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ロックダウンは結局何を変えたのか?上海在住日本人・中国人インタビュー

上海ロックダウンが始まって1ヶ月半が過ぎた。この予想外の出来事は、上海に住む人々の生活、もしくは人生そのものを変えてしまったかもしれない。

会社から減給の通知が来て不安な気持ちが膨らむ人もいれば、コロナ感染し環境の比較的に良い隔離施設に連れられホッとした人、かつては3食デリバリー生活だったのが自炊せざるを得なくなった人。また、同じ場所に3年間住んでいたが、今まで顔を見てもわからなかったお隣さんと急に仲良くなった人など、人生の中でも珍しい経験となっただろう。

結局、このロックダウンは人々の何を変えたのか。消費習慣、メンタル、上海への気持ち等の変化について、筆者は上海にいる中国人と日本人に話を伺った。

▲1日のタイムスケジュール

筆者:ロックダウンで一番変わったことはなんですか?

白さん:収入が減りました。うちの会社は飲食業なので、ロックダウンで全店舗が閉鎖し、キャッシュフローが悪化する一方でした。

4月中旬に会社から減給の通知が来て、私のようなマネージャーは20%減給です。店舗で働く従業員は15%。4月下旬には、ランクを問わず社員全体が40%の減給を余儀なくされました。この頃になると、人事や財務以外の人はもうやる事もなくなり、毎日の打刻も免除されました。私の仕事量もだいぶ減りましたね。

2019年にコロナが発生して3年が経ちますが、飲食業界にいると、いまだにこの業界は2019年より前の水準に回復していないのだと実感します。2020年にうちの会社は一度リストラを行いましたが、結局今回のロックダウンで残された人も減給されることになりました。

▲毎朝は家で抗原キットで検査(本人より提供)

筆者:ロックダウンの間にメンタル面は何か変わりましたか

白さん:やはり収入に対する不安が大きいですね。外に出られないことは私にとってそんなに不安じゃなかったです。元々、家に引きこもってドラマを見ることが好きなので、デリバリーや宅急便が届かない以外は特に不便を感じませんでした。

筆者:消費習慣に何か変わりがありましたか

白さん:そうですね、ロックダウンの前は好きなものを気分に任せて買うタイプでした。ロックダウンで食料不足の恐ろしさを覚えたので、今後は食品や生活必需品を家に買い溜める習慣を身につけようと思っています。今回のコロナ情勢は去年よりも深刻なので、今後は非必需品の消費は減ると思います。

筆者:解除されたら、何がしたいですか

白さん:転職するかもしれないですね。もうコロナの終焉が見えないので、真っ先に影響を受ける飲食業界から離脱したいです。でも自分はもう30代なので、転職も慎重にしないといけないなと思っています。

筆者:上海に対する気持ちは変わりましたか?

白さん:上海から他の都市に移住する計画はないですね。もう十数年もここに住んでいるので。10歳くらい若ければ、住む都市を変えたかもしれません(笑)

▲1日のタイムスケジュール

筆者:ロックダウンで一番影響を受けたことはなんですか

塩谷さん:仕事への影響が一番大きかったですね。うちはECの会社なので、物流が止まると、商品を発送できない。売上が下がることに悩みました。中国では「发票(領収書)」がないとお客さんにお金を請求できないのに、従業員には給料を満額支払わないといけないので、キャッシュフロー2ヶ月先はやばいです。

あと、4月17日からビザが切れて、今の状態では更新もできません。幸い、知り合いの人に確認したらまだ大丈夫そうですが···。

筆者:上海あるいは中国への気持ちは変わりましたか

塩谷さん:もちろん日本に帰りたいと思いましたけど、お客さんが中国に残っているので、帰れないです。上海への気持ちは変わっていませんが、中国で仕事をする以上、政策さらには法律のリスクも意識しないといけないと感じました。

あと、物流とか実体のあるサービスのほか、在宅でもできるメディア系のサービスなど、外部環境に左右されずお金を稼げるサービスを提供できるようにする必要があると感じました。

筆者:個人の消費習慣は変わりましたか

塩谷さん:そうですね、以前は自炊するのが面倒くさかったので、ほとんどをデリバリーに頼っていました。それでも、ロックダウンの1ヶ月前にたまたま自炊しようと思い、フライパンや包丁など、調理道具を購入していて助かりました。野菜配給があるから、ひたすらそれを煮たり、焼いたりしています。料理の腕は初心者から中級になりましたね。ロックダウンが解除されても、お水やカップラーメンなど買って家に置くようにしたいと思っています。

筆者:メンタル面に何が変わりましたか

塩谷さん:最初はロックダウンを楽観視していて、1週間や2週間で終わると思っていました。1ヶ月も超えると、人件費は出るけど収入がないことに焦り、ストレス発散に家で叫んだりしていましたね。

筆者:解除されたら、何がしたいですか?

塩谷さん:営業をしたいです。昔のお客さんとはオンラインでやりとりできますが、新規のお客さんはやはり直接会った方がやりやすいので。


▲1日のタイムスケジュール

筆者:感染して施設で隔離された経験を聞かせてください

彭さん:4月18日から少し喉が痛く、翌日になると熱が出てきたので、抗原キットで検査し、陽性となりました。20日には住民委員会の人が家にきてPCR検査を行い、感染を確認されました。私が住むシェアハウスでは他にもすでに感染者が出ていて、とにかく早く治療してほしい気持ちでした。

21日、国家会展センターにより改造された隔離施設に移動して、そこで2週間を過ごしました。最初の7日間ずっとベッドで横になってようやく体の調子がよくなったので、ボランティアの募集を知り、それに応募して、食べ物の配給や、PCR検査結果の告知などしていました。

隔離施設にいるときは少なくとも食料の心配はなく、施設の中には絵画室や子供の遊楽室も設けられて、本音を言うと、家にいる時より良い生活を送れました。もちろん毎日搬送されてきた新しい患者と施設責任者間の揉め事がたくさんあって、1棟3,000人以上の患者を管理する上での混乱もありました。

▲彭さんが住んでいた隔離施設(本人より提供)

筆者:隔離施設の経験、そして今回上海のロックダウンで一番変わったことはなんですか?

彭さん:健康の重要性を痛感し、規則正しい生活を送るようになりました。仕事するときはしっかり仕事して、休むときはちゃんと休む。もう夜更かしをやめ、夜11時には寝るようになりました。

筆者:消費習慣に何か変わりはありましたか?

彭さん:ロックダウンが始まった時、食料不足を心配して団体購入でたくさん購入したので、通常の生活よりもお金がかかりましたね。今は1日3食のご飯以外お金を使ってないです。
最近ECのセールイベントの宣伝が目に入りましたが、もう消費意欲は全くないです。以前の私は値段を気にせず好きなものを購入していましたが、今は物欲自体なくなりました。

筆者:解除されたら、何がしたいですか?

彭さん:とにかく外に出て新鮮な空気を吸いたいです。中山公園で散歩して、どんなポーズで写真を撮るかも決めました(笑)。

筆者:上海に対する気持ちは変わりましたか

彭さん:そうですね、上海に来て8年になりましたが、コロナ対策はともかく、ここに来た目的は、お金稼いで生活することなので、一定の困難と圧力があって当然だと思います。ロックダウンをきっかけに上海現地のおばちゃん、おじちゃんと話ができて、改めて包括的な都市だと感じました。


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