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映画「ハングリー・ハーツ」感想

※以下ネタバレありますのでご注意ください。

あらすじを3行で説明すると、出会って恋に落ちた二人が結婚して子供が生まれるんだけど妻(ミナ)がエセスピリチュアル健康法にハマって子供の健康を危険に晒すので困った夫(ジュード)が奔走する話です。

これだけ読むと、甲斐甲斐しいジュードに同情しかけるんだけど、所々にこの夫の無自覚な暴力が垣間見えたり、ミナが頑なになっていく原因が散りばめられている。

転勤が決まったミナを引き止めるために中出し、そして妊娠、結婚
特に説明する必要もないくらい最悪。
ミナもジュードとは離れたくない気持ちはあっただけに出産することや結婚については納得したんだろうけど、見てるこっちからしたら無理。
こちとらジュードとは初対面なので。

本人の意志に反して帝王切開
ミナは水中出産を望んでいたが、結局帝王切開で出産させられていた。
これは母子の安全のために最終的には仕方なかったのかもしれないけど、目覚めたらあんなに大きかったお腹がぺったんこになっていたら言葉にならないほどのショックだろう。(そもそもあの状況で本人の同意なく帝王切開って普通あり得ないと思うけど。)

「信頼してるんじゃなくて支配しようとしてる」 
行き過ぎた菜食主義のせいで栄養失調に陥っている息子にジュードはこっそり肉の入った離乳食を与えているんだけどそれに勘付いたミナがジュードに「信頼しているんじゃなくて支配しようとしてる」と言う。
これはその一時だけについての発言ではなく、これまでのジュードの言動に対しての発言なのかなと思った。
ミナは元々神経質っぽい感じで描かれているけど、ミナが不安を感じているときにジュードはあまり真剣に取り合わない。
転勤が決まったときも、鹿の夢を見たときも。

結果的に、ミナは仕事、妊娠、出産という自分の未来や自分自身の体についての大きな決定において自分の意見を蔑ろにされたとも言える。
こういう積み重ねでミナは自分や息子の健康についての自己決定に頑なになっていったのかもしれない。

ジュードの母親…
「息子のことを蔑ろにして…」これヤバい姑しか言わないワードでは…?
結婚式のシーンで「息子は私を人生から追い出している」というワードが引っかかっていたけど、この母親も相当支配的な母親だったのでは、と思う。

顔ぶつけたのに無視してるのすごい恐かった。
連れて行かれた息子を連れ戻しに行ったミナとジュードが揉み合いになり、その反動でミナが壁に顔をぶつけて倒れたとき、ジュードもその母親もミナを一切心配しなかったのがすごい恐かった。いくら正義が違う相手でも倒れたら心配したれよ。

映画はジュード視点で描かれていたけど、ミナ視点で観てみるとつい最近観た「82年生まれ、キム・ジヨン」との類似点があった。自己決定を蔑ろにされた女性を描いているという点だ。
子供を栄養失調にさせるのは虐待なので絶対に擁護しないけど、自己に関する決定を他人によって揺るがされるのは精神に不調を来たすくらいの影響を持つと思う。(この二人の状態を精神の不調と捉えるのはまた違う気もするけど)
そして最終的に命の終わりまで他人に決められてしまうなんてね。
誰だ?性格が悪いのは。監督か?脚本家か?

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