Change.org Japan(チェンジ・ドット・オーグ)
署名を始めた人に聞いてみよう。声をあげた瞬間のこと。 [プライド月間編🌈 松岡宗嗣さん]
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署名を始めた人に聞いてみよう。声をあげた瞬間のこと。 [プライド月間編🌈 松岡宗嗣さん]

Change.org Japan(チェンジ・ドット・オーグ)

ーーお名前と立ち上げたキャンペーン名を教えてください。

松岡宗嗣と申します。自民党LGBT差別発言の撤回謝罪を求める有志の会として、『自民党「LGBTは種の保存に背く」「道徳的にLGBTは認められない」発言の撤回と謝罪を求めます』というキャンペーンを立ち上げました。

ーーまだこの問題をよく知らない人のために、どういった内容なのかご説明をお願いします。

もともと今国会で超党派で合意されたLGBT新法が提出される予定で、各党で持ち帰り、審査が進められていました。しかし、残念ながら自民党からは一部の修正された文言に対して強硬な反対の意見が湧き上がり議論が紛糾。その議論の中で、自民党の一部の議員から「LGBTは種の保存に背く」といった発言があったという報道を受け、発言の撤回、謝罪を求めているキャンペーンです。また、トランスジェンダー女性の実態を無視したトランス嫌悪を助長するような発言もあったことから、謝罪・撤回および辞職を求める署名活動をはじめました。

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ーー集まった9万4千の署名簿を、自民党本部に持っていかれている様子が大きく報道されていました。その時のことを教えていただけますか?

最初は提出しても受け取られないのではないかと思っていましたが、9万4千筆を超える署名簿を自民党本部に持っていきたい旨を連絡すると、対応していただけるという返事をいただきました。受け取ってもらえるといっても自民党本部内には入れず、入り口の門で施設の管理者の方にお渡しをしました。つまり、差別発言をした議員本人が受け取ったわけでも、自民党の担当者が受け取ったわけでもなく、謝罪・撤回にはつながっていません。


ーー当該の発言があってから、スピーディに立ち上げられていましたね。その時はどんなお気持ちでしたか?

正直「またか。」と言う感覚でした。特に「種の保存」に関しては、3年前に杉田水脈議員が「LGBTは生産性がない」と月刊誌に寄稿したことに対して大きな批判が集まり、チェンジ・ドット・オーグでも署名が立ち上がりましたよね。そこから3年が経ちましたが、この間、国レベル、また特に地方自治体レベルでも、議員によるさまざまな差別発言が繰り返されてきました。

そして今回、また同様の差別発言がありました。3年前の発言から何も学ばず、優生思想による差別発言がまた出てしまった。と同時に、こういった発言を毎回「またか」と思って見過ごしてしまうと、「仕方がない」「こういうものだから」と何も改善していない状況が続いてしまう。どうにかしないといけないと感じましたし、諦めずに声を上げることが重要だと思い、有志の仲間とともにオンライン署名を立ち上げました。


ーー声をあげたり、問題を提起する手段は他にもありますが、オンライン署名を選んだ理由は何ですか?

これまでもチェンジ・ドット・オーグでLGBTに関するさまざまな署名が立ち上げられていることは見ていました。今回、また差別発言がされたことに対して、どう対抗するかを考えたとき、やはり多くの声が上がっているということを「数」で示すということが重要だと思ったんです。チェンジでは、直近でも今年3月に森喜朗氏の女性蔑視発言を受けて立ち上がった署名が大きな盛り上がりを見せたこともあり、チェンジ・ドット・オーグで声をあげようという話になりました。

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障がい者差別や女性差別など、この問題の根本について問題意識を持っている人たちが同じように声を上げてくれた


ーー9万4千もの賛同が集まったことは松岡さんにとって意外でしたか?

もともと今回の差別発言が報道されたときにTwitterですでに炎上している様子も見ていましたし、この発言は問題だと認識している人が多いことはわかっていました。ただ、署名となるとやはりどのくらい集まるのか、不安な気持ちはありました。実際は当事者の方からもそうでない方からもすごい勢いで賛同が集まり、社会全体としてLGBTQに対する差別発言が問題だと思っている人が多いということが可視化されたことは、勇気につながりました。

ーー賛同してくれた人たちからはどんな応援のメッセージはありましたか?

3年前の杉田水脈議員の発言も同様に、子どもを持てる可能性という観点で人に優劣をつけるということ、そしてそれが実際に政策や法律の決定に直結する国会議員という立場の人から出てくるということは、マイノリティの人たちにとっては本当に命に直結する問題です。

このキャンペーンを立ち上げた時、障がい者差別や女性差別など、この問題の根本について問題意識を持っている人たちが同じように声を上げてくれたことでとても勇気をもらえました。

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ただ、今回の署名活動に関して私の中でも反省があって。

5月19日に山谷えり子議員がトランスジェンダー嫌悪を助長するような侮蔑的な発言をしたことが朝日新聞で報道され、Twitter上ではその発言は問題だという声が上がっていました。

そして「種の保存」発言が翌日にTBSで報道され、それもすごく炎上しました。私が署名を立ち上げたのはその夜でした。もちろんこの発言は明らかに差別で、ただ、その前日に報道されたトランスジェンダーに対する侮蔑的な発言も非常に重要な問題であることに変わりありません。実際2018年のお茶の水女子大学がのトランスジェンダーの学生の受け入れを開始して以降、オンライン上でのトランスジェンダーに対するバッシングは激化しています。

もちろん本文の中ではトランスジェンダーに対する差別発言にも言及していますが、「種の保存に背く」という発言は差別発言として注目されやすく、わかりやすい。結果的にトランス蔑視発言を覆い被してしまったような形にしてしまった面もあると感じています。ですが私は、これらふたつの発言は、同じように侮蔑的なのだということ伝えたいです。

ーーそれは具体的にご指摘があったのですか?

トランスジェンダー蔑視に発言に対する抗議の声はTwitter上でも多数あげられていましたが、「種の保存」発言に対してどんどん対抗の声が上がっていく中で、自分たちの声がかき消され、覆い隠されてしまった感じはする、と語ってくれている当事者がいました。私自身もシスジェンダーのゲイであることで特権的な地位にいて、そこを見落としていたのではないかと反省しています。

攻撃的な誹謗中傷の声に対抗するより、少しでも共感してくれる可能性がある人たちに対して連帯を広げたい


ーーLGBTQに関するトピックは、社会的な抑圧や、心ないバッシングを受ける対象になることがあります。そういった時にリフレッシュするために行っていることはありますか?

そうですね、まず私はTwitter上であまり議論はしないようにしています。特に攻撃的なだけのコメントやリプライもたくさんあるので、そのコメントに反応してTwitter上で解決するのは難しいと感じています。時にはミュート(通知が届かない設定)にして、攻撃的な声を目にしないようにするということも実践しています。

というのも、あまりにひどい攻撃には対抗していく必要があることもありますが、私は、同じく声をあげたいと思っている人など、少しでも共感してくれる可能性がある人たちに対して連帯を広げていくことにリソースを割きたいと思っているからです。

ゲイの当事者という意味でいうと、月並みの表現ではあるのですが、何かあった時に最終的に味方でいてくれるパートナーの存在は心の安定という意味では大きいと思います。

パートナーは、私の活動を応援してくれていますが、セクシュアリティをオープンにしていないですし、LGBTQに関する活動をしている訳でもありません。けれど、今回の差別発言に対する私の活動や、攻撃的なリプライが来た時など、私が嫌な思いをしてくれる時に味方でいてくれる存在がいることがとても心強いと思っています。

自民党前での抗議デモも、後ろの端の方で見守ってくれていたり。こういう一つひとつの支えに安心を感じるのかなと思います。

ただ、私の場合はパートナーの存在が大きいですが、人によっては友人や同僚や、同じ気持ちで活動できる知人など、どんな人でも良いと思います。必ずしも恋愛や、または家族といった関係性が最も良い・強いとは思わないです。ただ、誰かが味方でいてくれることは心強いなと私は思っています。

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ーー初めてオンライン署名を始めようとしている人は、往々にしてオンラインでのバッシングがくるかもしれないことに不安を感じている人もいます。オンライン・オフラインに関わらず広く活動されておられる松岡さんから、何かアドバイスはありますか?

心無い言葉や、明らかに議論する気持ちが感じられないような言葉、誹謗中傷に関しては、全然ミュートしていいと思います。なんというか、私は批判ってすごく重要だと思っていて。例えば政治の場にいる人など、より特権性や権力性がある人に対しては批判をしなければいけないと思っているので、そこは私も意識してやっています。なので、同じように批判はもちろん私にも向けられるものでもあって、私の発言や行動でおかしいと思うことがあればそれに対する批判は重要だと思っています。ただ、それが、事実が間違っていたり、誰か・何かが見落とされたりするという意味での批判なのか、根拠に基づかない誹謗中傷なのか、その違いは大きいですよね。

それをしっかり見定めて、明らかな誹謗中傷だろういう言葉は、意識的に見ないようにする(=ミュートする)のは心を守るために重要だと思います。その分をむしろ、自分が見落としている批判をくれた人に向けていくことが重要だと思います。

この現実に対して問題だと思う人に対して、ぜひ投票で意思を示してほしい


ーー声をあげたことによって、自分の中や身の回りで「変わった」と思えることはありますか?もしあれば、それは何ですか?


周りの変化という点でもいろんな変化があったと思います。これまで性的マイノリティの問題に関心があったけれど声を上げたことがなかった人たちが、初めて声を上げてくれたり、応援してるよと地元の友達がシェアしてくれていたり、それはとても勇気になりました。SNS上で連帯してくれている人の声も多く届きました。

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ーーこちらのキャンペーンに関して、今後のご予定や目標があれば、教えてください。

これは結構難しいところなんですよね・・。というのも、今回の差別発言に関して謝罪撤回などの対応は一切なく、そして今はもう国会が閉会してしまったので、このまま自民党としては有耶無耶なまま終わらせようとしているのではないかいうところは否めないと思います。
これから都議選や衆院選もあります。定期的にこうした差別発言が繰り返され、謝罪や撤回等の対応もない。この現実に対して問題だと思う人に対して、ぜひ投票で意思を示してほしいと思っていて、そのために私も引き続き情報を発信していきたいと思います。


ーーLGBTQをめぐっては未だに偏見や、通常の社会のシステムに組み込まれない事柄など、課題が多く残っています。当事者として今傷ついていたり心を痛めている人に向けて、メッセージがあればお願いします。

一人ひとり状況が違うので、アドバイスするのは本当に難しく、私が言えることは本当に限られているなと思います。ただ、私はやはり性的マイノリティの人たちが自分の性のあり方に悩んだり、「自分は普通じゃないのではないか」「病気なんじゃないか」と感じてしまうのは、社会の側に問題があると思っています。

自分自身の性のあり方に関して、すごく辛いと思っている人には、まずはあなたのせいではないということを強く言いたいです。自分で自分を受け入れることはすごく大変な作業だと思うのですが、まずは何より自分という存在を受け止めてほしいなと思います。

ーー『自分で自分を受け入れる』というところは、松岡さんご自身はどんな風に実践されておられますか?

私は、私という存在を否定したり劣位に置こうとしてくる力に対して、私の側に問題があるとは思っていません。そういった意味では、自分のセクシュアリティに誇りを持てている部分もあると思うので、受け入れていると言えるのかも知れません。
ただ、例えばパートナーと街を歩いているときに周りの目線が気になって手を繋いだりできないという側面もあります。自分の頭の中では「社会の側に責任がある、自分がどのように生きていてもそれは私の決定であって、誰かに指図されることではない」とわかっていても、そういった差別や偏見の怖いところは、自分の中にもいつの間にか深く根付いて内面してしまうというところなんですよね。パートナーといるときにどういう言葉をつかって、どういう表現、振る舞いをするのかは、社会の影響をすごく受けていると思います。そういう意味では、自分が自分を受け入れられているかというとそうとも言えない部分もあるのかなと思います。

声をあげ続けることが大切。いま辛い立場に置かれている人よりも、自分がもう少しマシな状況にいるのだとしたら。

ーーキャンペーンを立ち上げる前の"まだ声をあげることができなかった自分"に声をかけられるとしたら、どんなことを言ってあげたいですか?また、それはいつのときの自分ですか?

活動を始めた頃の大学時代の自分に対して、性的マイノリティを取り巻く課題は今と同じく「社会の側に問題がある」ということに気づいたことから活動を始めるわけなんですが、それでも当時の自分が見えている世界や社会の現状や困難に対する理解は、とても限定的だった。学び続ける大切さもそうですし、誰が社会から周縁化されやすい、端に追いやらやすいか考え続けることが重要だと伝えたいなと思います。それは今の自分にも言い続けたいことです。

例えば私は、活動の一環で人前で話す際にもアライ(当事者ではないサポーターの人たち)が声を上げ続けることが大切だと伝えるのですが、私も普段発信する中で、例えば当事者性が高くないトピックについて話す際は「怖い」という気持ちもあります。それは、誹謗中傷を受けることが怖いという意味ではなく、「自分が声をあげることで他の誰かをより追いやってしまったり、誰かの居場所や声を奪ってしまっているんじゃないか」いう部分での怖さです。だけれども、怖いけど行動し続けるということがやはり大事だと思っています。失敗は起こるし、私もまだまだ不勉強な部分がたくさんあります。それでもその怖さを抱えながら、声をあげ続けることが大切だと思うんですよね。声を上げたくても上げられない、いま辛い立場に置かれている人よりも自分がもう少しマシな状況にいるのだとしたら、自分自身の特権や声を上げやすさを利用していくことが大事だということも伝えたいです。

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LGBT成人式で新成人の辞を話したときの松岡さん

ーー松岡さんのお話の中で「差別や偏見などは、社会の側に問題がある」という言葉が何度か出てき他のが印象的でした。それが松岡さんの中で腑に落ちたのは、何か特別な出来事があったんですか?

一番大きかったのは大学生の頃にLGBTQの学生サークルに入ったことをきっかけに、ジェンダー研究をされている先生に出会ったことかなと思います。その先生との対話の中で、自分の中にあった規範に気づくことができたり、解きほぐされていく体験ができくました。それを機に、社会の構造や仕組みについて考えはじめることができました。

それは自分のシスジェンダー男性としての優位性や、一方でゲイという立場でのマイノリティ性などにも気づくことができる経験でした。それまでは、世の中の差別や偏見に対して「社会はそういうものだ」「しょうがない」と思って生きてきたところが多分強くあって。社会にうまく適応して生きていこうと思うと、気づかない方が楽というか、社会の理不尽さを見ないようにして生きて、うまく溶け込んでいく方が実際楽だったりしますよね。ただ、不条理な状況を作り出しているのが、まさに社会の構造や規範だということをその先生との出会いを通して気づくことができました。

例えば、差別を禁止する法律がない状態だと、自分が受けた差別の被害に対して声を上げたくても、それは「あなたの考えすぎじゃないか」と片づけられてしまうことは多々あります。でも、もし法律があればそれが根拠となって相手や世の中に訴えていくことができます

昨年出版した『LGBTとハラスメント』という本の中で、性的マイノリティに関するよくある勘違いをいつくかのパターンに分けて紹介しています。当事者の読者の方にいただいた感想の中に「周りからハラスメントを受けた時に、なんだかモヤモヤするけれど、なんでもやもやするのかをうまく伝えられなかったりしていたけれど、この本を読んでなぜおかしいのかを言語化することができた」と言ってもらえてとても嬉しかったのを覚えています。

差別的な目に遭っても、いきなり声を上げたり怒ったりすることはすごく難しくてハードルが高いですよね。その時に、少なくとも自分の中で、相手の言動の何が間違っているのか言語化して、自分で整理できることは安心できるし武器になる側面もあると思っています。

ーー最後に、松岡さんは、これから日本もしくは世界がどんな社会になっていくといいなと思いますか?

私の団体名は一般社団法人fairです。一人ひとりがフェアに生きられる社会を作っていきたいと思います。


3日間にわたってお届けしてきた、プライド月間リレーインタビュー、いかがでしたでしょうか。Change.orgでは、プライド月間である・ないに関わらず、今後も声が届きづらいマイノリティの人々が安心して声をあげられるプラットフォームで居続けたいと思っています。『大多数ではない』という理由だけで耳を傾けてもらいづらい声の拡声器になれるよう、今後も勇気を出してオンライン署名を立ち上げた皆様をサポートしていきます。
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