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[コラム]オンラインイベントの先にあるもの

アモーレ!(愛する人)
CHANGと申します。

感染症拡大の影響でここ半年様々なことが起きていますね。国や県ベースはもちろん、個人や企業でもそれぞれ立場が違うため何が正しいか誰もわからないまま、全人類いっしょに吸った揉んだしながら一歩一歩進んでいる2020年昨今、いかがお過ごしでしょうか。
今日は久しぶりに筆(?)を取り、この環境と今後について書いてみたいと思います。

僕は普段ポケモンカードのイベントオーガナイザーとして、個人でイベントの開催や、企業さんと組んで企画などをしています。
2019年まではホールを使った競技大会や、行政のご協力のもと地域活性化のためのティーチングイベント、大人向けバー企画など、人と人が直接顔を合わせて楽しむイベント開催をかれこれ20年続けてきました。
ところが、2020年初頭から感染症拡大。3月以降はすべてのリアルイベントを中止し、ステイホームしながら平和に暮らしています。

そんななか、先日大型のオンラインイベントを運営させていただく機会をいただきました。
その運営を含めて得たこと、改めて感じたことなどたくさんあったので、今回はこの感染症到来から2020年7月現在までの僕の考えや、どのようにオンライン/オフラインシーンを捉えるかなどについて記させていただきます。
今回は具体例としてポケモンカードというアナログカードゲームを挙げているのですが、内容的にはイベントと文化という観点でお話できればと思いますので、5分程度お付き合いください。

■オンラインシーンは僕らにとって必要なのか

まずはここからです。
一旦、ここから先は感染症そのものの話は抜きにして、文化として始まったオンラインを用いたコミュニケーションについて言及していきます。

プライベートに限らず、ビジネスや学校など一日の軸となる時間の中でも、オンラインコミュニケーションが急激に増えてきました。
慣れないツールを恐る恐る触る人やここぞとばかりに使いこなしていく人などそれぞれかと思いますが、ツールの熟練度とは別に「どうしても文化的に順応したくない」といった考えの方も現れてきました。
こうなる前のシーンが好き、または早くも懐かしくて戻ってほしいといった想いからそういう言葉が出てくると思うのですが、その気持ち自体は非常に理解できるものです。
動物は何かしらの手段でコミュニケーションを取りますが、中でも人間は表情や言葉といった繊細なコミュニケーション手段を編み出し、それを使うこと自体を楽しんで進化していった歴史があるからです。
ですから「人と人はこう接してきたし、こうすべき」という深層に埋め込まれた感情から、会話が最低限になるオンラインコミュニケーションが嫌悪されるのは仕方がないことなのです。

しかし、世界は変わりました。

会いたかろうが、触りたかろうが、お互いがお互いの距離を取ることが求められる世界に強制的に変換されました。それによって「当たり前」が数ヶ月で塗り変えられていきます。
昔の当たり前と今の当たり前が自分や世間の意思に関わらず変わってしまったのです。
これはある意味ツールの浸透や文化の進化という観点では(皮肉ですが)好都合とも言えます。無数の価値観をすり合わせることなど現実では到底できなかったのに、ひとつの事象によって強制的に手段を塗り替えざるを得なくなったのは、見ようによっては進化と言えるでしょう。

ここでようやくオンラインシーンの是非についての話になるのですが、個人的な結論を言うと「手段として絶対必要だし、今後伸びていくので触らない手はない」といったところかと思います。それは遊びでもそう。
会話や視聴の主戦場がオンラインになった以上、今まで存在していたオンラインサービスの再浸透はもちろんのこと、「ならでは」の新サービスや使い方はどんどん生まれていくでしょう。
自己表現の方法も変わり、人を評価する手段も変わっていくなか、超順応しているまたは順応しようとしている人と、そうでない人たちの間には見えなくも大きな文化の壁ができてしまう可能性もあります。

そして、どうせならできる限り多くの世界に首を突っ込むのが、この世界を楽しめる方法だと思っています。
だから「わたしは何派」と決めつけるのではなくて、あっちもこっちもとりあえず舐めてみてから、自分に合っているのか考えるのが一番柔軟な生き方です。舐めないと、何が良くて何が悪いかよくわかりません。
柔軟だと、考えに深みが出ます。選択した理由そのものが自身の血肉になっているからです。そうした人たちが考えて作った楽しみは、きっと今までにないエンターテインメントになるでしょう。
オンラインシーンは、人がより自分を楽しんでいくための新しいフィールドとして、もしくは乗り越えてレベルアップするための壁として、いま必要なものなのです。

■オンライン/オフライン イベントの違い

それでは、ことイベントという観点において、オンラインとオフラインのシーンの比較をしてみます。
これはどちらのシーンも実体験としてイベントを行ってきたので、肌感に近い内容となりますがご容赦ください。

ここでいうオンラインイベントの定義とは、
何かしらのツールを使い、web上でオフラインに似たような体験を提供する
とします。例えばライブだったり、ゲーム対戦だったり、飲み会だったり。
現実で行えていたことをオンラインでやってみた際の雰囲気を言語化してみようと思います。
まずはオフラインイベントから。

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簡単にいうと、「目の前に人がいて、感じられる」ことが大きなメリットになります。五感で感じた内容をそのままダイレクトに咀嚼できるのは、運営も参加者も同じ。
「その場にいること」自体が価値になり、参加した人ひとりひとりの思い出になっていくのでしょう。

逆に、物理的な部分が課題になります。
会場のキャパシティ、並び列や近隣への配慮といったハコ的な話はもちろん、その場所に行くための交通費や参加費などの金銭的な負担は、現実ならではのものでしょう。
もちろん会場選びや導線・配置なんかもイベントづくりの楽しみであるのですが、比較するならこの箇所かなと思われます。

次に、オンラインイベントについて。

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物理的な側面が排除された部分が、そのまま利点になります。
ツールのルールにもよりますが、理屈上のキャパシティはありませんし、移動する必要がないから交通費もかかりません。会話のログがタイムスタンプつきで全て残りますから、何かあったときのエビデンスにもなります。
いつでも・どこでもイベント参加できるというのはオフラインにはない世界観です。

対して、VRツールでも使わない限りは「その場にいる」雰囲気は味わいづらいかもしれません。僕は特にそうなのですが、会場内を駆け回りながら皆の顔を見るのが好きです。楽しんでいる顔を見るのはイベンターにとっての報酬のひとつですから、それがないのは大きい。
常に対面が画面なので、隣にいる人と「楽しいね」という感情を共有できないのはネックです。
ただ、それはつまり1on1の環境を作りやすいので、何万人の人が集まっても、接した人と密度の濃い交流ができる可能性があるとも考えられますね。

これらを比べてみると、どちらにもどちらにしかないメリットがあり、消すことの難しいデメリットがあることがわかったかと思います。
見ていただいてわかるように、「どちらのほうが優れている」というわけではなく、状況に応じた使い分けが必要であるということです。
今列挙した点は、別にこの感染拡大の環境であることを差し引いても言える点ですから、運営をされる際、または参加される際のお役に立てば幸いです。

では、以上の点を踏まえてオンラインイベントはどんな内容が向いているのでしょうか。

■それぞれの特長を活かせるイベントとは

この際、「今はオフラインで会えないから仕方なくやるしかない」というネガな要因は除きます。
シンプルに上記で挙げたメリットを具現化していけば良いのですが、それらを「どんなイベント」にすればいいのか、オンライン・オフラインともにまとめてみたのが下の表です。
それぞれがそれぞれにしかできないことを最大限のメリットにしてみると、僕の中でこういうイメージになりました。

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オフラインのイベントの良さは言わずもがなです。疲れてヘトヘトになって電車に揺られるにも楽しい思い出ですし、それそのものがかけがえない価値ではあるのですが、オンラインにはオンラインにしかない特別大きな良さがあって、それは「普段会えないひとと会える」というところです。
例えば北海道と九州の人が気軽に遊ぼう、といっても現実ではなかなか実現できません。
ところが、オンラインでコミュニケーションを取ることで一瞬で遊ぶことができます。これがイベントという大きな器になるのであればなおさらで、関わることのなかった他地方の人と、遊びなどを通じて友達になれるかもしれない、というのは大きなアドバンテージです。
しかも今この状況では近隣の友達と遠方の友達でコミュニケーションの方法は変わりません。近くにいる同僚でもZoomなどで会議しますよね。ということはつまり、話す相手との距離の概念が無くなることになるのです。
もしかしたら、地域コミュニティという考え方も変わってくるかもしれません。「地元」という概念はなくなり、よりフラットな立ち位置であらゆる地方の人と遊ぶことができるのであれば、より自分の趣味嗜好に近い人を見つけやすくなります。もちろん求めている人が近くにいればなお良いですが、そうでない場合、「地域」というしがらみから開放されるという見方もできます。
そんな出会いのきっかけを作れるのも、オンラインイベントの醍醐味ではないでしょうか。

■これからイベントが向かう先

と、このようにつらつらとオンだオフだと書いてきましたが、つまるところイベントの本質は「オーガナイザーが面白えと思ったものを、参加者と一緒に楽しみながら作っていく」ということで変わることはありません。
僕がイベントをやる際にいつも「参加者も一緒にイベントを作る」とウンザリするくらい言っていますが、まさにそれが楽しいものになるかどうかはお互いの協力が必要ですし、そういった協力が新しい文化を作っていくのです。
そして、新しい文化を作りやすいのが今なのです。
乗るしかない、このビッグウェーブに。

ちょっとだけ先日の話を。

先日、「Pokemon Japan National Online2020」という企画に参加させていただき、ポケモンカード部門の主宰をさせていただきました。
ポケモンカードというアナログゲームの大規模競技大会ということで、僕は思いついた荒い内容を元にデキるひとに声をかけ、関係各所調整、全体ディレクション、ホームページ制作、他部門とのミーティング、当日はオペレーターと色々やらせていただいたんですが、時間がない中強制的に刺激を受けて成長できた有り難い機会でした。
この企画だからこそ組める最高の人たちと楽しませていただいて、本当に感謝しています。冗談抜きの日本最高のチームで臨んだ、決戦の舞台でした。
そこで、ひとつのできごとがあったので紹介させてください。

目まぐるしく回る業務の中、(ああ、これでやりきったとしても、どうせオンラインだからあっさりドライに終わるんだろうな…)と思っていました。前述の通り、オンラインイベントは画面の中でしか起きていないので、会場にいるたくさんの人たちを感じることはできませんし、スタッフ同士で打ち上げすることもできません。無表情でPCを閉じて身体を伸ばし、椅子でぼーっとして終わってしまうのだろうな、と思っていたのですが、28日の各部門決勝戦から表彰式が終わったとき、目の前に流れてきたのは聞こえないはずの無数の拍手でした。

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数え切れないほどの拍手がチャット欄に流れ、楽しんでくださった参加者の方の見えないはずの笑顔が頭に浮かびました。そして、瞬く間に僕の目には涙が溢れ、画面が滲んで見えなくなってしまいました。
終わったんだ。僕らがこれをやることで、楽しんでくれた人たちが確かに画面の向こうにいて、それを労ってくれたんだ。
そう思うと、あまりの嬉しさに涙が止まりませんでした。
やってよかった。辛いこともたくさんあったけど、やりきってよかったのです。
(まあ、このチャット欄はVGチャンネルなので僕宛じゃなくてVGチームへの賛辞なんですけど)

オンラインでも、画面の向こうには人がいます。
そんな人達の一人でも多くに「楽しい」を届けられたのであれば、イベンターとしてこんなに嬉しいことはありません。

僕はこれからも、色々なイベントを考えて、どこかの誰かに「楽しい」を届け続けたいと思います。
これを読んでいるあなたにも、今回のお話が何かのきっかけになれば幸いです。
良ければ、一緒に何かやりましょう。

ちなみに今も次の企画について全力投球しています。
今月中には発表できると思うので、お楽しみに。
日本を使って、楽しいことをしたいと思います。

それではルールを守って、今日もイベント運営を楽しみましょう。

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