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格安ティードリンクの「蜜雪冰城」 その戦略とは

ティードリンクチェーンの「蜜雪冰城」、中国では1万店以上の店舗を持ち、海外進出にも力を注いでいる。9月に入ってIPOに向けての上場指導も受けている。この急成長の理由は一体何か。

今年6月、蜜雪冰城はあるテーマソングMVを公開した。軽快な曲調に合わせて画面いっぱいの雪だるまに似た可愛らしいマスコットキャラ「雪王」がリズムに合わせて踊るこの動画はネット上で爆発な人気を呼び、ビリビリ動画サイトでは二次創作があふれ、多くの人が歌詞の「你爱我,我爱你,蜜雪冰城甜蜜蜜~」(アイラブユー、ユーラブミー、甘々の蜜雪冰城〜)を口ずさむようになった。この事によって蜜雪冰城の名は全国に広く知れ渡った。

MVのプロモーション効果が企業の知名度を上げ、さらなる成長を後押ししたことは間違いない。だが、最も重要な要素はやはり圧倒的に低い商品価格でしょう。

まずは定番のアイスクリーム・コーン。地域差はあるものの、基本的に2~3元で買える。ドリンク類も総じて6~8元程度の値段である。他の追随を許さないような価格設定はこのブランド最大の特徴と言えるでしょう。

なぜ蜜雪冰城はこれほどの低価格を維持できるのか。ホームページの紹介によると蜜雪冰城は自社のサプライチェーンを持っている。その中でも特に注目すべきは自社開発と物流の部分。

サプライチェーン


2012年に蜜雪冰城は河南大咖食品有限会社を設立。開発から生産、プロデュース、配送までを一体化した会社である。蜜雪冰城は他にもいくつかの供給源を所有しており、それによって原料のコストを大幅に抑えることができる。それと同時に原料のクオリティーも自社でコントロールすることが可能。

物流方面では中心となる大型物流配送センターを有し、さらに全国各地に物流センターを持つことで、配送料無料を可能としている。また、倉庫を所有することで在庫管理を効率化し、在庫バランスの最善化を図ることもできる。

この二点が低価格維持の要と考えられる。

蜜雪冰城の店舗立地は消費力が低い地方都市をメインとする。客層は金銭面での余裕が少なく、かつティードリンクに目がない若者たちがメインとなる。約20元一杯のミルクティーショップが立ち並ぶ中で、味は普通かもしれないが10元以内で買えるミルクティーは若者の目にはとても魅力的に映るに違いない。実際ネット上では蜜雪冰城を選ぶ理由の一つとして「コストパフォーマンスが高い」といったコメントはよく見かける。

しかし急速な展開には必ずリスクも伴う。2021年に入って異物混入など、蜜雪冰城の店舗に関する食品安全問題は度々ニュースに上がった。9月に北京のある店舗は従業員に健康証明書がなく、経営状況も基準に満たしていないことが原因で処罰を受けた。

蜜雪冰城は当時まだ20歳の青年、張紅超が1997年に創立した。決して若手ブランドというわけではなく、小さなお店から始まって地道な経営活動を積んで現在の地位にまでのし上がり、市場価値200億元と言われるまで成長した。その基盤には自社製造ラインと配送システムによる低価格戦略が支えになっていて、マスコットキャラやテーマソングMVなどの宣伝戦略が決定打となった。

しかし、やはり店舗展開を急ぎすぎたせいか、店舗の管理に粗が出始めた。その背景にはおそらく店員に衛生問題での指導が行き届いてないことが一因として考えられる。食品問題は飲食企業にとって死活問題であり、このリスクにきちんと対応できなければ、客足はだんだんと遠のくことになるだろう。

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