塾講師
高校受験の時に、スゴい先生に出会えた。高校受験の時に初めて塾というものに入った。そろばん教室とか公文とか、英会話教室なんて一切入ったことなくて、母親が勧めてきた「昭和の女の子」がやってるとよさそうな習い事を、好きじゃないけどなんとなく続けたくらいだった。あ、そうそう、この塾の初日に、塾長に高橋くんと間違えられたのですよ。「セクシュアリティ」の時に書いたやつね。この塾長が、法学部出身なのですが更に理数系と語学が非常に堪能で、スゴい人なんだけれども、何が一番スゴいかというと、とにかく教え方が上手いのであった。もうだめだこんなの解けないという意識から変えてくれたもんだから、苦手意識を取っ払って数式を解かせたり、理論とか理屈につまづいたりした時にはパッと発想を変えて、お前ならできる!と、丸暗記方式で突破させたり。毎日遅くまで勉強して志望した高校に入れた時は本当に感謝した。その後、高校では部活に明けくれ、数学はやっぱり苦手な教科へと戻ったが、英語については楽しくて一番好きだったので、そのままその道に進んだ。学生になると、その塾長からお呼びがかかり、興味もないし探しもしてなかった、塾講師というアルバイトにありついた。自分で探してたら、フリフリのエプロンが憧れのアンナミラーズとか血迷って行ってたかも。そんなだから、あんまり乗り気ではなかったのだが、学校が終わるとキャピキャピ半蔵門線沿いの女子高上がりのギャルたちと一緒に無理矢理キャピると思うとげんなりしたし、たまにはクラブとか誘ってくれると楽しかったけれど、いつも一緒にグループでいるというのが苦手だからアルバイトのせいにしてさっさと退散できたからそれはよかった。何じゃそれ、だけど、学生時代の女子のお付き合いって本当に苦手だった。一番最初に出会った人が、強烈女子だったからだと思うんだけど、私も世間知らずだったのだわ。この話はまた別の機会に。それで、塾の方は名門女子大英文科のオネエ様が二人いるので、私は小中学生を教えていた。塾講師は遅くまで働かされ、医者かよ!っていうくらいオンコールのように急に土日祝日呼び出され、大変だけど生徒がいるしやりがいもあって本当に楽しかった。就職するまでずっと働かせてもらえた。
就職して20代も後半にさしかかったある金曜日。人々の待ち合わせで賑わう駅改札口で、これから飲みに行く友人と待ち合わせしてると、
「せーんせーい!!!」
と、周りの人より一つ頭の飛び出た背の高い男性が大声で私の方に駆け寄ってくる。せんせい?なに?誰のこと?と思いながら彼が近寄ってくると、私も記憶力はいい方なので、その塾の生徒だった子であるとわかった。大人になっとる!!あのこなのか、としみじみ、あの頃は可愛かったもんね、子供だったもんね、とこっそり思いながら、彼とはそれにしてもこんなところで「せんせい」は恥ずかしいので大声はやめてもらいたいわ、とか、よく覚えていたね、とか当たり障りなく話した。すると、彼は、塾で先生が教えてくれたから英語が好きになって、高校は英文科に進み、就職もT(ブルーの高級宝飾店)に就職したんです、というではないか。う、嬉しいこと言ってくれんじゃないか。こんな20代も後半で中途半端に後輩なんかできちゃって扱いに困ってるわ、セクハラモラハラ(今で言うとね)ジジイばっかだわの職場でストレスしかない私にそんな話をありがとう、と感激した。ではこの辺でという感じかなと思ったら、彼は、続ける。そういえば先生、みんなでこっそり呼んでたあだ名あったの知ってた?と言う。いや、急に何なに?知らない。なにそれ聞きたいけど聞きたくない、でも今聞かないと一生聞けないじゃん。聞く。
「Tバック先生だよ。」
えええええええええ。確かに、あの頃、オードリーヘプバーンのような真っ白のサブリナパンツ流行ってた!透けてたの?!確かに君たちに背を向ける機会多かったけれども!お前たちの目は赤外線カメラか??今みたいに性能のいい透けないパンツないから本当はあんなん食い込むしさ、履きごごち悪くて嫌いなのに無理して履いてたんだよおおお。私はこれしか履けないの、うっふん、とか思って履いてないんだよ!?とかいろんな思いがよぎったが、そうなんだ、もうーみんなったらどこみて勉強してたのよー、やあね、と大人の余裕をかまして別れました。
同じ人の口からT繋がりの話を二つも聞けるとは思ってなかったよ。お笑い芸人のTT兄弟観ると、なんかムズムズするような変な感じがするのはこのせいか?
最後に、読んでいた人に、私がさぞかしアルバイトに明け暮れた清楚な学生であったと勘違いさせてしまったなら申し訳ない。この時代の私が一番長く続けたスタイルは、金のロングヘアにメッシュを入れ、アムラー風のスーツを着ていたことは言っておこう。若くても、生徒になめられないので結構よかったんですよ。アムロちゃん、同い年なのになんであんなにまだ可愛いんだろ。
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