社長室のある会社は辞めた方が良い

私の個人的な考えかもしれないが、社長室がある会社の社長はどんなに仕事が出来ても経営者としてはダメな人が多い。

社員数がべらぼうに多い会社ならやむを得ないが、100人以下なら社長室は絶対要らない。と言うより、むしろ社長室を作ってはいけない。

日本の会社の大半は中小零細企業が占めている。自分の会社経営の経験から言っても30人ぐらいまでは社長一人で社員の管理が可能だ。それを超え始めると組織化を考えないと会社は成り立たなくなる。逆に言うと30人以下の会社が組織化するとろくなことにならない。小さな会社は社長、専務、くらいのワントップもしくはツートップでフラットな方が良いのだ。社員の中での上下関係や給与等の待遇は仕事の経験値や能力で定めれば良く、自分の目の届く範囲内で指示命令系統を作るべきだ。

なぜならば?小さな会社ほどお金の管理は経営者一人がしていることが多いからだ。お金の管理とは単純な入出金のことではない。資金調達からコスト計算、利益の算出まで、会社に資金が枯渇しないようにすることだ。そして足りなければ身銭すら切らねばならず、何よりも今の商慣習的に上場していない会社の経営者はほぼ会社債務の個人保証をしている。小さな会社ほど会社の借金は社長個人の借金と変わらない。そんな小さな会社が資金調達の責任も能力も無いイチ社員に大きな権限を持たせる必要は無い。だから業務遂行上の権限のみ与えて、その業務が社長が想定するコストの範囲内で行われているかを常にチェックするのが小さな会社の社長の労務管理である。

ところが社長室を持つ社長はこの労務管理が全く出来ない。自分は一生懸命働き会社を維持しているし、社員は一生懸命働いてくれていると思っている。これが間違いだ。社員は社員が見ていなくても一生懸命働いている。しかし、根本的な違いがある。たとえ儲かっていても社長は常に会社にはお金が足りないと思っているし、社員は会社にはお金があると思っている。この違いほ大きい。この違いが働き方に出る。それを修整するのが社長の労務管理だ。これは社長室で仕事をしていると見えない。見えてるつもりでも見えていない。案外、人は上の人がいないと身勝手な行動をし、じぶんに都合の良い理由をつけてしまうものだ。

そして、社長室のある社長は威厳のみが成長する。普段お目見えしないから社員からは畏怖される。だから見られている時は普段以上によく働くのだ。これに社長は勘違いする。自分は尊敬されていて気持ち良い、社員はよく働くと。これは大きな過ちだ。この状態は逆に言えば、社長か来ると「うわっ、社長さん来た!」となるわけで、そんな社長が来ただけで緊張するようでは、居ない時はどれだけリラックスしているか?ということになる。たかが8時間程度の勤務時間内で行動に裏表を作らせてはいけない。

私自身、前職の社長時代は3フロアある会社の各フロアに私の家族を配置していた。フロアが一つでは無く3つだったからスリートップにしていたわけだ。そのうち一つのフロアを管理していた父が亡くなり、私が2フロアを見るようになったが、私が居ない方のフロアはダメダメだった。古株の社員さんをリーダーにしていてもだ。古株の社員さんの能力が足りないのでは無い。20人程度の会社では社長の言うことが絶対で、それ以外の人にその責を負わすのは無理なわけだ。立地的に会社の社屋をフラットなワンフロアに出来ず縦に伸ばすしか無かったのだが、少人数なのにワンフロアで無い事を悔やんだものだ。

そんな私でも社長室は設けて無かった。もちろんお客様との商談用の応接室的なものはあったが、そこに籠もることは無かった。籠もるとすれば、昼の休憩時間に私が居ない方が社員さん達がバカ話をしやすいだろうと言うときに気を利かせて身を隠す程度だった。

もちろん、社長になるとじっくり一人で考えたいことは増える。しかし会社にいると常に社員さんが何かの指示を仰ぎに来たり相談に来たりしっぱなしで、一人で考えることが出来にくい。社長室のような籠もれる場所が欲しいのも理解出来る。しかし、経営者と言うのは24時間、会社のことを考えてるのだから、別に会社にいる時間帯に人との接点を無くして籠もる必要は全く無いのだ。むしろ社員がいる時間帯、会社の就業時間帯は、社員やお客様との接点を優先すべきで、一人になる時間は夜一人会社に残ればいいのだ。

しかし、社員室のある会社の社長さんは勤務時間内に、一人でホッとする場所として社長室を使っている。つまり社員からの快適で不可侵な逃げ場だ。確かにそう言うくつろげる場もいるかもしれない。それも解るのだ。私はそれを車にあてていた。通勤時や移動時の車が唯一のくつろげる場にしていた。しかし社内には設けていない。

そして、もう一つ社員の知らない重要なこと。社長室のある会社の社長は、ライオンズクラブやロータリークラブ、はたまた業界団体等に多大な労力と時間を割いている人が多い。その活動そのものを否定するものでは無い。しかし、そのおおくは多少は仕事に繋がるが、大半は社長個人の人脈作りとボランティアであり、遊び事も多いのだ。社員が働いているのに月例の例会に行くとか、知られたくない後ろめたいことをしやすいのだ。逆に社長室を持たず大部屋で社員と一緒にいる社長は、そう言う社外の団体に属して活動していても社員に納得が行く節度を保つている。社長室に籠もると、どんな優秀な社長でも節度は保てなくなる。なぜならば?そう言う団体とて役員等の世話役は必要であり、世話役は色んな打ち合わせを日中でもすることが多い。社長室はその隠れ蓑だ。社員は、いつも社長はどこそこの社長さんと商談打ち合わせしていると思っているが、実はそうでない。

私の経験からしてみても、社長室はろくでも無い社長を作る。そんな社長はどんなに綺麗事や正論を言ってても信用してはいけない。社員は社長の活動費用を稼ぐただの働きアリみたいなものだ。

事務所と工場とかも同じだ。小さな会社ほど分ける理由が無い。人数の多い方に集約すべきだ。なにはともあれ、中小企業で社長室のある会社はオススメしない。





いただいたサポートはこれからの活動費として有効に使わせていただきます。