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002大事に取っておくと結局失うという話

私には、フードロスを生み出してしまう、ひとつの悪い癖がある。

それは「大事にとっておき過ぎて、結局腐らせる癖」だ。おいしいものや、いいものを手に入れると、なんだかもったいない気がして、どうしてもとっておいてしまう。カニの缶詰なんか、これいつになったら食べるの? というくらい我が家の冷蔵庫に、いつまでもキラキラと金色の缶が鎮座している。

おいしいうちに食べた方がいいに決まっているのに、どうしても無くなることに抵抗がある。実はこれは食べ物だけではない。大好きなアニメ作品や漫画、小説、絵を描くための自由帳など。最後の方になるとなくなることが嫌で、どうしても立ち止まってしまう時がある。

2018年10月、藤田和日郎先生の「からくりサーカス」という名作がアニメ化された。原作の漫画を読んだことがなかった私は、先生のTwitterでその告知を見て、偶然毎週観るようになった。キャラクターもストーリーも面白くて、泣けて、感動して、勇気が出て、私は毎週、そのアニメを布団の中で見て眠りにつくために、日々の仕事を頑張っていたと言っても過言ではない。

からくりサーカス 藤田和日郎 (小学館)
https://karakuri-anime.com

しかし、最終回が近づくにつれ、だんだんと寂しくなってきた。なんとも、うまく説明できない悲しみが押し寄せて、ついに私は最終回ふくめ最後三回を観ないことにした。
観ないことで、まだ終わらない、というか永遠に終わらないアニメなんだと自分を寂しさから救うことができた。もう何年も前に完結したことは知っているし、何回でも1話から見ればいいじゃん、と思うかもしれないが、私の中で、それはこの特有の寂しさを消すアドバイスにはならない。

すべてがこれというわけではなく、大好きでも普通に最後まで観ることができる作品や、食べ切れる食品もある。でも時々、本当に何年かに一度そういう作品や、食品に出会うことがある。作品は賞味期限がないからまだいいかもしれない。食品の場合は悲惨だ。冷蔵庫の奥底にそっとしまわれたまま、食べられなくなることもある。わかっているのに生み出されるフードロスだ。

さすがに食品でこれは良くないなと、最近は頑張って食べることにしている。それでも、あの寂しさは拭うことはできない。
そんな時私は、あの寂しさや胸の苦しみごと美味しいものを食べているのかもしれない。

美味しいものを食べるということは、実は幸せなことばかりではない。

大事なものを大事にし過ぎて、壊してしまう狂気。人それぞれの向き合い方があるのだ、と自分に都合がいいように解釈して、今日もまた、からくりサーカスの再生ボタンを押すか迷いながら、押さずに眠る。

かに缶


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