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署名を始めた人に聞いてみよう。声をあげた瞬間のこと。 [プライド月間編🌈 くろまるさん]

ーーお名前と立ち上げたキャンペーン名を教えてください。

僕の名前はくろまるです。立ち上げたキャンペーンの名前は「江戸川区の制服を選択制にしてください!」です。

ーーまだこの問題をよく知らない人のために、どういった内容なのかご説明をお願いします。

江戸川区の区立中学校の制服は、今は児童が自由に選択できない状態なのですが、今後後輩たちが制服を選択できる制度を作ってください。というキャンペーンです。今までは、男子はズボン、女子はスカートと決められた制服しか着用を許可されていませんでしたが、今後は誰もが望んだ制服を選択できる制度を導入してほしいです。

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ふたつの学校がネクタイもしくはリボン、ズボンもしくはスカートを選択できるようになりました

ーーくろまるさんも江戸川区で学生時代を過ごしてこられたんですか?

はい、小中学校が江戸川区でした。

ーーくろまるさんが江戸川区長に署名簿を提出した際、手紙で書かれた「血を吐くような思いで制服を着て登校していた」という言葉がとても胸を打ちました。提出したあと、どうなりましたか?

提出のために行われた面談の際、江戸川区長から「制服の問題で不登校や自殺を考える児童がいてはならない。前向きにこの問題をいろんな視点から考えたい」という答えをいただきました。また、このキャンペーンをきっかけに、ふたつの学校がネクタイもしくはリボン、ズボンもしくはスカートを選択できるようになりました。

ーーその変化を聞いてどう思いましたか?

ゼロだったのが「2」になったのは大きな一歩だと思います。制服選択制を導入する学校が増えることで一人でも制服に悩む児童が減ったらいいなと思います。また、制服のレパートリーを増やしたり、私服で通学するなど、引き続きいろんな視点からこの問題について検討していってほしいです。

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ーー声をあげたり、問題を提起する手段は他にもありますが、オンライン署名を選んだ理由は何ですか?

理由は二つあって。ひとつは僕が所属しているボランティア団体のメンバーのアイデアだったということがあります。もうひとつは、やはりこのご時世なので、紙の署名だと決められた地域でしか署名を集めることしかできないこともあり、決められた地域だけではなくて、日本、全国に署名を集めて届けるエリアを広げたいという気持ちがありました。紙の署名よりは、オンラインの方がもっといろんな人の目に触れることができると感じましたね。

ーー最初は紙での署名活動もしようと思われたんですか?

「署名」ってなるとやはり筆記のイメージが強かったので、近くの駅とか江戸川区内で署名を集めるのかなあと思っていました。でもそれだとエリアも限られるし、もっと色々な人に知って欲しいよねという話になり、今の時代はオンラインでも署名活動ができるよねということで、オンラインになりました。

ーーこの署名を始められたのは、ちょうどコロナが本格化し始めて世界が変わり始めた時でしたよね。

そうですね。署名を集めようと動き始めたのは4月だったので、ちょうど自粛期間でした。初めての緊急事態宣言が出て学校も休みになって、、ちょうどその時期でした。その頃僕は高校三年生でした。

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変わるといいなという気持ちよりは、変えるんだ!という気持ちだった

ーー立ち上げる前はどんな気持ちでしたか?何か不安や、心配なことはありましたか?

初めてのことだったので、楽しみでした。自分が生きてきた中で一番大きな活動になると思ったので、ドキドキもしたし、ワクワクもしました。その反面オンラインということでいろんな人の目に触れるものだから、どこまで自分の情報を出すか、また顔を出すか出さないか、実名でやるかやらないかなど、考えなきゃいけないことも多くあったり・・でもやっぱり楽しみの方が強かったですね。

ーーオンライン署名を立ち上げる前は「不安だった」という方もおられますが、楽しみな気持ちが勝っていたんですね!

そうですね。「今自分が江戸川区を変えようとしてるんだ・・!」とかやっぱりそっちの気持ちの方が強かったです。変わるといいなという気持ちよりは、変えるんだ!という気持ちだったから。なんか、ワクワクでした(笑)

ーー日本全国ではなく、『江戸川区で行こう!』というアプローチは、どういう経緯だったんですか?

自分が江戸川区の小中学校に通ってたっていうのも大きいんですけど、自分がメンバーとして所属しているボランティア団体もLGBTコミュニティ江戸川っていう団体も江戸川区で活動しています。なので最初は江戸川区から、そして東京、全国、と大きくしていけたらと思っていました。

ーーLGBTQを取り巻く課題に関しては、社会的な抑圧を感じたり、まだまだ理解が進まないと感じることもあると思います。活動で走り続けている中で、疲れた時リフレッシュするために行っていることはありますか?

その時は、同じボランティアのメンバーをコミュニケーションを取ることも自分の気持ちのリラックスになりましたし、何よりメンバーがとても優しいので、食事に行ったりしたこともリラックスできる時間でした。個人的にはお散歩が好きなので、公園で日向ぼっこしたり、何もなくポーっとしてる時間もリラックスになりましたね。

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署名活動をきっかけにいろんな人が制服について改めて考える機会を作れた

ーーオンラインを活動の発信源にしていると、反応が返ってくるのもオンラインであることが多いと思いますが、疲れた時にオンラインから離れたりすることはしていましたか?

自分はしなかったです。一部の人からのマイナスな発信もありましたが、DMやリプライ(投稿した内容を見た人から直接返信が来ること)で応援や励ましのメッセージや、この署名活動をきっかけに『他県でも制服選択制導入のための署名を集めてます!』って人がいることを知れたのは、やっぱりオンラインを通じて発信していたからなので、インターネットから離れることはしませんでした。

ーー声をあげたことによって、自分の中や身の回りで「変わった」と思えることはありますか?もしあれば、それは何ですか?

この活動を通して、学生時代、当たり前のように着る制服を「当たり前のように着られない一部の人が悩んでいる」ということを、まだ気づいていなかった人に知ってもらうことができたことです。

自分の署名活動をきっかけにいろんな人が制服について改めて考える機会を作れたんだなということは感じます。はい。僕はDM(ダイレクトメッセージ)だけではなくてブログもやってるので、ブログのメッセージを通していただくこともありました。『今自分の子供がちょうど中学校に通っていて、入学前にスカートを履きたくないと言っています。でも制服を選択できない学校なので、仕方なく履かざるを得なくて、今もたまにスカートを履きたくないと言いながら学校に行っています。だから、私は江戸川区民じゃないけれど、他の県でも制服選択生が導入されたらいいと思います』というメッセージが届いたことがあります。

ーー親世代の人からも応援のメッセージが届いたんですね!

僕も当時17歳だったんで、周りから「すごい!」とかって言われると、もっと頑張ろうって思えたり、それがモチベーションにもなりました。まあ今も18なんで1個年取っただけなんですけど(笑)

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不要な男女分けによって、周りの人が気付いていないところで悩んでいる児童がまだまだいる

ーーこちらのキャンペーンに関して、今後のご予定や目標があれば、教えてください。

制服選択制のキャンペーンについては、今はズボンかスカートからしか選べないと思うんですけど、複数のレパートリーから制服の型を選べたり制服に限らず、私服登校など個人に合わせた形で通学できるようになってほしいです。性別的な問題だけじゃなくてその人の生活とか体質とかもあると思うし。制服で悩む人が一人でも減るような活動をこれからも継続していきたいと思います。

自分も学校に行く中ですごく色んなことに悩んだんです。僕の学校は制服だけではなくて、学校のジャージも男女で分かれていました。色とか、Tシャツのラインやズボンの丈も。体育自体が男女で分かれているので、辛かったです。運動できる子と運動できない子で体育をやればいいのではないかと何度も思いました。また、江戸川区に限らず全国の学校のほとんどがプールを必修としているためにLGBTQ当事者が苦しい思いをしているとよく聞きます。また、そのほかの様々な理由で入水できず、体育の授業をベンチに座ってるだけで終わってしまう子もいます。
陸上競技とプールどちらか選べるようにするなどできるようになったら、毎年夏はプールに入れず暑いベンチに座ってるだけの子も、体育に参加できるようになりますよね。

現にプールのように、学校内での不要な男女分けによって、周りの人が気付いていないところで悩んでいる児童がまだまだいると思うので、誰もが心地よく学校に行ける環境を作っていくための一人になりたいなと思います。

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一部の人が自分の望む生活ができない、権利すら与えられてない事に気づかないことを当たり前にしない


ーーLGBTをめぐっては未だに偏見や、通常の社会のシステムに組み込まれない事柄など、課題が多く残っています。当事者として今傷ついていたり心を痛めている人に向けて、伝えたいことはありますか?

実は自分も偏見や社会のシステムに組み込まれていない事柄で心を痛め立ち直れない人なんです。『やっぱり自分の存在は認められてないんだ。』と感じることも多々あります。その反面、心のどこかで「なにかを選ぶ権利」すら与えられていないことを間違っていると思うときもあります。誰かの言葉や発信に傷ついている中、オンラインを見ると自分と同じように傷ついている人がいて。でもやっぱり僕はまだその人たちに声掛けできないし、自分からも発信できない。言語化できないんですよね。

ーー活動が大きくなって、意見を求められることがプレッシャーになったりもしますか?

今後も活動を続ける上で、社会の流れや変化に気づいて発信する中で、やっぱりいろんな人がリアクションをしてくれるんだろうなということもすごく分かるんですけど、『やっぱり自分たちの存在は認められていないんだ』って思うと、発信する自信がなくなってしまう。
でも、自分より経験や知識のある活動家達が自分の気持ちを代弁してくれているのを見ると、自分たちの存在は当たり前であって、間違ってないよねこれでいいんだよねって安心できます。

ーーご自身の活動が広く知られるようになると、往々にして"立派な活動家!"というイメージを持たれがちかもしれませんが、オンライン署名を立ち上げたからと言って、関連する全ての社会問題に声をあげて意見することはイコールではないですもんね。

そうですね。それでも最低限、LGBTQに限らず、一部の人が自分の望む生活ができない、権利すら与えられてない事に気づかないことを当たり前にするのではなくて、一つ一つの問題を知っておかなくてはならない、他人だけではなくどこかで自分も関わっていると捉えなくてはいけないとは感じます。

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性別に限らず、一人でも多くの人が何かに囚われることなく生活を送ることができる世の中になったらいいな

ーーキャンペーンを立ち上げる前の『まだ声をあげることができなかった自分』に声をかけられるとしたら、どんなことを伝えたいですか?

立ち上げる前の自分は、無意識に一人でやらなきゃいけないと思ってたんですよね。だからなかなか、実現したいと思っていてもきっかけが無かったので活動に移せなくて。でも身近に一緒に頑張ってくれる大人や、実現のために必要なアイディアをくれる仲間と協力することもすごく大切なことで成功につながるよってことを伝えたいです。立ち上げたキャンペーン、成功したと思ってるんですよ。江戸川区にたくさん学校がある中で今は二校、それでも僕にとって二校ってすごい大きくて。

ーーはい!とても大きな変化だったと思いますよ!

それってやっぱりきっかけを見つけてくれたボランティア団体のメンバーや身近に頼れる大人達がここまでサポートしてくれたから今があるんです。あの時、僕だけが、(スカートを履いて学校に通っていた)「中学校辛かったなあ」で終わってたら、きっとこの活動もしていない。なので当時の自分に声をかけるとしたら、やりたいと思う気持ちをしっかりと伝えて持って誰かに相談してアイディアをもらったり協力してと言いたいです。また、誰かに伝えることで、その先の誰かにも伝わるんだということも言いたいです。

ーー最後に、くろまるさんは、これから日本もしくは世界がどんな社会になっていくといいなと思いますか?

性別に限らず、一人でも多くの人が何かに囚われることなく生活を送ることができる世の中になったらいいなと思います。先程のお話にあったように、何に対しても、一部の人が「選ぶ権利」すら与えられず生きづらさを感じています。「選ぶ権利」すら与えられてない人を見て見ぬ振りして社会から置いていかないよう、目を逸らさず課題に向き合うことで一人でも多くの人が生きやすい世の中になると思うんです。
自分の活動がどこかの誰かの何かに役立ってればいいなと思いを忘れずこれからも活動を続けていきたいと思いますね。


明日は、オンライン署名「履歴書から性別欄をなくそう #なんであるの」を立ち上げたNPO法人POSSEの佐藤学さん、『自民党「LGBTは種の保存に背く」「道徳的にLGBTは認められない」発言の撤回と謝罪を求めます』を立ち上げた松岡宗嗣さんのインタビューをお届けします!お楽しみに。