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また髪の毛を切りたいと思った話。
『髪の毛を切る』ことはこれまで、定期的に “やらなければいけないコト”
だったのだけど、これからは “やりたいコト” に変わりそうだ。。。
そう思わせてくれた、美容師の友人がいる。
彼女と出会ったのは、ちょうど10年くらい前に関西から上京してきて新卒で働き始めた頃だった。
その頃わたしは、お笑い芸人になろうか、テレビディレクターになろうか悩んでいて、結局テレビディレクターになるために制作会社に入社した。
そして相方だった友達は、表参道にある花屋さんで働き始めた。
彼女はその花屋さんの奥にある美容室で、当時アスタントをしていた。
相方の紹介で出会った私たちは同い年で、同じ年に東京で働き始めたから、すぐに仲良くなった。
彼女がアシスタントの頃は、営業終わりに練習台になったりとかもしていたのだけど、あれよあれよという間に、アシスタントを卒業して美容師になり、お店の店長になり、フォロワー1万人を超える人気インスタグラマーになり、今では予約をとるのも難しい、カリスマ美容師になっていた。
その彼女が、鎌倉市の長谷に新しく美容室をオープンさせるという。
オープン3日前のインスタで、自分たちで床にワックスを塗り塗りしていたので、私になにか手伝えることがあればとおもい、とラインしてみた。
ほんと!まじでお願いしたい!みたいな返信が来たので、満を持してオープン前日に、お手伝いに馳せ参じた。
お店に行ってみると・・・まだお店の中は様々なモノがわっさわっさあり、鏡の下につける台を設置中だった。
おぉぉ、これ明日オープンできるんかいな。
と思っていたら、
「とりあえず、買い出しに付き合ってくれる?」
と言われて車に乗り込んだ。
即座にお題がでた。
「ごめんね、あのさ、モザイクタイルが売ってるホームセンター探してくれない?できれば白とオレンジがあるところ」
とりあえず近くの大きめのホームセンターに電話をかけること3軒目・・・
「白と、モスグリーンと、ブルーと黒ならありますよ」というお店を発見した。
オレンジはなかったけど、モスグリーンがあるならいってみよう!
というわけで向かった。
その途中、色々と必要なモノが発生して買い足していたら、
帰りの車内はまんぱんで、すっかり夜になってしまった。
でも、ふと運転する彼女を見ると、
なんか、キラキラしていた。
表参道では彼女に髪をきってほしいという人が月に300人はいるらしい。えー!すごいね、と言うと、でもそれに10年かかったからね。
と何気なく言った。
10年かけて彼女に髪を切って欲しいと言う人がコンスタントにそんなにいるのは、本当にすごいことやと思った。
と同時に、表参道から1時間以上かかる場所にお店を出して、どれくらいの人が来続けてくれるのか、わたしならきっと不安になるだろうなと思った。
それでも彼女は鎌倉にお店を出したかったのだ。
お店に戻ると、彼女はそこからずっとトイレにこもっていた。
お腹を壊したわけではない。
トイレの床に、さっき買ったモザイクタイルをはらないと、どうしてもオープンできないのだと言う。わたしならきっと後回しにしてしまうだろう、トイレの床。だって、床にタイルはって無くても、トイレとしては使える。
でも彼女は、何よりもまずタイルをはらないと、オープンできないという。
明日からオープンする予定の店内はまだ、いろんなモノで溢れてるけど、彼女はひたすらトイレの床にタイルをはっていた。
わたしは、そのタイルを固めるためのセメントをトロットロに作りながら、
きっと彼女のこういうところが、多くの人を惹きつけているんだろうなと、おもった。
そんなわけで、なんだかんだありながらも無事お店はオープンした。
そして後日、オープンしたての彼女のお店にお客として訪れた。
その時間はたまたま、お客さんが私だけだった。
シャンプー台にのっかると看板犬のチワワのあずきがお腹にのってきた。(彼女がのせた)
開け放された大きな窓から、風が吹き抜けるような店内で、あずきを撫でながらシャンプーをしてもらっているだけで、溶けていきそうだった。
表参道では、彼女自らシャンプーをするなんてほぼ無いことだと思う。
その後、彼女は、じっくり時間をかけて髪の毛を切ってくれた。
私は彼女が、今の私に一番似合う髪型にしてくれると思っているので特に何も言わない。髪の毛一本一本のバランスを見ながら、それはまるでアート作品でも作っているかのように、丁寧に切ってくれている。
その様子を見ながら、私みたいな一般ピーポーにとって、
髪の毛を切る、ということは、もしかしたら唯一定期的に自分を労れる時間なのかもしれない。と思った。
これまでは、伸びたなら、切らねばならぬ、髪の毛を。
と考えていたのが、また来月彼女に切ってもらうのが楽しみになった。
表参道から離れて、彼女がつくりだしたかったのは、
もしかしたらそういう時間だったのかもしれない。
スッキリした後に出してくれた、美味しいシロップ入りの紅茶は、すごく優しい味がした。
ちなみにそのシロップは、
芸人になったら相方だった友達の友達が、鎌倉でつくっている。
髪の毛を切ってもらっていたらたまたま納品に訪れ、友達になった。
10年前、芸人にはならなかったけど。
相方は友達をたくさんつくってくれた。
帰りはフワフワしながら長谷を散策して帰った。
髪の毛が良い感じになると心もフワフワする。
帰り道、彼女がおすすめしてくれたカレーを食べたら、生クリームがたくさんはいっていて、もっとフワフワした。
この春、彼女に髪を切ってもらって良かった。
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