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2024/04/06-12|桜の花びら

04/06

ベッドから出られる気がしないほど眠く、午前中に佐川のおっちゃんが玄関先へ置いていった関███∞改めSUPER EIGHTのグッズも昼過ぎまで回収できずにいた。睡眠時間だけは長いのに、明け方から何度か悪い夢を見ては飛び起きてまた眠り直すばかりで、すっきりとした気分とは程遠い。私の場合ベッドに入る数時間前に考えていたものが夢に出ることが多く、今朝はマルチにハマった友人が完全にキマりきった目で私に何かを語りかけてくる夢だった。彼女のSNSを覗いたのがよくなかった。

家から少し歩いたところに気になるパン屋があって、大体それを思い出すのは定休日の日曜。でも珍しく土曜のうちに思い出せたので、のそのそと起き上がって雑に着替えて買いに出かけてみた。
店に着いてみるとちょっとした行列ができていて期待が高まる。ひっきりなしに回転していて、来た時間がちょうどよかったのか厨房から店内へ次々に焼きたてが運び込まれてきた。今思い返すと店のパンのほとんどが焼きたてだったかもしれない。公園のベンチで食べる頃には多少冷めていたが、中がじゅわじゅわの塩パンはうっかりニヤつきそうになるくらいおいしかった。家からもう少し近ければいいのにね。

04/07

震える手で購入した防災リュックが届いた。店舗で実物を見た上で購入したが、届いてみるとやはりなかなか大きくて置き場に困る。それでもデザインがいいので視界に入っても全くゲンナリしないので買ってよかった。モノの性質上すぐ取り出せない場所にしまっておくのは違うだろうし、まずそんな場所もないので、玄関に置いておくことにした。こいつが必要になる日がいつか来ると思うと怖いが、せめて家の中にいるときであってほしい。

夕方からの予定のために約1時間かけて数駅先まで歩いた。近いから大きな公園の中を突っ切ってしまおうと考えたのが間違いで、まあ見事に花見客でごった返している。人混みを歩くときは我ながら性格が悪くなるので、できれば誰にも見られたくない。知り合いに会いませんようにと願いつつ、往来のど真ん中で突如始まる若者の自撮りに内心悪態をつきつつ、ちびちびちびちびと歩みを進めるのだった。この季節には二度と来ん。

04/08

彬子女王という皇族の方が著したオックスフォード留学記がおもしろく、一気に読んでしまった。彼女の特殊なバックグラウンドを一切無視してしまえば、「研究熱心でまじめな学生さん」といった感じの内容なのだが、海外留学によって生まれて初めて側衛のいない生活を送ったり、いきなりエリザベス女王からお茶に誘われたりと、民間人はまず味わえないレアな体験も多い(その一方で普段は自炊をしたり格安航空を使いこなしたりもしている)。やんごとなき世界と地道な研究生活とのギャップ。明らかに普通じゃない暮らしをしているのに、ご本人の文体には独特の落ち着きがあって、タイトル一つとってもユーモアに富んでいた。和樂でコラム連載してるの初めて知ったのであとで読む。

日本の警察が警察権を行使することのできない海外に日本の皇族が長期滞在をする際、皇宮警察は日本から側衛をつねに派遣しつづけるのではなく、その国の警察関係者に護衛をお願いする。しかし、英国ではそもそも私レベル(女王陛下の従兄弟の子ども)の王族には護衛がついていない。
そのうえ、英国にはアラブやほかのヨーロッパの王族なども多く留学や長期滞在をされている。皇宮警察からの依頼だからといって私に護衛を付けてしまうと、英国内に何十人、何百人とおられる各国の王族・貴族の皆さまにも同じように対応する必要が生じて収拾がつかなくなるので無理なのだそうだ。

PHP文庫『赤と青のガウン オックスフォード留学記』より

04/09

雨の中オフィスに移動した。桜の木の下でバスを数分待つ間に、ビニール傘が桜の花びらでドット模様みたいになって風流だった。でもべしょべしょの花びらをつまんで捨てる作業はけっこう気持ち悪い。なんで桜の時期に限って雨ばかり降るんだろう。

初めての一人暮らしで選んだアパートの裏には、真っ赤な花をつけたサルスベリが植っていた。ちょうど花が見頃のタイミングで内見をしたのだが、その日は雨だった。雨で落ちた小さな花が真下のダストボックスの蓋をぼろぼろ赤く彩っていたのを今でも覚えている。すっきりしたステンレスと紅色のコントラストが妙にきれいで、なんとなくそれが(それだけじゃないけど)物件選びの決め手になったのだった。

04/10

昨日の雨で落ちた桜がカサカサに乾いてバス停の脇のアスファルトにモリモリ積もっていた。人ん家の前じゃないから誰も掃いたりしないのか、ちょっとした雪くらいのボリュームになっていて驚く。

枝についた一つ一つの花はほとんど白いのに、木に生った集合体としての桜の花は薄ピンクに見えるし、そこから落ちて萎んだ花びらはさらにピンクみが増してくる。不思議なもんだなあと眺めていると、向こうから歩いてきた知らないおばあさんが「せっかく咲いたのにねえ、踏むのもったいないわねえ」と、すれ違いざまに声をかけてきた。
言われて気付いたけど、私自身も無意識的にできるだけ踏まないように歩いていたから、それは本当にそう。でも見知らぬ人に話しかけられて即座に切り返すほどの瞬発力が私にはなく、「あっ………はい………」しか言えなくて申し訳なかった。返事もおぼつかない私のことなど特に気にした様子もなく、おばあさんはシルバーカーで豪快に桜を踏みながら去っていった。

04/11

寝不足で体調がイマイチ振るわない。消費期限ギリギリの鶏肉が冷蔵庫に眠っていることを昨晩寝る寸前に思い出してしまい、なんとか火を通さねばとキッチンで小一時間仕事してしまったのが敗因である。もうすべてを諦めて冷凍庫にぶちこんじゃえばよかったのだ。

昨夜は新会社のタレントが東京ドームに集結する実質年越しみたいな大イベントがあり、生配信こそなかったものの、運よく会場に入れたオタクのレポートを読んでは他のオタクと喜び合うなどしていた。来月末の大阪公演は生配信が決定したようなのでそれまでなんとか生き延びたい。
他グループファンも大勢いる中、自軍(自分の好きなグループ)が最高のパフォーマンスで会場全体の空気を掌握したり、グループ間でのめったに見られない心温まる交流が見れたり、こういう祭りはオタクからすると本当に「栄養」でしかないのだ。ありがてえありがてえ。

少し早めに仕事を終え、倒れ込むようにしてそのまま数時間寝た。
睡眠が「夜」と「深夜」の2部制に分かれる時期がたまにあり、私はそれを頭の中で睡眠二毛作と呼んでいる。あまり好ましい状態ではない。

04/12

実家はものすごく裕福なわけではなかったが、経済的な理由で進学の選択肢が狭められたことはなかったし、父方でも母方でも唯一の子どもだったから周囲の愛をわりと独占しながら育ってきた自覚がある。私はとても恵まれていた。だからこそ気付けなかったことも多く、そのせいで生じた大小の後悔が数えきれないほどある。さんざん降り積もった幸せと後悔の残骸でいつか身動きがとれなくなる気がして、時々無性に怖くなる日がある。

有給をとって好きなアイドルの舞台を観てきた。
それなりに長くオタクをやっているが、今日の舞台は人生で1~2を争うレベルの「良席」で、席番を見て軽く己の目を疑うレベルだった。もし私が狂人だったらその場で飛び入り参加できてしまうくらいの距離。たとえクソがつくほど退屈だったとしても絶対寝るわけにはいかない距離。
幸いにして舞台はとてもおもしろく、秒で時間が過ぎていった。主演を務める我が推しの首筋を汗が伝っていく様子が見えたし、それどころか、大声で叫ぶたびに細かな唾が飛んでいくのさえハッキリと確認できるほどだった。手を伸ばせば届くくらいの近距離で見得を切られたときはさすがに気絶するかと思ったが、なんとか平静を保てた(と思う)。
演出上、紙でできた大量の桜が足元にいくつも降ってきたので、おみやげに2枚だけつまんでパンフレットに挟んでおいた。

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