名刺交換

 1ヶ月ほど前、建築家の夫妻に名刺を渡す機会があった。私が名刺を2枚取り出すと、奥様は「2人で1枚でいいですよ」とおっしゃった。ぼくは彼女にも1枚の名刺を渡した。なぜか。「2人のうち旦那さんだけに名刺を渡す」という男性社会的な行為に身を染めたくない。そして何より、ぼくは自分の名刺が気に入っていて、ステキな人には渡したい。

去年末に小田原に移住した。今の家の契約をする際に、不動産は本契約者である同居人にのみ、名刺を渡した。同じテーブルにいるにもかかわらず。契約の話し合いの時にも、彼はぼくの方をほとんど見なかった。不動産からは他にもいくつかの対応の差を受けた。

些細なことかもしれないけど、「本契約者である同居人の付属物」としての扱いに、ぼくは小さく憤った。正直そんな対応をする不動産なんかに金を払っていたくない。“女性”は"女性"というだけで、もっと、契約とか、結婚とかで、対応の差を受けてるんだろうか?と思い、勝手に悲しみを深めた。

差別には、意識的なものと、無意識的なものがあると思う。両方とも厄介だけど、前者は指摘するとその正当性を怒りとともに吐き出し、後者は指摘を差別だと気づきもしない(ことが多い)。自分は差別に厳しい目を向けたいが、そんな自分でも無意識的な差別をやってしまっているのだと思う。

何かの場に、自分の連れてきた方を紹介する時に、うまく紹介できる人になりたい。紹介の仕方と受け方で、ずいぶんと場の教養が試されると思う。バーのマスターなんかは、それが上手だと思う。今日行ったギャラリーのチャコさんは嬉しい対応で、知り合いが何人もできた。そんな人に憧れる。

いただいたサポートは、これまでためらっていた写真のプリントなど、制作の補助に使わせていただきます。本当に感謝しています。