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田舎の猫 街に行く 第二十七話

田舎の猫 寛ぐ

虹乃音子

 「凄い……凄すぎる……。エルフの本気こえぇ~」
 元の世界にもこんな恐ろしい施設はなかったんじゃないだろうか。温泉、休憩室、マッサージルーム、レストランはおろかバー、更にはカジノまで完備の複合施設。特に恐ろしいのは温泉風呂付きのご休憩施設があることだ。つまりはそういう事である。ここは男性諸君の職場でもあるのだ。
 
 こんな施設が1日やそこらで建つわけがない。マーシャさんたちがキャンプをしている間に村人総出で造ったに違いない。今回の事は何から何まで計画的な犯行だったのである。エルフの本気には戦慄を覚えざるを得ないよ、マジで。

ミーシャ

 一通り施設の中を見て回った後、私たちは大部屋に案内された。
 
 「今日はこちらの休憩室でお休みになって頂きます。食事の方はレストランの方で食べて頂けるようになっていますので、後ほどご利用下さい。全員分には足りないのですが個室もありますので、使いたい方は言って下さい」
 
 家族や友人同士でまとまって使えば十分足りると思われる部屋数はあるので、無理に大部屋で休む必要はないようだ。さっきも言った通り各部屋に温泉風呂が付いているし、デカいベッドもある。贅沢すぎる仕様である。まぁ本来は別の用途で使用されるんだろうけどね……
 
 個室を使うのが3家族の8名で、残りの30名ほどが大部屋で休むことを希望した。独身男性はお互いの親交を深める為に大部屋を使用するようだ。
 
 その後レストランに移動した私たちは、少し遅い夕食を食べた。夕食のメニュー数は結構多く、どれも美味しそうだった。私はカレーライスを頼んだわ。何だか昼間から食べたかったのよね。
 食べてみて改めて思ったんだけど、使用されてる食材がスタミナのつく物ばかりなのよ。ホント徹底してて呆れたわ。カレーにもニンニクが入ってるのよ。美味しかったけどさ……
 
 あ、ちなみに厨房ではエルフが数名料理を作ってくれていた。まあ全員が家の土台作りをしなくても間に合うしね。後、聞いた話ではこの厨房で、移住してきた人たちが働く事も可能だそうだ。女性や子どもも働く場所が提供されるとの事で、皆安心した表情を浮かべていたわ。
 
 基本この村は自給自足である。簡単に言えば働かざる者食うべからずだ。もちろん働けない老人や小さな子どものように例外はあるのだが、働ける者はみんな働く。だが労働の対価はお金ではない。この村の外には食料が豊富に手に入る森があるし、家畜もいる。田畑もあるから食べ物には困らない。
 
 前の世界の家電に相当する魔道具なんかも自分たちで造ることができる。エルフってのは長命種だけに博識だからね。
 
 物は豊かだし技術もある。つまりこの村に住んでいる限り、お金なんて無くてもほぼ不自由なく暮らすことができるのだ。働くことさえ出来れば。あー、元の世界の赤い国とは違うよ、念の為。理念は同じかも知れないけどさ。独裁者はいないし軍隊もないもの。
 
 そうやって物思いに耽っていると、周りが喧騒に包まれていた。レストランにはビールなんかの一般的なお酒も置いてあるので、男達が飲んで陽気に騒ぎ始めたのだ。私? 私は飲まないわ、未成年だもの……。まぁこの世界の飲酒には年齢制限はないんだけどね、なんとなくね。

リーシャ

 レストランでの夕食が終わるとリーシャが現れたの。
 「奴隷の取り引きをして下さった音子さんたちには、この村から豪華記念品が贈られます」
 そう言ってリーシャが差し出したものは何だろう……何か木の葉っぱのような? でもキラキラしてて綺麗……
 
 興味がわいて『鑑定』をかけた私は、今日一番の衝撃を受けることになる。
 「こ、これって……世界樹の葉じゃないのっ!?」

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