神宮外苑の樹木の冷却効果は「気温抑制に欠かせない」伐採で熱中症など健康被害の恐れも指摘【調査結果】「樹木が私たちを守ってくれるなら、私たちが樹木を守らなければならない」。調査から、神宮外苑の樹木のもたらす冷却効果が明らかになりました【研究結果】都市の30%を樹木で覆った場合、平均気温が0.4℃、死者数が4割近く減る可能性があることがわかりましたなぜ明治神宮外苑の1,000本の樹木を切ってはいけないのか?気候変動の視点から解説します等新宿外苑樹木伐採問題PDF魚拓


東京都知事選(7月7日投開票)の争点の一つに、明治神宮外苑(新宿区など)の再開発事業が浮上している。外苑の樹木の伐採が主な論点で、主要候補者の意見は割れているものの、神宮内苑の「100年の森」の樹木と混同していると受け取れる発言もある。再開発は民間事業のため、都が現在、事業者側に求めている樹木保全策が提出されれば事業を止めることは困難な状況だ。

内苑と外苑

明治神宮外苑の再開発は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて新築し、商業施設などが入る高層ビル2棟を建設する計画。工事に伴い、外苑の「シンボル」である4列のイチョウ並木を保全しつつ、その他743本の樹木を伐採する。

再開発は、事業者の一つである宗教法人明治神宮の運営を維持する目的もある。神宮内苑(渋谷区)の公益事業は、外苑にあるスポーツ施設などの収益で成り立ってきた。このため老朽化が進む外苑内の施設の建て替えは急務となっている。



異なる目的

「100年かけて先人が守って育んできたものを伐採して植樹しても、育つのに100年かかる」

無所属新人で前参院議員の蓮舫氏(56)は、都知事選告示前日の19日に日本記者クラブが主催した記者会見で、植樹などで外苑の樹木数が再開発前より増えるとした無所属現職の小池百合子氏(71)の意見に、こう反論した。

蓮舫氏や再開発に反対する住民らは、神宮外苑の創建(大正15年)から約100年がたつ樹木の伐採に異議を唱える。ただ、外苑は創建当初から神宮球場や相撲場などの施設があり、往来に面した部分もあるため、常に人の手が入っていた。

これに対し、神宮内苑の森林は「100年の森」といわれ、明治天皇と昭憲皇太后を祭る鎮守の森を造成すべく大正9年の創建に当たり約10万本が献木された。100年先も森であり続けるよう、専門家を交えて構成木を決めるなどして自然のまま育まれ、成長した約3万6千本が生い茂る文字通りの「森林」となっている。

宗教法人明治神宮は「同じ『100年』でも、内苑の森と外苑の木々は植えられた目的が異なる」とする。



「争点でない」

「争点になると言ったが、なりません。なぜなら今、立ち止まっているからです」。小池氏は19日の共同記者会見で、再開発は「いったん立ち止まる」べきだと主張する蓮舫氏に、こう気色ばんだ。

再開発事業は、都が昨年2月に施行を認可し同3月に着工。同9月、都は事業者側に対し、樹木の伐採前に保全策を提出するよう要請した。

保全策は今も未提出で、他の工事は進んでも樹木が伐採されていないことから、小池氏は「立ち止まっている」との認識を示す。ただ、蓮舫氏はすでに実施された環境影響評価(アセスメント)などの再検証を公約に掲げ、工事全体を見直すことを示唆している。

アセスメントの再実施については、都の環境影響評価条例で、樹木保全策の内容が「環境に著しい影響を及ぼすおそれがあると認めるとき」に求めることができると定められている。

都幹部は「条例にある『著しい影響』は、新たに構造物が見つかるなど想定外の事態が発覚した場合のことだ。恣意(しい)的に解釈すれば手続き上は可能でも、職権乱用のそしりは免れない」と指摘。保全策が提出されれば、誰が新たな都知事になっても、伐採を止めることは法令上難しいとの認識を示した。

再開発事業を巡っては、無所属新人で前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)は「広く街づくりの発想として人と自然の調和は重視していくべきだ」、無所属新人で元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)は「神聖なものはできるだけ残して、もとの形を守っていった方がいい」との認識をそれぞれ示している。(楠城泰介)

神宮外苑再開発で「100年の森」内苑樹木と混同か…都知事選争点も事業見直しは困難

2024/6/27 18:10


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都市部に木を増やせば、ヒートアイランドによる死者数を大幅に減らせる可能性がある――。

都市に植えられた樹木が、住民の健康に良い効果を与える可能性あることが、医学雑誌ランセットに1月に掲載された調査で明らかになった。

研究では、都市の30%を樹木で覆った場合、平均気温が0.4℃下がり、死者数が4割近く減る可能性があることがわかったという。



ニューヨーク・セントラルパーク

Michael Lee via Getty Images

平均気温も死者数も下がる可能性

スペインのバルセロナ・グローバル・ヘルス研究所などの国際研究チームは、ヨーロッパの93都市における2015年夏の死者数とヒートアイランド現象の関連を調査。その結果、気温上昇に起因すると考えられる死者数が6700人だったことがわかった。

さらに、研究チームはこのデータを分析し、都市部の30%を樹木で覆っていた場合に死亡率はどう変わっていたかを推定した。

すると、平均気温が0.4℃下がり、2644人もの死亡を予防できていた可能性があることがわかった。これは死者数の4割近くに迫る人数だ。

東京では過去100年で平均気温が3.3℃上昇

日本でも、問題になっているヒートアイランド現象。

高層ビルなどの建物が密集し、自然が少ない都市部の温度が周辺地域より高くなる現象で、熱中症など健康に悪影響を及ぼす。

その代表格といえるのが東京だ。気象庁によると、東京では過去100年で平均気温が3.3℃上昇。熱中症による死者数も増加傾向にある。



東京都

Taro Hama @ e-kamakura via Getty Images

世界経済フォーラムは、東京のような都市で温度が上昇すると、エアコンの稼働量が増えてエネルギー使用や二酸化炭素排出量を押し上げ、その結果ますます温度が上昇して人々の健康を脅威にさらすとの見解を示している。

今回の研究に携わったバルセロナ・グローバル・ヘルス研究所のMark Nieuwenhuijsen氏は、樹木を増やすことにはヒートアイランド現象に関連する死者数だけではなく、さまざまな疾患やメンタルヘルスの不調を減らすなどの利益がある、とガーディアンの取材で指摘。都市部により多くの樹木を植えることを優先すべきだと強調している。

また、オックスフォード大学のYadvinder Malhi教授も「樹木は都市部の気候変動への抵抗力を強め、環境を改善する上で非常に重要です」と同メディアに述べている。

都市に木を増やすことは命を救う。暑さによる死者数を減らす可能性が明らかに【研究結果】

都市の30%を樹木で覆った場合、平均気温が0.4℃、死者数が4割近く減る可能性があることがわかりました



Satoko Yasuda 安田 聡子

2023年02月20日 17時33分 JST




明治神宮外苑の樹木には、地表面温度上昇を抑える効果があることが、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンが実施した調査で明らかになった。

神宮外苑の再開発では、1000本近い樹木が伐採や移植されることになっている。

グリーンピース・ジャパンは、こういった樹木が、周辺の地表面温度や気温に与える影響を調査。その結果、神宮外苑の地表面温度は周辺地域より低いことがわかった。

グリーンピース・ジャパンで気候変動・エネルギーを担当する鈴木かずえ氏は11月2日、東京都庁で記者会見し、気温上昇を抑制するためにも、神宮外苑の樹木保存が重要だと訴えた。



グリーンピース・ジャパンの鈴木かずえ氏

HuffPost Japan

神宮外苑は、周辺地域より地表面の温度が低い🌲

グリーンピース・ジャパンは、神宮外苑の樹木による冷却効果を調べるために、2022年6月と9月に調査を実施した。

6月の調査では、衛星画像を使って神宮外苑と周辺の住宅密集地の地表面温度を測定して比較。その結果、神宮外苑の方が2〜4℃程度低かった。

さらに、代々木公園や新宿御苑などの都内の大きな公園の地表面温度も、周辺地域と比較して約6〜7℃低かった。

また、9月の調査では、赤外線サーモグラフィーを使って神宮外苑内4カ所の表面温度を測定したところ、樹木によって作り出された日陰部分のアスファルトの表面温度は、日向に比べて最大18℃低かった。

グリーンピースは、これらの調査結果から「神宮外苑の樹木が、日陰を作って表面の温度を下げることや、都市の中に涼しいエリアを作っていることがわかった」と説明。

ヒートアイランド現象や気温上昇を緩和するために、既存の樹木を保存すると同時に、新たな緑地をつくるよう求めた。 



明治神宮外苑のいちょう並木

HuffPost Japan

健康被害の危険も

記者会見に参加した東京都立大学の三上岳彦名誉教授(気候学)によると、大規模な緑地に気温を低下させる効果があることは、過去の調査でも実証されている。

三上氏によると、緑地の温度が低くなる理由は、大きくわけて2つある。

1つは「蒸散効果」と呼ばれる、葉の表面から水分が蒸発する現象で、水分を大気中に放出することで、周辺の気温が上昇するのを和らげる。

もう1つは日差しを遮る「遮蔽効果」だ。木が日陰を作ることで、夏の暑い日中に、道路の表面温度だけでなく気温も下げる。

また、夜になると緑地にたまった冷たい空気が流れ出して周辺の市街地を冷やす「天然のクーラー」の効果もある。

三上氏は、神宮外苑の樹木を伐採して冷却効果が失われれば、周辺の歩行者や屋外で働く人たちに熱中症などの健康被害が起きる危険がある、と語った。



東京都立大学の三上岳彦名誉教授

HuffPost Japan

新しい木は、替わりにはならない🙅‍♀️

神宮外苑の再開発で伐採される樹木には、樹齢100年以上の歴史的な大木も数多く含まれる

再開発事業者は、新たに植樹する意向を示しているが、三上氏は「既存の樹木の替わりにはならない」とも指摘する。

「若い木は葉の密度が少なく、日射を遮る効果も、蒸散効果もありません。同じ本数の木を植えるので構わないというのは、詭弁だと思います」

さらに、再開発では高層ビルやホテルの建設が予定されているが、それにより更に気温が上昇する可能性があると話す。

「ビルから出る人工排熱は気温をあげます。伐採で緑の効果がなくなると同時に、建物を作ることで、人工的な熱がさらに増えると思います」

「樹木が守ってくれるなら、私たちが樹木を守らなければ」🍃

地球温暖化が問題になる中、特に都市部で急速に温度上昇が進んでいることがわかっている。気象庁によると東京では過去100年で3.3℃上昇した。

このヒートアイランド現象を抑える効果があるとして注目されているのが都市部の樹木だ。

それにも関わらず、今回の再開発では、歴史ある大木も含めて1000本近い樹木が伐採や衰退の危機にさらされている。市民からは反対の声が上がっており、見直しを求める署名活動には、11月3日時点で10万8000筆以上が集まっている。

署名活動の発起人である経営コンサルタントのロッシェル・カップさんも、2日の記者会見に参加。

「今回の調査で、神宮外苑の樹木が東京のヒートアイランド化の減少に大きく貢献していることが証明されました。樹木が私たちを守ってくれるなら、私たちが樹木を守らなければなりません。気候変動に関する環境の面からも、計画の見直しが必要です」と訴えた。



HuffPost Japan

HuffPost Japan

グリーンピース・ジャパンは、独立した第3者による追加評価を実施して、健康な樹木が伐採されることを防ぎ、移植などによる損失を最小限にするよう求めている。

神宮外苑の樹木の冷却効果は「気温抑制に欠かせない」伐採で熱中症など健康被害の恐れも指摘【調査結果】

「樹木が私たちを守ってくれるなら、私たちが樹木を守らなければならない」。調査から、神宮外苑の樹木のもたらす冷却効果が明らかになりました



Satoko Yasuda 安田 聡子

2022年11月03日 10時17分 JST

|更新 2022年11月04日 JST


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都市部に木を増やせば、ヒートアイランドによる死者数を大幅に減らせる可能性がある――。

都市に植えられた樹木が、住民の健康に良い効果を与える可能性あることが、医学雑誌ランセットに1月に掲載された調査で明らかになった。

研究では、都市の30%を樹木で覆った場合、平均気温が0.4℃下がり、死者数が4割近く減る可能性があることがわかったという。



ニューヨーク・セントラルパーク

Michael Lee via Getty Images

平均気温も死者数も下がる可能性

スペインのバルセロナ・グローバル・ヘルス研究所などの国際研究チームは、ヨーロッパの93都市における2015年夏の死者数とヒートアイランド現象の関連を調査。その結果、気温上昇に起因すると考えられる死者数が6700人だったことがわかった。

さらに、研究チームはこのデータを分析し、都市部の30%を樹木で覆っていた場合に死亡率はどう変わっていたかを推定した。

すると、平均気温が0.4℃下がり、2644人もの死亡を予防できていた可能性があることがわかった。これは死者数の4割近くに迫る人数だ。

東京では過去100年で平均気温が3.3℃上昇

日本でも、問題になっているヒートアイランド現象。

高層ビルなどの建物が密集し、自然が少ない都市部の温度が周辺地域より高くなる現象で、熱中症など健康に悪影響を及ぼす。

その代表格といえるのが東京だ。気象庁によると、東京では過去100年で平均気温が3.3℃上昇。熱中症による死者数も増加傾向にある。



東京都

Taro Hama @ e-kamakura via Getty Images

世界経済フォーラムは、東京のような都市で温度が上昇すると、エアコンの稼働量が増えてエネルギー使用や二酸化炭素排出量を押し上げ、その結果ますます温度が上昇して人々の健康を脅威にさらすとの見解を示している。

今回の研究に携わったバルセロナ・グローバル・ヘルス研究所のMark Nieuwenhuijsen氏は、樹木を増やすことにはヒートアイランド現象に関連する死者数だけではなく、さまざまな疾患やメンタルヘルスの不調を減らすなどの利益がある、とガーディアンの取材で指摘。都市部により多くの樹木を植えることを優先すべきだと強調している。

また、オックスフォード大学のYadvinder Malhi教授も「樹木は都市部の気候変動への抵抗力を強め、環境を改善する上で非常に重要です」と同メディアに述べている。

都市に木を増やすことは命を救う。暑さによる死者数を減らす可能性が明らかに【研究結果】

都市の30%を樹木で覆った場合、平均気温が0.4℃、死者数が4割近く減る可能性があることがわかりました



Satoko Yasuda 安田 聡子

2023年02月20日 17時33分 JST

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(22)02585-5/abstract







1000本近い樹木伐採の可能性がある明治神宮外苑地区の再開発について、小池百合子知事をはじめ東京都は「新たな植樹などで緑は増える」と繰り返し説明している。樹齢100年級の巨木が切られ、代わりに植えるのは若木のため、木の本数は増えてもボリュームは減り、緑の質は大きく変わる。記録的な猛暑が続く中、「ヒートアイランドは強まって外苑の気温は上昇する」などと専門家からは反発する声が上がる。(森本智之)

◆小池知事「伝わってないようですけど…」

 明治神宮外苑の樹木伐採 新宿区都市計画審議会の資料によると、再開発エリアの約1900本のうち約900本を伐採。新たに1000本近くを植え、合計樹木は1972本となる。伐採する樹木の大半は外苑の創建時に植えたとみられ、文化的、歴史的価値の観点などから「新たに植えても代えは利かない」との批判が起きた。東京都の環境影響評価の資料によると、計画地内に新たにつくられる緑地の面積の62%は屋上緑化(高さ2メートルほどの低木)で、26%は芝生。残りは高さ4メートルの樹木が8%、8メートル程度の木は4%にとどまる。このため再開発後に緑地の面積は2割弱増えるが、体積は約1割減る見通し。

東京都の小池百合子知事

 「1000本切り倒すみたいな話しか伝わってないようですけど間違いです。約1900本から約2000本へ増える計画になっています」。小池氏は5月27日の会見で事業者の計画に理解を示した。都の上野雄一技監(当時)も2月の都議会で「今回の計画は従来よりも緑の量を増加させるなど緑を充実強化し、緑を保全する」と答弁。これが樹木伐採に対する都側の見解だ。

◆「100年の大木と若木ではレベル違う」

 樹木の生態に詳しい千葉大の藤井英二郎名誉教授(環境植栽学)は周辺を涼しくする樹木の冷却効果に着目し「100年の大木と、新たに植える若木ではレベルが全然違う。緑の持つ効果は増えるどころか、確実に損なわれる」と反論する。

 木陰は直射日光を防ぐ。夏場のアスファルトの路面温度は50度を超えることもあるが、木陰では20度ほど下がる。加えて、樹木は表面が温められると葉から水蒸気を放出、その際に周囲の熱を奪う特性がある。こうした樹木の性質がヒートアイランドの緩和に役立つ。木が大きい方が効果も大きくなる。

 藤井氏によると、深刻化する温暖化から都市を守るため、欧米では高木の枝や葉(樹冠)が覆う緑陰の面積を引き上げることに腐心している。「新しく植えても樹冠は大きく縮小する。本数を確保すればいいというのは、国際的標準からずれた発想だ」という。

 ヒートアイランドに詳しい東京都立大の三上岳彦名誉教授(都市気候学)も小池氏の発言を「新しく植えた木が、今の木と同じ冷却効果を発揮するのは100年後」と疑問視する。外苑の再開発では高層ビルを建てるが、コンクリートは熱をため込み、ビルの空調設備の排熱などで都市を温めるためヒートアイランドの一因になる。「天然のクーラーを減らしてストーブを作るようなもの。再開発で外苑地区の気温は上がるはずだ」と推測する。

【関連記事】明治神宮、実は「財政問題」…外苑再開発の背景に 稼ぎ頭の球場の建て替えがネック

▶次のページは…樹木が街を冷やす効果は実証済み、世界の潮流に逆行
◆「広大な敷地、一宗教法人だけでは負担が大きすぎる」

 明治神宮は初詣の参拝者が日本一多いといわれるが、実際の財政は、スポーツ施設や結婚式場の明治記念館の使用料収入など、外苑の稼ぎに頼る構造になっているという。神社界の関係者の1人は「外苑の収益事業があるからやりくりできる状況」と話す。

 神宮球場は今年完成から96年を迎えるなど老朽化が進み、建て替えが課題だ。明治神宮の担当者は「神宮を維持するにはスポーツ施設の運営が非常に重要で、どうしてもこの機会に更新する必要がある」と述べた。今回の再開発に4事業者の1つとして参加することで、既存の球場を使いながら近接地に新球場を建設し、利用できない期間をなくすことができる。

 外苑は、国や自治体が公金で運営する一般的な公園と異なり、維持・管理費は明治神宮など地権者が担う。これら費用が同神宮の財政を圧迫しているといい、別の神社界関係者は「外苑の広大な敷地を一宗教法人だけで管理するのは負担が大きすぎる」と再開発に理解を示す。

国立競技場に近い再開発エリアの森

 今回の再開発では高層ビルが立ち並び、900~1000本の樹木が伐採される可能性があるなど、外苑の環境は大きく変わる。外苑は、明治天皇と昭憲皇太后の遺徳をしのぶため、国民からの寄付、献木、勤労奉仕という民間の力で整備されたことなどを踏まえ、神社界には「創建時の趣旨とは違う形で変貌する」と再開発に否定的な声もある。

◆関係者は「公金支援も必要では」問題提起

 明治神宮総代で、神宮の自然環境に詳しい進士(しんじ)五十八(いそや)・元東京農大学長は「都心のオープンスペースとして恩恵を受けてきたのは私たち市民であり、明治神宮だけの問題ではない。再開発の内容を改善するには、東京都など行政が公金で支援することも必要ではないか」と問題提起する。

 外苑の再開発を巡っては「30年くらい前から浮かんでは消えを繰り返していた」(神社界関係者)とされ、収益性を高めるため球場のドーム化が検討されたこともあったという。2005年には月刊誌で明治神宮の元職員が、財政状況を踏まえて再開発に言及したこともあった。

小池知事は「緑増える」と言うけれど…神宮外苑の樹木伐採に「天然のクーラー減らし、ストーブ作るのか」と懸念の声

2022年7月1日 06時00分


「もう、断崖絶壁に追い詰められているという思いです」

多くの人たちに、100年以上愛されてきた明治神宮外苑の4列いちょう並木。

中央大学研究開発機構の石川幹子教授(都市環境計画専門)は、このいちょう並木が再開発で危機的な状況にあると訴えている。

石川氏は8月15日、東京都庁で記者会見を開き、過去の保全事例の調査をもとに、このままではいちょう並木が取り返しのつかないダメージを被る可能性があると指摘した。



明治神宮外苑の4列いちょう並木。左手に新球場が立つ予定だ

HuffPost Japan

8メートルでは足りない。新宿御苑の調査からわかったこと

再開発では、現在の秩父宮ラグビー場の場所に、新しい神宮球場が建設される予定だ。

しかし新球場の外壁が、いちょうから8メートル弱と間近に迫る計画になっていて、地下構造部がいちょうの根を傷つける可能性があると指摘されてきた。

神宮外苑は、日本初の風致地区に指定された場所で、特に樹齢100年を超えるいちょう並木は、文化庁が2012年にまとめた「近代の庭園・公園等に関する調査研究報告書」で「重要事例」として特記されている。

これは「名勝としての指定または登録記念物としての登録の候補」であり、「重要事例」はその中でも、文化的景観など「名勝地以外の視点からの評価に基づき、保護措置を講ずることが適切な場合もあることを考慮する必要がある」とされている。

この外苑再開発では「いちょう並木を絶対に守る」ということが大前提になっている。構造物の建設により樹木がどのような影響を受けるかは、データがなく「不確実性」を検証することが困難だ。しかし石川氏は先行事例として、新宿御苑トンネルの建設時に保全された樹木を調査した。

新宿御苑の地下を走るこのトンネルは、御苑の森を守るため、1980年代に着工し1991年に開通。この時、トンネル上部近くに生えていた樹木の多くを移植した一方で、歴史的に重要な巨樹で移植が困難な樹木は、そのままの場所で保全したものもあった。

自身もこの保全活動に携わった石川氏は、過去の記録を参考に、トンネルからの距離と樹木の残存率を調査。

トンネルの壁面から15メートル以内で移植せずに保存した樹木のうち、残っていたのは33%にあたる31本。うち10メートル以内にあった樹木は、ほぼ残っていなかった。

その一方で、外苑にあるいちょうの母樹にあたる御苑の大いちょう並木(樹齢300年)については、トンネルから7メートルの位置にあったものは、生存が困難と判断し移植(2本)。およそ15メートルの位置にあった13本はトンネル建設後も順調に成長し、15メートル以遠のいちょうも含めて21本、すべて守られた。

石川氏は「この事例から少なくとも15メートル離す必要があることがわかった」と話す。

ただし、御苑の場合はトンネル上に深さ3.5メートルほどの表土があるが、外苑いちょう並木の場合は野球場の外野スタンドとなり、表土がない。降った雨の受け皿がないことを考えれば、いちょうの生育環境としては、現在よりも、遥かに劣悪になると指摘する。

こういった結果から、石川氏は、今の計画のままでは新球場の壁面から8メートルしか離れていない外苑いちょう並木は、樹勢が確実に衰えていくだろうと話す。

「(いちょう並木は)4列平等に成長するから美しいのですが、その本来の美しさは、今後、確実に維持できなくなると思います。歴史に責任を持つ必要があります」



図面を広げて新宿御苑の調査結果を伝える石川幹子教授(2022年8月15日)

HuffPost Japan

環境影響評価審議会は「約束守らず」

このいちょう並木の保全をめぐり、8月16日には東京都の環境影響評価審議会が開かれた。

5月に開催された審議会では、事業者側がいちょう並木を確実に守れると保障するデータなどを提示できず、専門家の委員から計画の不確実性に対する疑念の声が相次いだ。

そのため、今回の審議会では、この疑念に対して具体的データを提示し、100年の歴史があるいちょう並木を100年後も守れるという確実な証拠を示すことが求められていた。

しかし石川氏は「その目的が、果たされなかった」と厳しく批判する。

16日の審議会で、事業者側は樹木医による根の調査の実施や、新球場の地下構造部の見直し、外壁の後退などを検討すると説明。改めていちょう並木を守ると強調した。さらに、樹木の伐採数を当初の約1000本から約550本に減らす新しい計画も提示した。

しかし石川氏は「伐採樹木の数、新植樹木、伐採した樹木をどう処分するか等は、論点ではなかった」と述べる。

「今回の審議会では、なんら新しいデータは提示されませんでした。樹木医の処方などは、どこでも行っていることで、今回は並木全体が問われています」

「(いちょう並木を守れるかどうかの)不確実性については、事業者が頑張りますと決意を述べるだけでは、答えにはなりません。審議会委員も『立派な決意で、評価できる』と述べていましたが、これでは審議会委員としての責務が果たされていません」

さらに、石川氏は、新宿御苑での調査結果は「100年を超える樹木をどうやったら守れるかについての歴史的事例」だ、と話す。

「この先例から事業者と委員の双方が学ばず、『不確実性』に対する担保がないまま計画を決定すれば、民主的判断の原則に反し、審議会が恣意的決定を行なったと批判されても言い訳はできません」

「不確実性をどうやってなくせるかを考えてもらうため、新宿御苑の事例を提示しましたが、もう一度審議会を開催し、明確な責任を果たすことを求めます」



石川氏は、今の計画のままでは4列いちょう並木は、新球場に近い方から樹勢が失われると危惧する

HuffPost Japan

石川氏は、外苑いちょう並木は文化庁が名勝候補としている場所であり、その重要性を認識すべきだとも強調する。

15日の会見では「文化庁が記念物にしなさいと10年前から認定している並木であり、保護されないのであれば、国レベルでの要請も検討する必要があるのではないか」とも訴えた。

神宮外苑いちょう並木は「確実に維持できない」専門家が計画を厳しく批判。事業者はデータ示さず

「いちょう並木は4列平等に成長するから美しい。その本来の美しさは確実に維持できなくなると思います」



Satoko Yasuda 安田 聡子

2022年08月18日 10時50分 JST

|更新 2023年01月22日 JST


https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/pdf/teien_kouen_chousa.pdf





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「このままではゴーサインは出せない」

明治神宮外苑再開発計画の評価書に「虚偽がある」と指摘された問題をめぐり、東京都の環境影響評価審議会の委員から強い懸念が示されている。

三井不動産などの事業者は1月20日に、この再開発計画の環境影響評価(アセスメント)の評価書を提出し、東京都が公示した。

しかしユネスコの諮問機関である日本イコモスは1月29日、評価書では数多くの「虚偽の報告や資料の提出」が行われているとして、その詳細を48ページに渡る文書で説明した。

日本イコモスは「評価書の調査や予測は非科学的だ」として、小池百合子東京都知事による事業者に対する勧告と、環境影響評価審議会の再審を求めている。

ゴーサインを出すことは難しい

1月30日に開かれた環境影響評価審議会では、複数の委員がこの問題を指摘。

千葉大学大学院の池邊このみ教授は「事業者側の言い分もあると思う」とした上で、「環境影響審議会で、虚偽の報告が行われている評価書をそのまま受け取られるということがあれば、都民の信頼を裏切る行為だ」と述べ、修正した評価書の提出を求めた。

さらに、東京藝術大学非常勤講師の水本和美委員は「虚偽という言葉が出ていることは、真摯に受け止めねばならない」と懸念を表明。

審議会会長で明治大学名誉教授の柳憲一郎氏も「現段階で虚偽という指摘がされているので審議会としてゴーサインを出すことは難しい」と苦言を呈した。

問われる都知事の対応

一方、事業者は「特に間違った内容や不備があるとは考えていない」と回答したが、審議会では評価書に虚偽はないという具体的な立証はなかった。

さらに事業者は着工届を提出した後、本格的な工事に向けた準備として、仮囲いの設置作業など準備作業を始めている。環境影響評価審議会で「ゴーサインを出すのが難しい」と言われている状態で、事業者が計画を進めることに問題はないのか。

環境アセスメントの専門家である千葉商科大学の原科幸彦学長は「都の対応が問われている」と述べる。

原科氏が挙げるのが、東京都の環境影響評価条例第91条だ。

91条には、「事業者が虚偽の報告もしくは資料の提出をした場合、知事は事業者に対し、必要な措置を講ずるよう勧告することができる」と書かれている。

原科氏は「知事が必要な措置を講ずるよう勧告することができる、とされているので、ここは知事の判断次第です。小池知事がどうするかの判断が問われています」と話す。



東京都の中心地でありながら豊かな自然が残る神宮外苑。「都会のオアシス」となってきた

Huffpost Japan

都営住宅への騒音について

審議会では、神宮球場の建て替えで、都営住宅の騒音レベルが悪化する問題も取り上げられた。

原科氏によると、今回の評価書の公示で、神宮球場のスタンド面高さでの都営住宅の騒音は、現状で環境基準の55デシベルを超える58デシベルであることがわかった。

神宮球場を移設すると、外苑の東側にある都営住宅との距離が半減し、その結果騒音の問題がさらに深刻になるという。

「今は160メートル離れていますが、新球場をイチョウ並木直近に移設した場合、距離が80メートルに半減します。その結果、騒音レベルはさらに4デシベルも上がり、62デシベルに。これではアウトです(環境基準は昼間55デシベル以下、夜間45デシベル以下)」

原科氏によると、環境アセスメントでは、近隣の住民に悪い影響を与えないための「現状非悪化原則(現状より環境を悪化させない)」というものがある。

現状で騒音レベルが環境基準より低い場合は、環境基準まで上ることは許容される。しかし環境基準を満たしていない場合、通常さらなる悪化は認められない。

「状況により誤差の範囲程度の悪化は認められる場合がありますが、それには事業の公益性が高くなければいけないという条件があります。さらに、当面は基準を僅かに超過したとしても、近い将来に改善策が講じられることが必要になります」

「神宮球場の移設に公益性はありませんから、移設は許されないと考えるのが自然だと思います」

池邊教授も、騒音レベルが上がることについて「アセスではありえないことであり、公害基準が環境基準を圧迫する時は、まずいという判断がなされるべき」と審議会で述べた。

都営住宅の騒音はすでに改善が必要な状態であり、原科氏は、この騒音問題について住民が声を上げることができるとも話す。

「都営住宅の騒音は、すでに改善が必要な状態です。それがさらに悪化するわけなので、住民が被害を訴えれば提訴できるレベルの問題です」



明治神宮外苑では、工事に向けた仮囲いが始まっている

Mao Kawaguchi

審議会の委員は「助言」しかできないのか

審議会では、事務局である東京都の担当者が、委員の指摘や要請を「助言」と述べる場面が多々見られた。

委員の指摘は「助言」に過ぎず、計画に反映することはできないのか。

原科氏は、東京都の環境影響評価条例では、「知事は、審議会の意見を聴いて」となっており、審議会委員の要求は「単なる助言ではない」と指摘する。

さらに審議会の運営方法について「事業者から情報を得た場合、事業者を外し、審議会の委員だけで議論をすることが重要だ」とも述べた。

「事業者主導ではなく、あくまでも審議会が主導であり、その意見を知事が聴いて指示を出す。そうすることで、環境アセスメントは効力を発揮します。そのためには、十分な情報公開が必要です」

神宮外苑の再開発に「ゴーサインは出せない」と審議会委員。それでも事業は進められるのか

1000本近くの樹木が伐採や衰退の危機にある神宮外苑の再開発。審議会では委員から「都民の信頼を裏切る行為」などの厳しい指摘が出された



Satoko Yasuda 安田 聡子

2023年02月08日 7時5分 JST




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