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ユニクロがトップから転落、中国ファッション市場の勢力変化

アパレルの小売総額はマイナス成長

経済減速と新型コロナウイルスの影響で、中国の消費低迷はすでに周知の事実となった。

上半期における中国金融機関の新規住民貯金額は10兆元にのぼり、前年同期より約3兆元増。全体的に中国人は消費よりも貯金する傾向にあるようだ。

ただ、消費不振の状況下でも成長を維持している業界とマイナス成長となった業界があり、そのなかでもアパレル業界は最も打撃を受けた業界の一つだと言えるだろう。

中国国家統計局によると、1~7月中国の社会消費財小売額は、家具、飲食、アパレルの前年比成長率はそれぞれ-8.6、-6.8、-5.6と、最も苦境に直面している業界だということがわかる。

コロナの感染拡大により、中国経済にさらに追い打ちをかけただけでなく、消費の第一が生活必需品となり、ファッションや化粧品の需要は非常に低くなった。

ユニクロはトップから転落

ユニクロといえば、2002年に中国市場に進出し、2020年には中国の店舗数が初めて日本の店舗数を超え、中華圏の収入が会社全体収入の1/4を占める、中国で大成功した日本アパレルブランドである。しかし、そんなユニクロも中国市場でトップの座を失うこととなった。

▲2021年Tmallダブル11と2022年618セールの売上女性ファッション売上ランキング

ユニクロは2015年-2020年、中国最大ECサイトTmallのダブル11(独身の日セール)において、女性ファッションカテゴリー1位を6年連続保ってきた。

しかし、昨年のダブル11(独身の日)セールでトップ2の座を中国本土ブランドのITIB(新興のデザイナーズブランド)とBOSIDENG(ダウンジャケットブランド)に奪われ、ユニクロは3位に転落したのである。さらに今年の618セールではワンランク巻き返したものの、1位は中国ブランドのURでユニクロは2位と、首位奪還には至らなかった。

ユニクロの売上が減少しているのはECだけではない。実店舗においても、コロナの感染拡大により閉店が相次いでいる。今年3月には最大133店舗が臨時休業するなど、首位から転落した様子が見て取れる状態だ。

6年連続で首位を獲得してきたユニクロは、ここにきてなぜ売上が減少したのだろうか。原因を知るため、中国でユニクロに関するニュースをチェックしてみると、そこには値上げに関する批判が多く見られた。最も大きな原因として、シンプルなデザインで何にでも合わせやすく、高品質、高コスパという点が中国消費者に好まれていたが、値上げによりユニクロは高コスパという魅力を失いつつあるようだ。

さらに、近年「国潮」ブームで中国本土のファッションブランドが国民に支持され、海外ブランドが逆風にさらされている状況にある。これはユニクロに限ったことだけではなく、複数のブランドがウイグル綿花などの政治的事件により、中国市場で苦境に立たされている。

実際にH&Mは、ウイグル綿花の使用を禁止したとして不買運動が起き、EC店舗がプラットフォーム側によって一年以上閉鎖された。これにより大きな打撃を受けたことは想像に難くないだろう。また、他にもGAPやナイキ、アディダスといった世界的に有名なブランドも中国市場での売上はいまだ芳しくない。


現地ブランドが台頭

ファッション市場全体は厳しい状況に置かれているが、一歩前進したブランドも存在する。

前出のTmall売上ランキングをみると、2021年ダブル11では、海外ブランドではないが現地ブランドであるITIBとBOSIDENGは、長年1位だったユニクロを超えてトップ2に躍進。

ITIBは設立して2年も経ってない新興ファッションブランドであるが、当時タオバオライブで「ライブコマース女王」と呼ばれるviyaによるライブ販売を行い、1位という快挙を成し遂げた。

また、売上2位のBOSIDENGはITIBと正反対の中国老舗ブランドで、ダウンジャケット専門のブランドである。近年は国際的ファッションショーへの参加や、有名なデザイナーとコラボするなどブランドイメージを刷新。国潮ブームを追い風に再ブレイクを果たした。

Z世代の若者がBOSIDENGを着ているのをよく見かけるようになり、大型ショッピングセンターにもBOSIDENGの出店が増えているなど、BOSIDENGの人気ぶりが体感できる。

さらに、618セールで1位となったUR(URBAN REVIVO)は2006年に創立した現地ブランドで、創立当初はZARAを手本にし、都会の女性ホワイトカラーに高コスパの商品を提供してきた。

定番ものの多いユニクロよりデザイン重視であることが評価され、コロナの影響を受けたにも関わらず、同社の2020年の売上は50億元(約1034億円)を超えている。現在、実店舗は350店舗まで拡大し、ライブコマースでの販売も好調のようだ。

経済減速による消費が低迷し、王者のユニクロが首位から転落するなど、ファッション業界に暗雲が漂っている中国。この複雑な市場環境の中で次は誰が制覇するのだろうか。


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