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ロックダウンが解除された上海、リベンジ消費は見込めるか?

上海市は6月1日をもって2ヶ月に及んだロックダウン(都市封鎖)を解除した。

このロックダウンは、上海の消費に大きなダメージを与え、4月の社会消費財の小売総額は前年同期より48%と急落下した。5月のデータはまだ出ていないが、4月とさほど変わらないことが予想される。

封鎖が解除された今、消費の反動、いわゆる「リベンジ消費」の見込みはあるだろうか。

一部の分野ではリベンジ消費が可能

封鎖解除初日の6月1日、スーパーでは食料不足の二の舞を恐れ、生活物資を買い溜めする人の姿が多く見られた。このことから、しばらくの間は冷蔵庫や調理道具など、生活関連の消費が伸び続ける可能性がある

▲封鎖解除初日のスーパー(上海在住者より提供)

その一方で美容院などの業界は、解除されても消費者は散髪の回数を増やすわけではないので、このロックダウン2ヶ月間分の需要を取り戻せず、永遠に失ったことになる。

イギリスの調査会社Kantarが発表した上海市民向けのアンケート調査では、解除後にもっとも行きたい消費場所は、レストラン、ティードリンク店、ショッピングセンターがトップ3位となっている。つまり、これらの場所は消費の回復が期待できるということだ。

これに対し、映画館や旅行スポット、民泊・ホテル、カラオケ、ネットカフェにおける消費を減らしたいと答えた人は、増やしたいと答えた人を上回っている。

同じくロックダウンを経験した武漢市の消費市場はどうなっているのか?

上海の消費回復状況を分析するには、同じくロックダウンを経験した武漢市が良い参考例となる。

武漢市の他にも蘭州市は36日、鄭州市は29日、西安市は32日間の封鎖を実施しているが、武漢市は2020年の1月23日から4月8日まで、76日間のロックダウンと最も長い。上海市は4月1日(浦東は3月28日)から6月1日までの61日間と、封鎖期間の長さでは武漢市と一番近いのだ。

その武漢市の消費市場はその後どうなっているのか、同市の社会消費財の小売データを見てみたい。

▲武漢市統計局のデータを基に作成

76日間の封鎖およびその後の規制措置の影響により、2020年武漢市の社会消費財の小売総額は6,150億元で前年比21%減少。翌年の2021年は6,795億元まで上がったが、まだ2018年の水準にまで回復できていない。

▲武漢市の社会消費財の月別小売総額推移(赤い棒は2019年同期を超過した月)
(出典:LatePost)

また、月別データ見てみると、2020年3月から今年の4月までの2年間のうち、社会消費財小売額が2019年同期を上回ったのは3ヶ月のみである。残りの19ヶ月は全て2019年の水準を下回る結果となっている

コロナ第一波から2年が過ぎ、中国は強力な規制措置によってコロナの抑え込みに成功。経済の回復は世界の先を歩んだとしてアピールしていたが、武漢市の消費はいまだコロナ前の数値に回復していないのが現実なのである。

加えて、筆者がロックダウン中に上海在住の日本人と中国人両者にインタービューを行ったところ、先行きが不安な封鎖解除後も非必需品の消費を減らすとしている人が少なからず存在している。このことからも、上海の消費は瞬時にロックダウン前の水準に戻るとは考えにくく、少なくとも「リベンジ消費」が起こる分野や規模は、限定的であると言えるだろう。

中国において経済の中心である上海が封鎖された以上、もう中国のどこの都市が封鎖されてもおかしくなくなった。

現在、中央政府はゼロコロナ方針による経済への打撃が深刻化している現状を受け、一連の措置を出し、ダメージを受けた経済を修復する予定だ。

上海市政府も経済回復を加速させるために50項目の措置を打ち出し、外資の安定、消費の促進、投資の拡大を図る。そのうち、消費活動活性化の促進策は以下の通りである:

  • 個人による純電動自動車の買い替えは1台当たり1万元(約19万円)を補助

  • 大型貿易企業やECプラットフォームの消費クーポン発行をサポート

  • スマート家電や省エネ製品への買い替えに補助金を支給

  • 年内に非営利乗用車のナンバープレート枠を4万個増加

今回の支援策は上海において、かつてないほどの大規模な措置だと専門家に指摘されている。果たしてどんな効果があるか、引き続き最新情報を追っていく。


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