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署名を始めた人に聞いてみよう。声をあげた瞬間のこと。 [第2回 大岩凪くん・彩子さん]

このインタビューでは、今までChange.orgで「キャンペーン」と呼ばれる署名活動を立ち上げたことがある方に、署名活動を始めた頃の気持ちやエピソードをお話しいただきます。

第2回目の今回は、にいがたしにあたらしいスケートパークをつくってください というキャンペーンを立ち上げた、大岩凪(なぎ)くん(8)と母親の彩子さんにお話を伺いました。

大好きだったスケートパークが老朽化により閉鎖されることを受け、新しいスケートパークを作って欲しいと立ち上がったこのキャンペーンは、1万8000を超える賛同とともに、凪くんの言葉をそのまま引用して書かれたピュアな進捗投稿が多くの人の胸を打ち、日本全国から応援の声が届けられました。

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キャンペーンが立ち上がって1年。「しょめいのことおぼえてる?」と聞くと「あんまりおぼえてなーい!」と元気よく答えてくれた現在8歳の凪くん。コロナ禍でも子どもが交流できる場を設けるために始めた「みんなの図書かん」「こどもの庭」など、新しいプロジェクトで忙しそうな凪くんは、立派な「小さなアクティビスト」になっていました。どんな時も凪くんをすぐ側で支えていたお母様・彩子さんも一緒に、当時のお話を伺いました。

はじめて書いた 「ちんじょうしょ」

ーー凪くんはどうしてスケートパークが好きだったの?

凪くん:あそんでくれるおじさんがいたから!お父さんのお友だちだった。でもお化けが出そうなところだった...

彩子さん:廃校になった小学校を利用した、児童館みたいな存在だったんです。子ども同士だけでなく、大人との交流の場になっていたり、真剣にスケボーの選手を目指している子も通う場所でした。

ーースケートパークが閉まるって聞いた時はどんな気持ちだった?

凪くん:古いから仕方ないかなあとは思ったけど、家の前では石ころでスケボー出来ないし、残念だった。

ーーその時凪くんとはどんな話をされたんですか?

彩子さん:私が東京で子どもたちが陳情書を書いてサッカーができる公園を作ったニュースを知っていたこともあって、「ちんじょうしょ、っていうのを書くらしいよ」と何気なく凪に言ったことがあったんです。すると凪が早速「あたらしいスケートパークをつくってください!」と書かれた 'ちんじょうしょ' を用意してきたんです。取り壊される時に必ず見られる場所ということでスケートパークのトイレの壁に貼ったそうで、凪は「とりあえず書いて貼ってきた。」と言っていました。そうするとそれを見た周りの大人、子どもが徐々に参加してくれて、徐々に張り紙が増えていったんです。

凪くん:なんかブームになったらしい。ぜんぶで新ぶん紙8こくらいになって、もっとふえていくといいなと思った!

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サンタさんや七夕の短冊とは違うと伝えたかった

ーー署名活動を始めて最初の進捗投稿では「サンタさんを信じている凪に、お願い事は手紙に書くだけでは叶わない場合もあるということ、適切な人に向けて適切な方法で主張しなければ届かない声があるという事を教えました。」という一文を拝見しました。

彩子さん:七夕で願いごとを書くように、'ちんじょうしょ' を貼れば願いが叶うと思うんですよね、子どもって。でも、そういう類のものではないなと思ったんです。紙に書くだけじゃお願いごとって叶わないこともある。「市長にお手紙を書いてみればいいんじゃない?」と言ってみると、「こわい、一人じゃできない。」と不安がっていましたが、ある日凪に「スケパ会議するからちょっと来て」と言われたんです。

スケパ会議とはスケートパーク会議のことで、紙の署名をそれぞれ何枚か持って帰って、できる範囲でみんなが署名を集めてきたらいいんじゃない?という話になりました。「みんなでできるんだったらやりたい。」と言った凪と、署名活動を始めることに決まりました。早速凪が知っている漢字だけを使って、凪が言った言葉を私がパソコンで打ち込み、署名用紙が出来上がりました。

ちなみに凪曰く、私はスケッ人(助っ人の「助」とスケートの「スケ」を組み合わせた凪くん作の造語)に任命されていたそうです。

ーー紙の署名はどの位集まったの?

凪くん:わすれたけど、まあこんなもんですね!(と言って紙の署名を見せてくれる凪くん)

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ーーすごい!集めるときは緊張した?

凪くん:ぜんぜん!

彩子さん:いやしてたよ(笑)近所の餅つき大会でも、近所のおじさんに「市議会議員さんもいるからちょうどいい。前に出て説明しなさい」って前に出させられたりして。

凪くん:いちミリね、いちミリ。

彩子さん:でも結構慣れていってましたよ。最初は学校や習い事に行くときに持っていったり、お友達のお父さんやお母さんにお願いしたりして、そのうち通っていた幼稚園にも持っていったり、職員室で説明させてもらったりもしていました。凪が「こういう署名活動をしています!」といって、私が補足する、という感じでした。

「自分たちの声に意義がある」と信じてやっている子をがっかりさせちゃいけない

ーー紙だけでなく、オンラインでも署名をしようと思われたのはどうしてですか?

彩子さん:子どもたちが本気で希望を持って書いたつたない「ちんじょうしょ」や「しょめい」を見て、がっかりさせちゃいけないと思ったんです。この子たちは、「自分たちがやっていることには意義がある」と信じてやっている。チェンジ・ドット・オーグの存在は前から知っていました。私は大人としてできる範囲で、子どもの凪にはできないことを、ちゃんと手伝ってあげようと思いました。

ーー凪くん新聞に載ったり、市役所の人に会ったりしてたね!

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彩子さん:地元のイベントのブースでも署名活動をしてもいいよとお声がけくださり、そこでは1,070名分の署名が集まり、わざわざ新聞を読んで署名をするために来てくださった方もおられました。子どもたちが自分で集めた539名分の署名も合わせると1,609名分の署名になりました。

ーーすごい数!凪くんは、どんな反応でしたか?

彩子さん:全校生徒が900人なので、1000くらいまではよくわかってたんですけど、オンラインの8,000人とか1万人、とかはよくわかってないみたいでした。「宇宙人がやってる」「こわいこわい」とか言ってました。(笑)

(↓)新聞にも掲載された、地元のイベントのために作った手作りのしょめいポスト。「見せて」とお願いすると「ボロだよ〜。」と言いながら見せてくれる凪くん。

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「出る杭」であることはユニークで、いいこと。

ーー出る杭は打たれるという風潮が強い日本で声を上げることは、否定的な声や心ないバッシングが来ることもあります。オンラインで署名活動を始めることに対して、そう言った不安はありましたか?

彩子さん:親としては、やはり無くはありませんでした。ただオンライン署名は私が管理していたこともあり、何かあったとしても守れると思っていました。あとは私自身が気にしていないのもあると思います。私自身が不登校をきっかけに外国で暮らしていた期間も長く「出る杭タイプ」なこともあるかもしれません。

日本語で「違う」って「間違っている」という意味でも使いますよね。でも英語だと 'different' (違う) と'wrong'(間違っている)は全く別の単語で、決して「違う」ことと「間違っている」ことは同義ではない。むしろ違うことはユニークであり、いいことだと言う文化なんです。

ーー支えになった声や、存在はありましたか?

彩子さん:皆さんが書いてくれるコメントが、凪にも読めるように全部平仮名で書いてくれていたり、本当に優しくて、ついでに私のことも褒めてくれたりして(笑)あたたかいコミュニティだなと実感していました。

ただ、嫌なコメントを言ってくる人もひとりですがいました。ただ「この人もキャンペーンに興味を持っている人だ」と捉えることもできると思いましたし、言い方は子供に対しては適切ではないように思いますが、その人も「ひとつのアクションを起こしている」ことに変わりない。

親類がインスタグラマーなんですが、私たち家族について悪く言うコメントが来たり、違う国の人を言及し、人種差別を含んだ差別をする人たちがいます。

自分の時間と労力を使って少しでも社会をよくするために動ける人と、少しでも時間があれば全然関係ない人たちのことを悪く言ったりする人もいる。それは仕方ない。深い闇だなと思いますが、私たちにできることは、本当に社会をよくするために行動をしていくのみ、という気持ちです。

新プロジェクト 「みんなの図書館」と「こどもの庭」

ーー車庫での「みんなの図書館」はどんな風に始まったの?

凪くん:うちのまえに図書かん作ったの。近じょの友だちに言って、そのままひろがっていった。

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ーーなんでこれを始めようと思ったの?

凪くん:ひまだから。休校はひますぎてやばいの。

彩子さん:コロナ禍で友達に会えない時期も、自分の本を貸せば、人の本も読めるっていう構想だったみたいです。持ち寄った本に自分の色のシールを貼って、貸し借りの記録はノートに書いたりして、そういう繋がりが嬉しいのかもしれません。

凪くん:あとは、何日でかえすっていうのもきめてる!やぶったらばっ金いちまんえん!

ーー高いね!(笑)

彩子さん:あとは、凪が自分で「こどもの庭」というものを始めました。室内で一緒に遊べない代わりに、庭を開放して、ディスタンスをとって遊ぶのはどうかと考えたみたいです。野菜を育てても、畑を耕してもいい。野菜をとっていってもいい。でも実をとるのは1日何個まで、だったりのルールを定めて。

自分が困っていることは、困ったままにしておかなくてもいい。親を巻き込めば何かができるんじゃないか。と思って、ぽんぽんアイデアを出してくるんですよね(笑)

「言葉は届く」と信じられる土台は周りが作る

ーー声をあげたり、アクションを起こすことに抵抗がない姿勢、とても素敵です。

彩子さん:凪がそうなったのは、今まで凪の話をちゃんと聞いてくれた大人がいたことが大きいと思います。買い物に行った先の店員さんだったり、おじさんだったり。その経験が積み重なって、自分の言うこと・やることに対して、「言葉は届く」って信じていられる土台があるように感じます。

ーー自身が大学教員でもあられる彩子さんは、「学生や子どもを育てることは、いつか社会を変えてくれる人たちを育てる草の根運動」とメールで話してくださいました。こちらに関して、彩子さんの思いを詳しくお聞かせください。

彩子さん:私一人じゃ社会も世界も変えられない。でも実際に行動に移したり、話を聞いたりする姿をただただ見せていくということで、いづれ社会に出たときに、変化を起こせる人たちを育てていく。私が種を巻いていけば、いつか芽が出て、そしてその根っこはみんな繋がっている、と思っています。

子育ては大変だし、ぼんやり過ごす日々も多いんですが、社会貢献ができる一つの方法でもあって。私たち大人は将来の納税者を育てている、将来の有権者を育てているわけなんですよね。子どもには生まれた時から人格があって、小さくても立派な市民であると思っています。その権利を守ってあげたいし、周りの大人たちはそれを尊重できる場を作ってあげるべきだと思います。

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ーー同じく声をあげたい方に対して、メッセージをお願いします。

私が教員として学生に教えるときには、みんながリーダーにはならないかもしれない、と言っています。全員が声をあげてキャンペーンを立ち上げてムーブメントを起こす、みたいなことじゃなくていい。その分、声をあげた人にとっての一人目のフォロワーになる勇気もすごく大事だと。

今回は、凪は子どもなのでできないことはあるから、その部分を大人としてサポートしてあげたかっただけで、それは「力が足りない部分がある人に力を貸してあげる」という意味では、年齢や立場に関係なく、いち市民としてできる当然のことだと思います。これが自分の息子ではなかったとしても、私は同じことをしたと思います。

声をあげたい人たちに言いたいことは、7歳の凪は自分の言葉に意味があると信じていた、ということです。今でも自分の言葉に何が意味があると思っていて、自分の行動が何かを変えられると、本当に、本当に思っている、ということです。

私たちは希望を捨てなくてもいいし、世界は私たちが思っているよりずっと素晴らしい。なぜなら、子供がそう信じているから。私たちはそれを信じて、その世界を作っていかなきゃいけないと思っています。

ーーありがとうございました。

※現在も署名は継続中です。是非進捗投稿をチェックしてみてください。