に世界が壊れて色付いていく感覚。
同時に、その言葉にある意味で縛られている人たちを見て、同じように後ろから何かに足を絡め取られている感覚もあった。

最後に「芸術とは何か」という問いに対して、
「人間の不完全な所に必要なモノ」「当たり前を信じず、ルールや常識を壊していくモノ」と表現されていて、とても素敵だと思った。

この渦中の中でよく「芸術はどうして必要なのか?」という問いが浮かんでくる。
それに対してのロックでパンクなアンサーだと感じた。とても好き。

講師の横道仁志氏の話の展開も面白く、答えに寄り添ってくれたと思ったら、急に突き放してみたり、でも、一緒に歩調を合わせてくれている感覚がとても心地よかった。

あっという間の2時間でした。

また、大阪に行くことができるようになったら、立ち寄ってみたいと感じました。

最後までお付き合いただきまして誠にありがとうございます。 「サポート」も嬉しいですが「スキ」も嬉しいです。 思ったり感じたりしたことがあれば、是非「コメント」もしていってくださいね。 本当にありがとうございました。