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ラブソングを聴く理由:01


私のアルバムの曲たちが、フィクションかノンフィクションかなんて、実際とってもどうでもいいけれど。

音楽だけで綴るより、たまにはいいかな、と思って。

世界線がどうあれ(最近やたらと世界線と言ってしまうな)、スピンオフ的な、アナザーストーリー的な、書いてみようと思う。


それでは。

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俺のこと本当に好きなの?


呆れるくらいしつこく、聞いてくる人だった。

多分、私はちゃんと好きだったのだけれど、文面から伝わる必死さに、面と向かった眼差しに、少し怯えてしまって、どうしてもダメだと思った。


夏休みで、花火大会に行きたくて

友達みたいに浮いた話がしてみたくって。


一目惚れなんて縁がなくて、燃えるような片思いなんて恋愛ドラマの中だけだと思っていた17歳。

周りが少女漫画に現を抜かす中、やけに冷めていた私は、女友達と夢のようなコイバナを咲かせるより、男友達の部活の愚痴を聞いている方が多かった気がする。


ちょっと、手を繋いでくれる相手が欲しい。


文面にしたらなんだか捕まりそうな気がしてきたけれど、本当にそんな、単純な理由で、丁度いいタイミングで告白してくれた男友達を、彼氏にした。

上から目線な恋愛だったな、と思う。


車側を歩いて欲しい、カフェ代は奢って欲しい、海に連れてって欲しい、ディズニーランドで手を繋いで歩きたい……

周りが羨むような恋がしたかった。


今考えてみたら、好きなんて一文字も無かったのかもしれない。

恋に恋するとはまさにこういうことで、

私は私といる時の彼の表情なんて1つも思い出せないけれど、見せびらかすように歩いた高校の食堂で、後輩に「あの先輩たちのカップル、マジ理想」ときゃっきゃされたのだけは、しっかり覚えている。


そんな彼とは、夏休みの終わりと共に気持ちがすっかり冷めてしまって、お別れした。

確か、他にやりたいことがあるとかそんな理由をこじつけた気がする。


もっと素直になっておけば、とか

もっと相手を信じてみたら、とか。


その頃の私は、いつか別れるかもしれない人に、全信頼を預けることなどできないし、愛情を注げるだけ注いだって、返ってこない可能性が少しでもあるなら、そんなの無意味だと思い込んでいた。

だから、怖かったんだと思う。

俺のこと好きなの?

と、純粋に不安がるあの目が。人と親密に関わることをまだ知らない私を見透かされているような気がして。無垢に私を信じてくれようとしている彼の眼差しを、私はまだ受け入れることができなかった。


今だったら、私はもっと人に対して真摯であるべきで、本当に恋をしたらプライドなんて構わずどこまでだって向かっていけるということも、好きに上も下もないことも、ちょっとはわかる。

そして、理想のきらきらした恋愛よりも、たとえ片思いでも、好きな人とする恋愛が、何百倍も幸せなんだろうな、ということは分かるようになってきた。


馬鹿みたいな恋をしておけばよかった。


20歳を越えると、駆け引きとプライドと、相手を値踏みしないと、「好き」と立ち向かえないのだと知ったときには、もう遅かった。

そして私の初恋も、さらに遅かった。




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次に続く











音楽活動の足しになります、執筆活動の気合いになります、よかったら…!