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HamCup 夏の小噺

百年目の夏、戻ってきた和菓子

蒸し暑い真夏の夕暮れ時、HamCupの仲間たちは山奥の温泉旅館に向かう途中、古びた和菓子屋を見つけた。さくら、すいめい、ついてる、バク、ハムりん、かぷちーもの6匹は、かぷちーもの提案で立ち寄ることにした。

店に入ると、白髪の老職人が彼らを出迎えた。「お客様、ようこそ。今宵は百年に一度の特別な和菓子をご用意しております」

座敷に通された6匹は、夜の闇が迫る中、怖い話で盛り上がることにした。ハムりんが持ってきたHamCoinを賭けて、一番怖い話を語った者が総取りすることに決めた。

さくらが話し始めた。「この店の庭に住む動物たちが、毎年この日になると姿を消す仲間がいるって言うの」と、動物たちから聞いた不思議な噂を語った。

すいめいは忍術で隠れて見た光景を語った。「さっき、座敷に入る前に忍術で隠れて覗いてみたんだ。すると、和菓子の型から、ひとりでに和菓子が生まれ、そして消えていくのが見えたんだ。しかも、その和菓子は人の形をしていたんだ...」

ついてるは得意の変装で幽霊に扮したが、鏡に映った自分の姿が、本物の幽霊のように透き通って見えたと語った。

バクは震える声で話し始めた。「この店には、目に見えない客が来ているんだ。毎年この日だけ、彼らは特別な和菓子を求めてやってくる。その和菓子を食べると、彼らの思い出が...」と言いかけたところで、突然喉が渇いたように言葉を詰まらせた。

かぷちーもは和菓子への造詣を活かし、「この店の和菓子には、普通では手に入らない"何か"が使われている。それは...」と言いかけたとき、突然ろうそくの炎が揺らめいた。

最後にハムりんが語り始めた。「実はな、俺様のHamCoinには呪いがかかっているんだ。百年に一度、このコインを持つ者の魂を和菓子に封じ込めるんだ...」

その瞬間、老職人が特製の和菓子を持って現れた。「さあ、百年に一度の特別な和菓子です。どうぞお召し上がりください」

6匹が恐る恐る和菓子を口にすると、不思議な感覚に包まれた。甘さの中に懐かしさが広がり、それぞれの心に忘れかけていた大切な思い出が蘇ってきた。しかし同時に、今まで感じたことのない深い孤独感と喪失感も込み上げてきた。

その時、老職人の姿がゆっくりと透明になっていった。「この和菓子は、百年前に失われた魂たちの思い出なのです。あなた方の魂の一部と交換に、彼らに安らぎを与えてくださいませ」

老職人は微笑みながら消え、テーブルの上には一枚の古い写真が残された。そこには若かりし頃の老職人と、彼らが食べたのと同じ和菓子を囲む6匹の動物たちの姿があった。

翌朝、6匹が旅館を出る際、昨日の和菓子屋を探したが、そこにはただの空き地があるだけだった。しかし、彼らの舌には確かに昨夜の和菓子の味が残っていた。

そして、ハムりんのHamCoinは消え、代わりに老職人の若かりし頃の姿が刻まれた古い和菓子の木型が残されていた。

6匹は顔を見合わせ、背筋がゾクゾクした。彼らの魂の一部は、本当にあの和菓子と交換されてしまったのか?そして、百年後、彼らもまた和菓子になって誰かに食べられるのだろうか?

真夏の朝の空気の中、彼らは言葉にできない不安と喪失感を抱えながら、静かに山を下りていった。そして、どこかで和菓子の甘い香りが風に乗って漂い、彼らの魂の一部を呼んでいるような気がした。

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