【短編小説】 ラッキーフード
今日のおうし座のラッキーフードはおはぎ。
今日の占いをアプリで確認すると、スマホから視線を外しアイライナーを握ったまましばらく思案する。
困ったな、おはぎってどこで買えるんだろう。スマホでおはぎを検索すると、コンビニで買えることがわかり安堵する。今日は午後から会議があるから絶対に食べておきたい。
昨日のラッキーフードはチョコレート。チョコレートを食べたからクレームを上手く乗り切れた。
一昨日のラッキーフードはいなり寿司。いなり寿司を食べたから課長に怒られなかった。
もしも私がラッキーフードを食べていなければどうなっていたか。そう考えると背中に寒気が走る。
会社へ向かう途中、私はコンビニに寄っておはぎを一つ買った。これで今日も一日大丈夫。おはぎを大事に握りしめて歩いていると、後ろから声をかけられた。
「あなた、悪いモノが憑いていますよ」
振り返ると、そこには黒い服を着た独特な存在感のあるおば様が立っていた。
「私達はあなたをお救いできますよ」
おば様はこんな私に和かに微笑んでくれている。そしてわざわざ悪いモノが憑いていると教えてくれるなんて、なんていい人なんだろう。親切な人にはきちんと対応しなければバチが当たってしまう。
「わざわざ教えていただき、ありがとうございます。でも、私はおはぎがあるから大丈夫なんです。おはぎがあれば今日一日ラッキーなんです。ラッキーフードはその人のパワーを増幅してくれる効果があるんですよ。私はまだおはぎを食べていないから、悪いモノが憑いているように見えるんです。でも気にかけて声をかけてくださったことはとても感謝します。心配なさらないで、会社に着いたらすぐにおはぎ食べますから」
おば様は、そうですかと言い足早に去ってしまった。私は一礼して歩き出す。
今日はおはぎのおかげで朝からいいことがあった。早く会社に着いておはぎを食べなければ。
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