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しゃばけ シャイニングモンスター 2nd step~てんげんつう~

現地で人生初シャイモンを浴びた。

噂には聞いていたけれどこれほど自由な演劇はきっと日本中のどこを探しても無いと思う。

前回の「ばくのふだ」はコロナ禍真っ只中だったこともあって配信での観劇だった。正直に言うと私が今まで見てきたどの舞台とも色が違ってかなり困惑したのを覚えている。
元々しゃばけが好きで原作を読んでいたこともあって、メタもギャグもなんでもありの時代考証なんて無い世界観にかなりの違和感を抱えてしまっていたのが本音。
きっと凝り固まった“しゃばけ”イメージから抜け出せなかったと言う方が正しいのだと思う。
そもそも「シャイニングモンスター」などと銘打っている時点で江戸時代の時代考証などあってないようなものだ。はよ気づけばよかったね。
とはいえ、「しゃばけ」特有の人ならざるもの達と若だんなが繰り広げる優しくてあたたかい人情噺の空気は要所要所に残っていて不思議とほっこりした気持ちにもなった。
モヤモヤ半分、ほっこり半分。なんとも不思議。

そんなこんなでシャイモン2が決定し、半分挑戦のつもりでチケットを取った。
配信と現地では感じることが全然違うというのが持論。現地で見てもあまり好ましくない気持ちになるのであればきっと私はこの作品のターゲット層から外れているだけなのだと思う。
さながらギャンブラーの心持ち。
まぁでも冗談抜きにかなり賭けの気持ちはあった。こちとら安くないチケ代と遠征費払うんだからそりゃそうだ。最悪合わなかったら顧客として対象ではないだけなのでそっとフェードアウトしようとしか思ってなかったけども。
批評と文句は違うので。棲み分け大事。

ということでまず初日のチケットを確保。
そしてジュルネに参加したいがために2日目のチケットも確保。なお、このことを他担のフォロワーに言ったら理由がおもろすぎると笑われた。私は至って真剣にマチジュルソワに臨んでたんですけど!?🥺前川さんのオタクくらいしかジュルネに沸いてなかったけどさ。
そして職場から無事に三連休を強奪して、いざ尋常にギャンブル!!

結論から言うと秒速で和解した。
小学生の頃の私が何を思ってこの原作を読んでいたか今はもう覚えてないけど、きっと病弱な一太郎が人や妖の為に奮闘する姿が好きだったんだなぁ。病弱な若だんなだけど、人だろうが妖だろうが何か困っているのなら迷いなく手を差し伸べ、突き進んでいく姿が好きだったんだと思う。

私は前川優希さんのオタクなので、どうしても贔屓目に見てしまうのだけど、前川さんの一太郎がほんわりとした空気の中に絶対に揺らがない芯の強さを見せる瞬間にこの人が一太郎を演じる意味を感じずには居られなかった。
脇を固める仁吉と佐助に屏風のぞき、今回のメインであるてんげんつう、猫又の飛七というオリジナルキャラまで加わって、ド派手な色を添えるアマビエの存在もあり、これがシャイモンなんだと納得。
忖度なしにめちゃくちゃ楽しいやん…!!と思えたことがなにより嬉しかった。
本当に来てよかった。飛行機に乗り遅れるという大惨事やらかしたけど!!片道4万ふっ飛ばすとこだった危ない。
2時間前にチケット買っても1万ちょいで買わせてくれるジェットスターくんに感謝!!

演出のニッキさんがしゃばけのことをシチュエーションコメディだと思ってることだけは申し訳ないですがマジで解釈違いです(しゃばけ強火オタク)
どちらかというと人情噺寄りのほんわか推理譚だと思ってるので。
でも逆に演出家がそう思ってるならこうなるか、って納得しちゃったおかげでモヤモヤが吹っ切れて楽しかったのもある気がするな。

私とシャイモンの因縁(?)はこのくらいにして、感想が書きたい。
まだ本題に入ってないくせに1500字近く書いてる。

さてさて、今回は「てんげんつう」のお話。
事前に原作を読むか迷いに迷った上で、一旦読まずにフラットな気持ちで見てみることにした。

オープニングの朗々と流れるような口上ともはや聞き馴染んだ日本橋なんちゃってpeopleのメロディがワクワクさせる。
ど初っ端から時勢ネタを盛り込んでくるメタ発言のオンパレード。そこからスっと話を本筋の物語へ引き込んでいく独特の緩急がきっとシャイモンがシャイモンである所以なんだなぁ。
所々私には元ネタがまったく分からないけど隣のマダムがめちゃくちゃ笑ってる箇所があって「これがジェネギャか……」と思う場面もありましたが、とにかくアットホームで素敵なカンパニーでした。

てんげんつうと若だんなのデュエットソングまじで現役ドルヲタの血が騒ぐ。
あの会場で1番しっかりMIX打てる自信あったんだけど、キラキラアイドル若だんなに向かって私にもMIX打たせてくれんか?うりゃ、おい!させてくれ。
\超絶かわいい!若だんなぁ⤴/
シャイモンって曲がいいよね。CD売ってくれないかな。

仁吉 
伊達男ってこういう人のことを言うのかなぁ。
ふとした時に目を惹かれる。
でも常に安定感のあるいざーさんが小沼さんギャンギャン振り回されて困ってるのめちゃくちゃおもろかった。
男前なのが悩みみたいなあのシーン好き。めちゃくちゃに掻き回したあと絶対に本筋に引き戻さなきゃいけない屏風のぞきの地獄さが際立っておもろい。スッと進めばいいんだけど絶対アドリブぶち込むからあの流れであのテンションで台本に戻れるせてぃさんはプロだし、戦犯は大体いざーさん。
あとは仁吉と若だんなの最後のシーン、正直ずるいなぁって思った。てんげんつうに何を聞きたかったのか、普段の仁吉ならさらりと聞いてしまいそうなものを歯切れ悪く言い淀む。
若だんなのことを第一に考えて生きている仁吉にとって、何を聞きたいかは想像に易いものだったのかもしれない。そして、それは万物を知る白択でも恐れることでもあった。
人間の一生は儚い。身体の弱い若だんなは尚のこと。惚れた腫れたとか親心とかそんな思いとはまた違う“御大切”という感情がそこには確かに存在してた。

佐助
小沼将太は天才だった。
公演2日目にしてかっ飛ばしていくのマジで凄いとしか言いようがない。
最初からクライマックスだぜ!!ってことでよろしいか?
まじで2公演目で人力車エチュードでみんなを巻き込んでいくの怖い。暴れ牛……犬神なのに……
いや、正直原作のイメージがあると佐助……?となるんだけどもとんでもない愛嬌ですべてをカバーしてくる。凄い。なるほど、犬だ(違う)
屏風のぞきと佐助がわちゃわちゃしてるとこめちゃくちゃ好き。小沼さんのこと佐助と最遊記歌劇伝の桃醍でしか知らないし、生でお芝居見たの今回が初めてだったけど、もっと見てみたいなぁと思った。シャイモンは小沼100%みたいなとこあるじゃん?違う役だとどんな感じなんだろう…🤔💭

てんげんつう
今回のもうひとりの主人公。
口が悪くて、横暴で、ワガママな男に見えていたけど、本当は10年もの間、人の悪意に触れ続けて心が荒んでしまっただけ。元の性格もあるにせよ、三太が千里眼を渡すに相応しいと考えた男なんだからきっとそう。
てんげんつうが三太を呼ぶシーン、胸に迫るものがあってグッときた。
そもそも千里眼を持つてんげんつうが猫又の三太を探し出せないわけがない。三太の行方を彼はきっと最初から知っていて、それでも居なくなったと思っていたかった。口に出すことはそれを現実にしてしまうことだから。
若だんなが「てんげんつうさんを信じる」と言った時の表情が忘れられない。10年間誰からも信じて貰えず忌み嫌われてきた彼をまっすぐに信じると言い切った若だんなの言葉はてんげんつうにとって何よりの救いだったはずだ。
ただ認めて欲しかった。ただ信じて欲しかった。ただ受け入れてほしかった。たったそれだけのことだったのかもしれない。
なんて不器用な人なんだろう。
若だんなに最後「大丈夫だ」と伝えるシーン
てんげんつうはあの質問を投げかけた時から、若だんなが何を問いたかったのかなんて見えていたんだと思う。もしかしたら、そこに気がついている仁吉の思いまでも知っていたのかもしれない。その全てを語らず、大丈夫の一言だけを告げる姿がてんげんつうの性格を表しているようだった。

飛七
オリジナルキャラの猫又、飛七。原作で出てくる名前のある猫又はおしろと小久間猫又、あとは三太くらいなので原作で戸塚の猫又たちと括られてる中の1匹なのかな?いや、知らんけど。
柳沢さんは今回はじめましての人だったけど、まぁ可愛らしくて、実年齢見て目ん玉とび出た。
今回全体的に出てる人達みんなでかいから余計にちょろちょろ動く姿が猫っぽくて愛らしい。
広目天様のところでわちゃわちゃやってる佐助と屏風と飛七めちゃくちゃ可愛くない?あそこ大好き

屏風のぞき
か、顔が好き~~~~~~~~~~~~!!!!
すみません心の声が漏れ出してしまいました。
一番最初の口上で心を掴まれた。私この人のお芝居めちゃくちゃ好きだと確信した瞬間。
私、せてぃさんのこと元々テニミュの鳳長太郎でしか知らないんですよ。宍戸さん!!って言ってるあの大型犬のイメージ。ダブステで久しぶりに見てはいたけど話が重すぎてそっちに気をとられてた。コーラサワーの飛び道具加減にめちゃくちゃ助けられたとこはある。
朗々と語るオープニングの口上、石畳紋の着流しをぞろりと着こなす中性的な出で立ち、ちょくちょく挟んでくる小ネタ、どこを取っても好きしかない。
屏風のぞきの1番好きなシーンに関してはちょっと別枠で書かせてくれ。この人のお芝居もっと見たいし、推しとこれからもたくさん共演して欲しいな……🥺

若だんな
身体は弱くとも芯が強い若だんなこと一太郎。
シャイモンでは妖たちに振り回され、ツッコミまくり、ただでさえ弱い身体を酷使している気がしなくもないけども。
所作のひとつひとつに大店の息子として躾られてきた姿が垣間見える気がして、頭のてっぺんからつま先まで目を離せなかった。
おぎん様の血を引く若だんなは病弱の割に決めたことは譲らない。それを分かっているから兄や達も気が気じゃない。大福の上に黒砂糖を乗せてあんこと琥珀糖でデコレーションした上に白砂糖をまぶしたみたいにゲロ甘な兄や達と妖たち。
若だんなの周りにはいつだって老いも若きも人も妖も集まってくる。そんな雰囲気をしっかり感じた。
個人的にてんげんつうと面と向かって話をするシーンの若だんながとても好き。
声色から既にこの子は「長崎屋の跡取り息子」として商いをするためにこの場に居ることがはっきりと見て取れる。
条件を出してより優位な立場から取引をしようとするてんげんつうと一瞬にして対等な状況をつくる姿はまさに商人そのものだ。
物語として好きなシーンでもあり、前川さんの声ってやっぱりこの仕事をする上でかなりの武器だとしみじみ思ってしまった。
前川さんの声って特徴的で耳に残るから凄く印象的。少し高めの声色と、ちょくちょく出てくる地声がいい緩急を産んでたなぁと思います。
表情の演技も好きなのでオペラでずっと見てた。これに関しては私の語彙力が足りなくて表現出来ないから実際見てくれ。
ょゎょゎ地方民なのでそんなに何公演も入れないんだけど、その時その時の感情をとても大切に演じているんだなぁというのは演技のことなんてど素人の私にも伝わる。
同じやり取りでも受け取る印象が違って毎回全く飽きない。本当に楽しかったです。

ということで、今回の個人的な芝居の見所はなんと言っても屏風のぞきと若だんなのシーンなんですけど皆様どう?
私はここのシーンを見るためにここまで来たんじゃないかと思わせられるほどに見入ってしまった。
フォロワーとも話したけどここを見るためだけに下手の席かき集めたかった。今回まんべんなく上手にも下手にもドセンにも入れたけど結局下手が優勝だったよ。

屏風のぞきといえば若だんなの良き理解者であり、いわゆる悪友みたいな存在だ。兄や達が渋ることでも、屏風のぞきだけは味方でいてくれる。とはいえ、彼は「100年人に愛されたモノだけがなれる付喪神」なのだ。人間の一生よりも長い時間を過ごしてきた人ならざるもの。
100以上の年月を過ごしてきた付喪神と明日の命も分からない日々を生きてきた人間。たとえどんなに対等な関係を築いてきたとしても、時間は埋められない。
「屏風のぞきに何がわかるんだよ」
この一言に込められた感情と、それを受ける屏風のぞきの表情や仕草が毎回少しずつ違うのが本当に好きだった。不甲斐なさが怒りとして現れている日もあれば、焦燥感を強く感じる日もあって、視線や身体の向き、表情、どこを取っても同じ日がなかった。
人から100年愛されて命が宿った付喪神と、明日の命も危うい人生を送ってきた人間なのだから分かるはずがないのは当たり前なのかもしれない。それでも、若だんなの心情の吐露を聞いて、しっかりと抱き寄せる屏風のぞきの手つきはいつだって赤子を抱くように優しくて、嘘偽りなくずっとそばで見てきたんだと伝わる。五つの子供みたいだと言われて鼻をすする若だんなの表情は本当に幼くて思わず微笑んでしまう。
自分は紙だと散々言っている屏風のぞきが迷いなく若だんなの涙を拭うことにどれだけの意味があるんだろう。きっと今まで幾度となくこうやって涙を拭ってきたんだろうなぁと思わせられる。
仁吉や佐助とは少し違う目線で、ずっと若だんなのそばに居た屏風のぞきだからこそ若だんなの心を溶かすことができたのかもしれない。
100年人に愛された付喪神だもの。人を愛して、御大切にすることだって出来るさね。

さてさて今思い浮かぶことは全部書いたと思うんだけれども。
これは前作を見た時からずっと思ってるけどシャイモンって脚本がめちゃくちゃ良い。原作の雰囲気をそのままに、短編集として描かれた物語をぎゅぎゅっと凝縮して形にしたみたいな作品だ。
帰りの飛行機で原作のてんげんつう読んでたら思ったよりあっさり終わってびっくりしたんだから。短編集なのでそりゃそうかとも思ったけど。
曲も良いし、脚本もいい。
尻を犠牲にして見たマチジュルソワも本当に楽しくて幸せがいっぱい。

願わくばいつかまた、長崎屋に行けるといいなぁと思います。

おしまい。


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