見出し画像

注目の中国企業16社 最新決算分析(2022年4~6月)

チャイトピでは、テンセントやアリババなどの大手企業を中心に、日本でも注目されている中国企業の業績を定期的に分析し、まとめています。

2022年4~6月ではコロナ感染拡大によるロックダウンなどの行動規制強化が中国全体の経済に響いていた。物流が止まったことでサプライチェーンは混乱し、現地に工場を持つ国内外の自動車メーカーは稼働停止を余儀なくされた。また、一部のIT企業では広告主の出稿需要減少やユーザー伸び率の頭打ちなどの難題に悩まされていた。

しかし、6月あたりから中国のコロナ情勢が落ち着きを取り戻したことで、事業に回復の兆しが見られる企業が多く現れはじめた。 

テンセント

売上高:1,340億元(約2.7兆円) 前年同期比3%減少 市場予想を下回った
純利益:186億元(約3,850億円) 前年同期比56%減少
営業利益:301億元(約6,194億円) 前年同期比43%減少
WeChatの月間アクティブユーザー数:13億人 前年同期比3.8%増加


 売上構成

中国オンラインゲーム:318億元(約6,546億円) 前年同期比1%減少
海外オンラインゲーム:107億元
(約2,202億円) 前年同期比1%減少
コンテンツ課金:292億元(約6,010億円) 前年同期比1%増加
広告:186億元(約3,827億円) 前年同期比18%減少
フィンテック/toB:422億元(約8,684億円) 前年同期比1%増加

四半期ベースで初めての減収となった。投資事業における損失や研究開発費などを含むコストの増加により、純利益も前年同期比で半減していた。

減収の原因としては中国当局の教育業界への規制やコロナ感染拡大の打撃などで関連の出稿需要が減り、広告事業の収入に響いたことが考えられる。事業改善の打開策として、同社はユーザーの利用増加が顕著なWechatのショートビデオサービスに着目し、動画広告による巻き返しを図っている。

広告事業の不振が続く中で、収入の柱であるオンラインゲーム事業でも低迷が見られていた。中国市場では当局によるゲーム業界への規制の影響が残っており、この1年間では新規ゲームの発行がない状態が続いていた。海外市場でもコロナ規制が緩和されたため、巣篭もり需要が薄れ、収入が減少していた。

業績の悪化を抑えるために、同社はコスト削減として引き続きリストラに着手し、一部の福利厚生を取り消した。また、傘下NFTプラットフォーム・「幻核」におけるNFT売買も終了させ、不採算事業の見直しを進めていた。

独禁政策によってIT大手らは中国市場での投資に対して慎重になっており、テンセントに関しては同社が保有している「美団(meituan)」の株式を全て売却する計画があると報じられていた。

一方で、同社は海外ゲーム市場への投資を拡大させ、今年の1-8月ではゲーム事業関連の投資が13件あり、うち11件が海外メーカーだ。今後も中国ゲーム業界における規制を懸念し、成長が見込める海外ゲーム事業に注力すると思われる。

アリババ

売上高:2,056億元(約4.3兆円) 前年同期比横ばい 市場予想を上回った
純利益:227億元(約4,671億円) 前年同期比50%減少
営業利益:249億元(約5,124億円) 前年同期比19%減少

売上構成

EC(BtoBtoC):723億元(約1.5兆円) 前年同期比10%減少
直営:647億元(約1.3兆円) 前年同期比8%増加
EC(BtoB):50億元(約1,029億円) 前年同期比26%増加
越境EC:155億元(約3,191億円) 前年同期比2%増加
生活関連サービス:106億元(約2,182億円) 前年同期比5%増加
物流:121億元(約2,490億円) 前年同期比5%増加
クラウド:177億元(約3,643億円) 前年同期比10%増加
メディア/エンタメ:72億元(約1,482億円) 前年同期比10%減少
イノベーション/その他:5億元(約103億円) 前年同期比30%減少

テンセントに続き、0.1%とわずかながらも四半期ベースで初めての減収となった。コロナ禍により「タオバオ」と「Tmall」のGMV(流通総額)が昨年に比べて減少したことが響いた。また、純利益にも影響が及び、前年同期比で半減を記録した。

事業全体で減収や伸び率の低下が目立っている。詳しく見ていくと、主な収入であり「タオバオ」や「Tmall」などを含むEC(BtoBtoC)事業が不振の一方で、生鮮スーパーの「フーマー(盒馬)」や医療関連ネットサービスの「アリヘルス(阿里健康)」の成長で直営事業は増収を果たした。

コロナ感染拡大の影響で傘下フードデリバリーサービス「eleme(餓了麽)」の注文数が減少し、生活関連サービス事業の減収につながった。しかし、6月からコロナ情勢が沈静化し始めたことで、フードデリバリー事業に一定の回復が見られた。

京東(JD)

売上高:2,676億元(約5.5兆円) 前年同期比5%増加 市場予想を上回った
純利益:44億元(約905億円) 前年同期から451%増加
営業利益:38億元(約782億円) 前年同期比1149%増加
年間アクティブユーザー数:5.8億人 前年同期比9%増加 

 売上構成

直販(家電、デジタル製品):1366億元(約2.8兆円) 前年同期比横ばい
直販(日用品):894億元
(約1.8兆円) 前年同期比8%増加
広告:207億元(約4,260億円) 前年同期比9%増加
物流/その他:208億元(約4,280億円) 前年同期比38%増加

コロナ感染拡大の影響で売上高の伸び率は前四半期に比べて落ち込みを見せていた。一方で、投資証券の公正価格の変動により営業外収益が36億元(約745億円)と686%増加したことなどが増益に寄与した。

また、年間アクティブユーザー数の伸び率にも低下が見られ、飽和状態に近づいていた。

事業別に見ていくと、全体の中でもっとも大きな成長を見せたのが物流事業だ。同事業の粗利率は昨年の3.7%から6.2%にまで上昇し、収益化が順調に進んでいた。また、今年8月には傘下の貨物航空会社の運航が中国民用航空局より認められ、同社は2025年に国際線を展開する計画を発表した。今後も事業のさらなる拡大が予想される。

広告事業では連携のブランドが増えたことで増収を維持した。今四半期では「セリーヌ」や「アルマーニ」などの高級ブランドが続々と京東にてネットショップをオープンした。

美団(meituan)

売上高:509億元(約9,005億円) 前年同期比16%増加 市場予想を上回った
調整後純利益:21億元(約430億円) 前年同期から黒字転換
営業損失:5億元(約102億円) 前年同期から85%縮小
年間利用者数:6.8億人 前年同期比9%増加

ここから先は

7,154字 / 11画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?