『ボーはおそれている』

はじめに

アリ・アスター監督最新作『ボーはおそれている』、観てきました。事前チェックしていなかったのですが、例によって賛否両論の口コミを見て、エログロナンセンス大好きな私は観ねばと思い複数館の上映時間を調べ、ここなら行けそう!と時間を作りました。3時間はふらっと行ける長さじゃないですよね。
ミッドサマーは公開時に見そびれ、京都みなみ会館が夏至の日に合わせて上映していたのをなんとか観に行ったのでその二の舞だけは避けようと。
ここを語りたい!っていうのがあまりないのでざっくりシーンごとにわけて感想を。
以下ネタバレ有りです!


車にはねられるまで

セラピストとのカウンセリングから始まるシーン。ママに会いに行かないといけないが、憂鬱に感じている、憂鬱に感じるのは良くないと葛藤しているところから始まります。
まあよくありますよね、親戚に会う憂鬱。そしてボーが戻る自宅は治安めちゃくちゃ。全裸の殺人鬼てなんやねん。
全身タトゥー男は乞食だったのか。ミネストローネ投げ捨てていたけど。
そして騒音クレーマーは何だったのか。
その他ここのシーンは訳わからなさすぎますよね。シュールですし。水道でなくなりますし。鍵と荷物の窃盗犯手口すごすぎますし。なんでみんなそんなにボーの家で遊びたがるんですかね。
薬を絶対に水で飲まなければならない、のところとかはボーの性格なんかを説明するところなのかなと思いますが、全体的にシュール!嫌いじゃないです。
もう訳わかんなくないことだらけで全裸で飛び出し助けを呼ぶも警官に怪しまれ(そりゃそうだ)、殺人鬼に襲われ、車にひかれるところで場面転換です。

ロジャー家にて

車にひかれたボーが目覚めるとそこは外科医ロジャーの家でした。優しくしてくれる夫婦、死んだ息子、ヤク狂いの娘トニ、息子の戦友というなんとも奇妙な家で手当を受けます。
とても親切でなんでも知ってるような雰囲気のロジャー夫人。不気味なくらいですよね。チャンネル78(未来が見える)のことを教えてくれたり、まるで天使です。と思えば、ヤク中のトニがペンキを飲んだときは母親としてボーを責めます。
第1幕が不自然な街だとしたら、これは不自然な家族を描いていますね。死んだ息子、夫婦仲はうまくいってるように見えますが、娘は不安定なのでどこか問題があるのかも。そこに戦争で精神を病んでしまった息子の戦友(シーヴス)も加わり混沌としています。夜にトニとシーヴスが話しているのも怖いですよね。

森の中の話

ロジャー家から逃げ出してきた満身創痍のボーは森で孤児の集団に出会います。彼らは旅をし、演劇をして暮らしています。
彼らの劇は観客も参加している気分になるよう衣装を一緒に着ます。ボーもそれにならい、演劇を観ているうちに完全に没入し、私達もボーが観ている劇を目にすることになります。
自らの意思で自由になり地に足つけた生活を送るものの家族と離れ離れになり、自らの罪を告白する(自認する)ことで家族と再会できる、そんなストーリーです。
たぶん色々メタファーとか含まれてるんだろうなと思いましたが、演劇風の演出おもしろいな、という感想しか。まだまだ考えが浅いです。
ボー自身も見つめ直し、パパと再会(錯覚ですけど)できましたね。
ただ、シーヴスに劇団ごと襲われ、やむなく次の場面です。

家についてから

ヒッチハイクでようやく家に到着。母親の葬儀はすでに終わっており、葬儀の様子のビデオが流れています。
ボーは眠りにつき、女性が訪ねて来て目が覚めます。
かつて(10歳くらいの頃?)の初恋の相手でした。
ずっと写真をとってあり、夢にまで見た再会。まあなんかもろもろあります。
で、死んだはずの母親が登場。ここから一気に空気が変わりました。今まではふわっとしていたのが一気に引き締まりました。
そして脅威の母親の言い分。いや、わかるけど、お母様がそう感じられるのもわかるけどさ、それを息子に言うのはどうよ、子育てってそういうもんじゃないの?と心当たりありすぎるシーンです。ボーの気持ちも母親の気持ちも辛い〜ってなりますが明らかに母親がやりすぎ。
母親はありとあらゆる手段を使いボーに昔のことを思い出させます。悪夢は全部あなたの記憶のものよ、と。屋根裏のシーンなんかもそうですね。セラピストグルやったんかい、ていうかめちゃくちゃ怖いねんけどなんでお前そんなお母様の味方なん?、お母様もしかして人心掌握術すごい?となるような展開。
ボーが全部母親の顔色を疑って行動してきたこと、それを責める母親、もはや救いなし!一部の観客に大ダメージ!
結局母親の顔色を伺って、でもちゃんとそれを実行できないボーは親の機嫌を損ね続けすべてをだめにしてしまうというなんとも言えない後味。身に刺さりすぎて怖かったです。

おわりに

ちょっととりとめなさすぎた感想で申し訳無さすぎるので、全体通して感じたことを。
どういう形であれ、逃げ出してきた事柄には向き合わねばならない時が来るっていうのが何回かあった気がします。
乞食から逃げますが結局その乞食は部屋の前で死んでいますし、シーヴスから逃げても森の中で襲われますし、極めつけは母親です。
トニがぐるぐると家のまわりを運転しており、輪廻じゃないですが恐れて何もやらなかったツケは自分で払わないといけないんですよね。
179分ビビってましたが、演出の妙や、シーン転換などで飽きずに観られたした!総括面白かったですし、観なかったらもやもやしていたでしょうし、いい休日になりました。

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