躁鬱人:財布をなくした、が、気分がいい。


 昨日、財布をなくした。ただ、タイトルにある通り、私は気分がいい。そのことについて詳しく述べていく。少し長いけど最後まで付き合っていただけたら嬉しいし、もしぼくと同じ気分の人がいたらすぐさま連絡をしてほしい。Twitterは@makotoshinzoと探せばすぐに出てきます。よろしくお願いします。

 昨夜は「財布無くした祝い!」で、直島で出会った友人にたらふく魚を食べさせてもらった。めちゃくちゃ楽しかった。一見不幸に見える出来事も、祝えば愛でたくなる(かもしれない)。財布を無くした私に優しくするなら、いまがチャンスです。楽しいお誘い待ってます!!

 かの有名な、不思議の国のアリスでは、誕生日じゃない日おめでとう!という出鱈目なお茶会がある。事象は一つでもそれとどう向き合うか。財布をなくして悲しんでもいいし、笑ってもいい。これは生き方が試されている(かもしれない)。警察に行ったり、クレカを止めたり、諸々やることはあるけれど、悲観はしていない。なにせ、昨晩の魚があるから。

 財布の話に戻ろう。日本橋のどこかに黒の二つ折りの財布が持ち主の視線から隠れている。購入したのは数年前、イルビゾンテのマネークリップだ。いい感じに革がくたびれているし、お気に入りだ。無くした時刻は14時から19時半の間。最後に財布を使用したのは昼過ぎにドラッグストアでリップクリームをPASMOで購入した時。

 その後は、TRAILSという謎な会社の代表サイさんと今後の生き方作戦会議をした。帰り際に「将来は俺の膝になれ」と激励をもらい、そのあと、三軒ギャラリーを回る。来年以降のsalonの打ち合わせを。そして、次の目的地に向かおうとした時に、財布がないことに気がついた。日本橋のどこかにぼくの黒財布が置かれている。一体どこ。

 財布をなくして、一晩経った。現在(AM08:54)は表参道に向かっている。ポケットに入っていた小銭で切符を買った。170円。久しぶりだなぁ、とか、財布をなくしたことで感傷に浸ったりする。投入口に切符が吸い込まれていくのは結構気持ちがいい。電子マネーの方が2円移動費用は安いが、2円以上の体験価値が吸い込まれにはあるように思う。切符はもはやエクスペリエンス。

 ちなみに現在(AM08:57)。ポケットの残金は36円。6の2乗だ。2つのサイコロを投げた時にでる最も大きな掛け算の式で導かれる。つまり可能性は無限大ということだ。ティナシーリグさんの著書にもあるが、元手はイノベーションには関係がない。今あるものに固執しないことがイノベーションを生む。財布をなくしたことは、つまり、無くさない財布とは?と考えてみたり、体にポイントカードとかPASMO、クレカを埋め込めたら無くさなくて楽だな。とか考えたりする。

 現在はAM11:50。表参道ヒルズの地下でベンチに座っている。先ほどの現在から3時間近くが経っているが、私はその間に、近くの美容室で髪を切ってきた。「なんだ。あなた、実は金があるじゃないか」と思ったかもしれない。しかし、私はそんなことより私の今の、すっきりしたヘアスタイルを見て欲しい。めちゃかっこいいし、エロい。ずいぶんセクシーさが表に出てきた。すごいいい感じの2人に「めちゃくちゃにセクシーでかっこいいです」と言ってもらえた。素直さは喜びを増大させる。

 髪を切ってもらったのは、なんと、カットモデルである。人生初の体験。Try Something Newだ。なので、お金はかからない。しかも、カットしてくれる人の他に、その人の先生みたいな人もいた。だから、カットの最中はその指導する方が、カットのいろいろな知識をカットする方に伝えていて、それを聞いているのが楽しかった。自分の骨格、つむじ、髪の生え方、そんなこともずいぶん教えてくれた。あっという間の2時間だった。髪を切るってのは、すごい技術だ、というのを知りました。

 金はないが、魚をたらふく食べ、髪を切ってセクシーになった。気分はすごぶる良い。さらに朝は早起きして、風呂まで入った。なんだかすごく楽しい。いい感じだ。かといって、財布が見つかったわけではない。つまり、財布があるかないか、というのは、私の幸福感とは繋がっていない。この状況がずっと続けば、なにかしら起こるだろう。しかし、すべての物事は流転する。戦争や極度のインフレが起きれば紙幣は紙屑になる。もしかしたら、僕が持っていた紙幣は偽札かもしれなくて、何となく立ち寄ったお店で手錠をかけられるかもしれない。

 この後、どうしようか。ひとまず表参道を散歩してみる。ギャラリーに行ったり、ブティックを覗こう。なにせ、髪を切ったばかりで気分がいい。そして、何より財布がないので、迷い込んだ路地で怪しいツボを買わされる心配もない。なにせ、現在の所持金は36円だ。金がないことはある種の危険を遠ざける。近くにいる人がいれば、久しぶりにランチでもいかがですか。同じく財布がなければ、どこかに歩いて行って紅葉狩りしましょう。

 兎にも角にも、楽しいお誘いを待ってます。

(財布がなくても楽しめる世界を、小学生の頃はみーーんな知っていたけれど、いつのまにか、なんでも金を払わなきゃ楽しめないような気になった。お金を否定したいわけじゃないけど、「エンデの遺言 根元からお金を問うこと」という本にもあるように、お金に力を与えすぎてしまっている気がする。


だからといって、ぼくは今日のカットをしてくれた人がすごく良かったので、今度はお金を払って切ってもらいたい。とも思っている。)

何はともあれ、楽しいお誘いを待っています。

いただいたサポートは、これまでためらっていた写真のプリントなど、制作の補助に使わせていただきます。本当に感謝しています。