【日本シリーズ】あえてジャイアンツの戦略を想像で読み解く

2020年の日本シリーズ。
2年連続で同じ顔合わせとなりました。
パ・リーグ代表:福岡ソフトバンクホークス
セ・リーグ代表:読売ジャイアンツ

結果としては、大方の予想通りホークスの圧勝となりました。

巨人ファンの私から見ても差は明らか。
ホークス投手陣を打ち崩せそうに見えなかったし、
ホークス打線は一切手を緩めることなくジャイアンツ投手陣に襲い掛かりました。

圧倒的な実力差を見せつけられました。

それは事実なので仕方ありません。
ただ、これに対してDH制にしたら変わるとか、スイングが違うとか、CSを実施しなかったからとか、非常に短絡的な答えだけでまとめようとするのはどう考えても間違っていると感じます。

ソフトバンクが球団を持ったのは2005年シーズンからです。
福岡ダイエーホークスという21世紀に入ってからは毎年上位にいた強豪という土台がありながらもそこから15年かけて日本シリーズを4連覇するチームを作り上げています。
補強も育成も、選手管理も戦略も。
ホークスファンではないので詳しくは分からないですが、すべてが高いレベルにいるチームです。
しかし、この間プレーオフで負け続けたり、Bクラスも挟んだりしての今があります。
それなのに、1つや2つの課題だけでホークスと同じような位置にまで行けるはずがありません。そんな魔法みたいなことがあればとっくに他球団が強くなっているでしょう。

ということで、ここでセパの格差なんて論じても意味がありません。
非常に根深いところから違っているでしょうから。


ということで、4連敗を喫した読売ジャイアンツですが、
あえて巨人原監督の戦略をめちゃくちゃ好意的に考察していきます。
原監督がホークスから4勝するためにどんな青写真を描いていたのかを想像していきます。
(注:あくまですべて私の想像です)


1.日本シリーズにおける疑問点

日本シリーズを見ていた方で、最も大きな疑問点は次の2つでしょう。

(1) 戸郷のリリーフ
(2) 第2戦の先発今村

ここが「?」となった方が多かったのではないかと思います。

2.ジャイアンツ投手陣

それを考える前に、ホークスからどう4勝するかを考えてみましょう。
巨人の主な先発候補は以下の通り。
菅野:14勝2敗 防御率1.97
戸郷:9勝6敗 防御率2.76
サンチェス:8勝4敗 防御率3.08
今村:5勝2敗 防御率3.16
田口:5勝7敗 防御率4.63
畠:4勝4敗 防御率2.88
桜井:2勝4敗 防御率4.95
高橋:1勝3敗 防御率4.30
(成績は2020年シーズンのもの。勝利数順)

防御率を見ても、日本シリーズの先発として起用できそうなのは、菅野、戸郷、サンチェス、今村、畠の5人。
ただ、ホークスから4勝を挙げなければなりません。
となると、まず菅野の2戦2勝は絶対条件。
そして残りの5戦のうち2勝をもぎ取る。
こういう算段であったのは多くの方の想像に難くないところでしょう。

そして、原監督としてはリリーフには自信を持っていたはずです。
主なリリーフ投手は以下の通り。
鍵谷:46試合3勝1敗13H 防御率2.89
高梨:44試合1勝1敗2S 21H 防御率1.93
大江:43試合3勝0敗9H 防御率3.11
中川:37試合2勝1敗6S 15H 防御率1.00
デラロサ:35試合2勝0敗17S 5H 防御率2.56
大竹:29試合1勝2敗16H 防御率2.59
ビエイラ:27試合0勝1敗2H 防御率3.28
(成績は2020年シーズン。登板数順)

このリリーフ陣はホークス打線といえども苦しみそうなかなりの強敵ぞろい。
ホークスの勝利の方程式は難攻不落ですが、巨人のリリーフ陣もかなりの鉄壁。

となると、6回まで何とかなれば、後は細かな継投で逃げ切る。
こういう考えを立てていたでしょう。

そして、巨人のチーム防御率は3.34、ソフトバンクは2.92。
勝負は3点~4点、5点以上取られると厳しい。
相手の投手力を考えると、これくらいの点数勝負を睨んでいたはずです。

3.第2先発の役割と重要性

ここで前記の疑問点①と②に戻ります。
戸郷のリリーフと今村の先発についてです。

ここでポイントになるのは、
① 先発は3失点しても許される(第2先発は失点が許されない)
② 先発が悪ければスパッと交代できる(第2先発が不調ならジエンド)
③ 左右のバランス

この3点だったのではないかと思います。

まずは①と②についてです。
先ほど書いたように、3点~4点の勝負と見ていたという前提に立つと、先発投手は3失点なら許されるわけです。そして、調子が良くなさそうであれば早めにスイッチできます。
一方で、第2先発は、先発投手の調子が良くないから投げるわけで、基本的に失点がほとんど許されません。失点することはその試合の負け確定を意味します。しかも、ホークス打線に火がつき始めているタイミングで投げるわけですから、非常に厳しい場面から持ちこたえる必要があります。
つまり、第2先発は試合を壊さない最後の砦であり、信頼の厚い投手にしか任せられないポジションです。

そこで、先発で起用できそうな5人(菅野、戸郷、サンチェス、今村、畠)から考えてみましょう。
菅野はジャイアンツのエースで、ホークスから2勝しなければいけないわけですから、文句なしに先発で良いでしょう。彼以外に第1戦を任せられる投手はいません。
そして、サンチェスと畠はシーズン中先発登板しかしていませんので、日本シリーズの大舞台でも先発起用すべきであると考えられます。
さて、戸郷と今村は1試合ずつリリーフを経験しています。
ですが、今村をリリーフにしてしまうと先発が全員右投手となり、ストレートの球速で見ても同じような投手が並んでしまい、ホークス打線の目付け的にはよくありません。
一方、戸郷はシーズン最後にリリーフを経験しています。(その時点で第2先発が決まっていたのかもしれませんが)
そして、ジャイアンツ先発陣の中で2番手の投手であり、球威もある投手。序盤で崩れかけた流れを食い止め、相手打線の火を止めるのは適任と考えられます。
先発が3点~4点を失っても戸郷で凌ぎ、打線がじわじわと追いついて相手にプレッシャーをかけ、鉄壁のリリーフ陣につなぐ。
ソフトバンク打線を完全に封じ込めることは難しいため、こういう試合運びを主として考えていたと思います。
実際、火に油を注いだように打たれ続けた2戦目を除けば、ジャイアンツ投手陣はそれなりの失点で粘っていましたし、特にリリーフ投手は役割をしっかり果たしていました

第1戦と第5戦は菅野で取る前提として、
第3戦か第4戦のどちらかをもぎ取り、
最後総力戦で1勝を取りに行く。

ジャイアンツが4勝するためにはこういう流れで行くしかないと考えていたのではないでしょうか。

もっとも、打線が全くソフトバンク投手陣を追い詰めることができなかったのですが。
仮に、1戦目と3戦目の序盤、4戦目の中盤で1点ずつでもジャイアンツ打線が取れていれば。
もちろん結果は4連敗なのですが、毎試合ソフトバンクの守護神・森に対してはある程度攻め立てていました。そのため、試合の中身はもう少し変わっていただろうと思います。
それだけジャイアンツ打線はひどい結果でしたね。

そもそも、第1戦を菅野で落とした時点でジャイアンツにとって非常に厳しい流れにはなってしまいました。

4.最後に

ソフトバンクは10年以上かけてこのチームを作り上げてきたわけですし、簡単に他球団が追いつくのは簡単ではありません。ただ、パ・リーグはこのソフトバンクと同じリーグにいることで、ソフトバンクに勝つという意識は非常に強いですし、現にシーズンに限ればライオンズが昨年と一昨年は制しています。そして、ソフトバンクにできたことが他球団にできないはずはありません。来年以降も5連覇、6連覇を狙ってくるソフトバンクを止める球団、願わくは日本シリーズでソフトバンクを止める球団が出てくることを楽しみにしたいです。

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