慕情
最近津軽三味線を良く聴いている。
と言うのも、『ましろのおと』と言う漫画と出会い、アニメもイッキ見した影響だ。
にわかと言われても仕方ないが、すっかり津軽三味線の魅力に取り憑かれてしまった。
私は鹿児島出身で、東北とは縁もゆかりもない。
東京に出てきて、看護学校で初めて東北出身の人と出会ったし、仕事で宮城と福島に行ったことはあるが旅行や観光はしたことがない。
方言も分からないし、はっきり言って東北のことはほとんど何も知らないのだ。
なのに、あの津軽三味線の音は私の慕情を強く強く掻き立てる。
洋楽も好きだし、日本の歌手も(最近出てきた歌手は良く知らないけど)好きだけど、なんだか聴いていてこんなに切ないのは初めてかもしれない。
何と言うか、私の幼い頃の田舎の記憶とともに、私のものではない誰かの記憶も彷彿とさせるような気がする。
これは言葉でうまく伝えられないのだが、胸の奥がキューッと苦しくなり、泣きたくなるのだ。
一方で、激しいバチさばきに胸が躍る。
その躍動感が、私に生きる力をくれる気がする。
全盲の主人公のおじいちゃんが、出会った疎開先の女のコに
『生きねばまいね(駄目だ)』
と話すシーンがある。
思い出すだけで涙が滲むのだが、食べるために歯を食いしばって生きていた時代が確かにあった。
ばあちゃんが昔の苦労話を良くしてくれたのだが、
『また話してる。時代が違うし。今は今で違う苦労あるし』
そう思って、あまり聞きたくなくて真剣に取り合わなかった。
今になって思う。
もっとばあちゃんやひいばあちゃんの話を聞けば良かった。一緒に住んでいたのに。
戦争の話とか、どうやって家族を支えてきたのかとか、辛いときどうやって乗り越えて来たのかとか。
教わりたかったな。
今ごろ気付くなんて遅すぎたね。
私の先祖たちも様々な思いを抱えて、生きて、ここまで私に命を繋いでくれた。
そのことをこの三味線の音色が思い出させてくれる。
人生はドラマティックだ。
さぁ、私はこれからどう生きよう。
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