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HamCupの姫を目指して

昼は大工、夜は姫

mao(55歳)は、町で最も腕の良い大工の親方として知られていた。その大きな手で木材を扱い、力強い腕で家を建てる。それが彼の人生だった。

ある日、仕事帰りに何気なく立ち寄った雑貨店で、maoの目に飛び込んできたのは「HamCup」という可愛らしい商品だった。カップに入った小さなハムスター。その愛らしさに、がっしりとした体格のmaoの心は、たちまち奪われてしまった。

「なんて可愛いんだ...」思わずつぶやいた彼の目は、輝きに満ちていた。

その日を境に、maoの生活は大きく変わり始めた。昼間は相変わらず大工の親方としてハンマーを振るう。しかし、夜になると...

自宅の押し入れから取り出したのは、こっそり買い集めたHamCupグッズの数々。そして、ピンクのフリルのついたドレス。

鏡の前に立つmao。髭を剃り、化粧を施し、かつらをつける。やがてそこには、別人と見紛うような姿が映し出された。

「こんばんは、みんな。HamCupの姫よ」

スマートフォンを手に取り、動画配信を始める。画面の向こうには、たくさんの視聴者が。maoは、HamCupの魅力を語り、新商品の使い方を紹介し、時にはHamCupをモチーフにした歌を歌う。

当初は趣味程度だったこの活動も、やがてフォロワーが増え、有名配信者の仲間入りを果たした。昼は頼れる大工の親方、夜は人気のHamCup姫。二つの顔を持つ生活に、maoは充実感を覚えていた。

ある日、仕事中にHamCupの話題で盛り上がる若い職人たちの会話を耳にした。

「知ってる?あのHamCupの姫さ、めちゃくちゃ面白いんだよ!」
「ああ、俺も毎晩見てるわ。あの姫、なんかどっかで見たことあるような気がするんだよなぁ...」

maoは、内心ドキドキしながらも、にやりと笑った。

「よし、今夜も頑張るか」

大工道具を片付けながら、maoは夜の配信の構想を練り始めていた。

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