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田舎の猫 街に行く 閑話(1) キャティの独り言


キャティ

 「惜しかったわね~音子ちゃん。ニアピン賞まで後1歩だったのに……」
 
 私はキャティ。猫人たちの守護神のようなものだ。アンドロイドではない。でも当たらずとも遠からずって言えなくもないわね。この世界には私のようなのがいくつも在るから。
 
 正直『私以外の者たち』が今何をしているかは知らないし、知ろうとも思わない。でもまあ……一部を除けば多分元気なはずだ。
 
 「この世界に転生した者は記憶が封じられている……か。見え見えのウソに気づかないなんてねぇ。だったら、洗浄トイレもカラオケもあるわけないでしょうに……」
 
 あー、でも気づかなかったんじゃなくて、『気づきたくない』のかもしれないわね。ほら、人は気づきたくない事には無意識で気づかないようにしてるみたいだから。
 
 この世界に持ち込まれないようにした知識はそれ程ないのよ。まあ大量殺戮兵器は当然として、後は高速かつ大量輸送ができる乗り物くらいなのよね。どちらも大規模な戦争に利用されるから。
 
 「そして神の存在ね……」
 
 音子ちゃんが冗談めかして
 「私にして欲しい事は何なの? もしかして信者を増やすために布教活動をして欲しいとか?」
 と、言ったときは正直慌てたわ。
 
 「何をしても良いけど、それだけはしないで!」
 って思わず叫んじゃったもの。
 
 この世界は神の存在を『認めていない』。何故なら人は信じるモノの為には果てしなく残酷になれるから。あの世界にもたらした災厄の元凶はそれだったのよ。
 
 人間はその弱さ故に神を信じ、苦しい時、辛い時はそれを心の拠り所にした。そこまでは良かった。だが人間は神を利用して多くの罪を犯した。
 
 自分たちの信じる神だけが正義であり、他の神を信じる者を邪教徒と決めつけ弾圧した。時には政治に利用し、戦争の大義名分に使った。多くの血が神の名の下に流された。
 
 そんなモノをこの世界に蔓延らせる訳にはいかない。私たちは人々から神の存在の記憶を全て消したわ。
 
 「音子ちゃん、貴女のスキルは私が与えたわけじゃないのよ」
 そう、誰かが与えたわけじゃない。貴女は初めから持っていたの。ただ忘れていただけ……
 
 「全てを思い出した貴女ともう一度話してみたいものね」
 そう、私を創り出した貴女と……

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