マイ・ヒーロー

画像1

横浜中華街で獅子舞を初めて見たのは、2016年の春節だった。
そのふわふわのたてがみも、瞬きする大きな目も、とても可愛いしどこかあたたかくてすっかり魅了された。
太鼓や銅鑼のリズムに乗せて華やかな獅子が舞う様子は、見ていて自然と心が沸き立った。

獅子は「紅包(ほんぱお)」と呼ばれる赤い祝儀袋の吊るされたお店を一軒一軒まわり、そのお店の商売繁盛を願って舞い、中にいるお店の人やお客さんを一人ずつ噛んでいく。そして、最後に入り口に吊るされた紅包を後ろ足で立ち上がってくわえ取ると、爆竹とともに観客たちから歓声や拍手がわき起こる。
前足と後ろ足に一人ずつ人が入っていて、獅子が立ち上がる時は中で前の人が後ろの人の肩に立つのだが、その状態で走ったりもしていて、どうしてあんなことができるんだろう・・・と信じられない気持ちになった。

昨年はただただその舞の迫力と美しさに圧倒されていたけれど、今年はさらに、少し違う舞も見ることができた。
お店ではお祝いとして獅子にお酒を振る舞うことがあるのだが、あるお店で一度に8杯ものお酒を出していて、それを全て飲み干した獅子は(本当に中の人が飲んでいた!)、酔ってふらふらになり地面に寝転んでしまったのだ。
                                     その眠くなって目を閉じてしまう様子やだるそうに首を回す様子が、きちんと舞として表現されていて艶っぽさすらあり、表現の豊かさに驚いた。伝統芸能だけれどこんな風にユーモアも織り交ぜられているのだな、と新鮮に思った。
私がこの獅子舞に惹かれるのは、力強い「剛」としなやかな「柔」、その二つを併せ持っているからなのだと分かった。

人々の間を掻き分け、手を伸ばして自分の紅包を差し出すと、獅子はそれを受け取って私の頭を何度も噛み、目の前に来て嬉しそうに舞ってくれた。神様の遣いが近くに来てくれたようで、何だか気持ちがあたたかくなった。

獅子の身体は黄、赤、黒、白、青などに彩られていて、それぞれに意味がある。私が今年頭を噛んでもらったのは、黄色い獅子と赤の獅子で、意味はそれぞれ「仁徳・高貴」、「知恵・勇気」。
新暦のお正月は体調を崩して休養モードだったけれど、旧暦の年の始めに良いものを授けてもらい、なんだかやっと年が始まったような気持ちになった。 

画像2



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?