田舎の猫 街に行く 第三十七話
田舎の猫 天使と闘う
「その『世界樹の葉』は我が主神様(あるじさま)のモノなのよっ! 返しなさいっ、この『泥棒猫』っ!」
かっち~ん……また言った……
私は殺気を漂わせながらそのBBAを睨みつけた。この世とお別れする前に、名乗りぐらいは上げさせてやろう。そう考えて飛びかかるのを我慢する。
「この世界を救うためにはね、『世界樹の葉』がたくさん必要なのよっ!」
BBAが偉そうに言った。
「主神様がね、私たちに仰ったの。『この世界に神を甦らせるのだ。それがこの世界を救う唯一の道なのだ』って」
「で、貴女の名前は?」
怒りを押し殺して私は聞いた。そろそろ名乗りを上げてくれないと話が進まない。
「人に名前を聞くときには……」
「いいからとっとと名乗れっ!」
私の剣幕に気圧されしたのかBBAが漸く名乗り始めた。
「私は『ウリエル』、四天使の一人『ウリエル』よ。その空っぽの脳みそに刻みなさい!」
よし、墓石に刻む名前は分かった。ここからは遠慮はなしだ。
「ウリエルだかウリナラだか知らないけど、誰に喧嘩を売ったか教えてあげるわっ!」
私はそう言うと同時にウリエルに向かって飛びかかる。まさかいきなり飛びかかられるとは思ってなかったのだろう。ウリエルは驚きのあまり防御態勢を取れずにいた。私の拳が彼女の顔面に入るかと思われた時、横から邪魔が入った。
「ウリエル様には指一本触れさせない。我が名は『サリエル』っ!」
サリエルと名乗ったソイツは、黒い羽を羽ばたかせてウリエルと私の間に割り込んだ。
私はとっさに身を翻して距離をとった。コイツ出来る……。割り込んだ時に既に左足が私を蹴る態勢に入っている。 その動きは洗練された格闘家の動きだった。
反面ウリエルは尻餅をついて、こちらを驚きの目で見ている。
「て、天使に殴りかかるだなんて……この四天使である私に……」
「うっさいわね! 私の元いた世界じゃ『ウリエル』も『サリエル』もパターンレッドなの! 文句なしの敵認定なのっ!」
『貴女馬鹿~っ!?』って言ってやりたい衝動に駆られるが自重する。これは言っちゃダメな気がする……
「ならこちらも遠慮はしないわ。出でよ天使達っ!」
ウリエルがそう叫ぶと、上空に数え切れない程の天使が現れた。白、黒、抹茶、小豆、コーヒー……色とりどりの天使達。なんかある地方都市のお土産思い出したんだけど……。とっても美味しそう。
こちらを警戒しながら様子見をしているサリエルの後ろでウリエルが得意気に語る。
「この数の天使を相手に勝てると思ってるの? 魔物とは違うのよ、魔物とは!」
「貴女も元の世界にいたクズ野郎共と一緒ね。数は正義だとか、数こそ力だとか言ってる奴が私は一番嫌いなのよっ! 烏合の衆はどれだけ集まってもまともな鳥にはなれないって事教えてあげるわ! インドアッ!」
一瞬にして空一面を埋め尽くしていた色とりどりの天使達が消滅する。そう、インドアの前では数なんて意味ないんだよ。
「な、なななななっ!?」
驚きのあまり言葉を失うウリエル。
「ウリエル様城にお下がり下さい。ここは我に任せて」
サリエルがそう言うとウリエルは城へ戻ろうと振り向く。するとそこには鬼がいた。
「逃げられると思いますか?」
そう言ってスタッフを構えるマーシャさんの顔はとっても柔やかだった……
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