やわらかな古着ブレンド。
古着が好きだ。
わたしは2人姉妹の長女。おもちゃも洋服もすべて新品だった。おさがりへのあこがれ、きっとそれがわたしの古着好きのルーツ。
ないものねだりってやつだろうか。クタクタになったおさがりのジャージとか、めちゃめちゃあこがれで羨ましかったことを覚えている。
今持っている服の8割は古着で(残り2割は無印)、そんなわたしに妹は言う。「なんでわざわざ古い服を買うの?」「人が着た服の何がいいの?」「新しい方がいいじゃん」と。
たしかにそうだ。そうなんだけど、さ。
先日、ある古着の靴に出会ってしまった。
ブラウンレザーのローファー。別名コインシューズと呼ばれているらしい。
よーく見ると、甲の切れ込みに鈍く光るものが。
なんと1セント硬貨……!
まさにこれがコインシューズの由来なわけなんだけど、古着のこういうバックグラウンドストーリーがたまらない。
セレンディピティ感、交わるはずのなかったものが偶然出会う感じ。
どんな景色を歩いてきた靴なんだろう。足跡やルーツ、その土地のカルチャーに思いを馳せるのが楽しい。
服にはその人、そして生活が出る。からだのかたち、動き、くせ、触れてきた空気。
光がよくあたるところは色褪せるし、よく使うところは擦り減っていたりする。そこがまたいい。
「どんな色がすき」という童謡を知っているだろうか。
どんな色がすき(あか)あかい色がすきいちばんさきになくなるよあかいクレヨン
どこか、古着に近い気がする。
古着とおなじ理由で古本も好き。新品さながらの綺麗なものより、シワがあったり薄汚れていたり、読んだ跡が残る本がいい。折り目がついていたり、えんぴつでマークしてあったりすると、より心くすぐらる。
新品には新品のよさがある。パリッとしたシャツとか気持ちがしゃん、とする。
対する古着は、やわらかな気持ちにさせてくれる。少し散らかっているほうが落ち着く部屋、完璧よりもどこか欠けている方が居心地がよかったり魅力的に感じる、あの感覚に似ている。
古着のなにがそんなにいいかって、一点物であるとかデザイン性ももちろんあるけど、でもやっぱりいちばんは古着がもつストーリー、その奥行き、カルチャーなんだと思う。
誰かのストーリーに、自分のストーリーが重なる。
そうして今日もわたしの古着たちは、ゆっくり時間をかけて、じっくりコトコトオリジナルブレンドになっていくのだった。
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