夢の話

ここ何日か夢の中で夢を見る。同じ夢だけど今日は少し先まで見ることができたので記録しておく。

ふとスマホに目をやると「田丸沙都華」から不在着信が入っていた。けれど私は折り返すのを忘れそのまま眠ってしまう。

気がつくと誰かが家に来ていたようだった。バスルームの床が濡れているし、浴室乾燥で下着が干してあるのが見えた。姿は見えないが玄関に靴もある。なぜかキッチンにも。よく見たら踵部分に幼稚園や小学校低学年の子よろしく「田丸沙都華」と名前が書いてあった。シャワーを浴びたうえ靴を洗ってそのまま干したのだろうか、食事を作る場所に靴を置いておくなんて非常識な気もするけれど、何より名前が書いてあることに違和感を覚える。

察するに、姿は見えないが彼女が来ていたのだろう(靴や下着が家にあるということはそれなりに親しい間柄のように思える)、眠っている私に気を遣って起こさずにいてくれたようだ。頭の中で彼女の行き先を想像する。けれど思い当たる場所はなく、なんとなく何かを忘れているような感覚だけが残る。

暫くして目を覚ますとバスルームやキッチンはいつも通りになっていた。私は彼女との暮らしが現実ではないことを認識し、不思議な光景が夢の中で起きたことだと理解し始める。次第に頭の中がはっきりしてくる。私は部屋の明かりをつけようと壁のスイッチに手を伸ばす。その瞬間に思い出す、電話していない!折り返さなきゃ!

少し汗ばんでいたかもしれない。新型コロナウイルスのせいで篭りっきりになっているせいか若干の不快感とともにベッドから起き上がった。こういうのをなんというのか気になり、スマホを手にとって寝ぼけ眼で適当なワードを検索する。「夢の中で夢を見る」「夢 多層性」でヒットするのは占いサイトばかりだ。知りたい情報が出てこないことを悟り私はスマホから手を離す。夢の中で夢を見る経験は初めてだった。(彼女の「田丸沙都華」という名前はグラビアアイドルの「都丸紗也華」が脳の中で改変されたものらしい。全然会ったことないのに。)