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ぼくと脳出血と右麻痺と

唐突な告白をするけど、
ぼくは21歳の時に、脳出血を患った。
もう10年前のハナシだ。
どうしてそんなことになったかという経緯はまた別の機会に。

当時のぼくといえば風邪を引くことすら珍しく、
お酒も殆ど呑まない、煙草も吸わない、
当然彼女もいない、
アニメとゲームが大好きな健全アホ男子だった。
(どれくらいアホかというと、突然京都からチャリンコで琵琶湖に向かって、着いたはいいけど帰り道が果てしなくて泣きそうになるくらいにはアホ)

そんな愉快アフォ男子だったけれど、
ふとした出来事から脳出血になってしまう。
最近では早期に発見できれば後遺症も少ないらしいが、

ぼくの場合は病気の後遺症として「右半身麻痺」が残った。

そこから数年リハビリを重ねて、現在に至る。
今は右半身麻痺があることを自己申告すると驚かれる。

恐らく同じような麻痺症状に悩む人はいるんだろうと思う。

これはそういう麻痺になっている人、
あるいはその家族や周りの人、
あるいは通勤中に読む文庫本を忘れた人の暇潰しのための経験談である。

ちなみに何の役にも立たない文章である可能性も捨てきれない。
その場合は個人の日記、あるいはネットに漂う駄文の一つだと思ってもらいたい。

前置きが長くなった。
そうは言っても、10年程度経った今でも体の右側は使い難い。

文字を書くには他人の数倍時間がかかる。
小中高と続けていたドラムも叩けなくなった。
TVゲームをするときも、連打や細やかな操作は苦手だ。

右足は寒くなると動きが悪くなる。
走ることは苦手だし、
右側の靴のつま先がすぐに擦り切れる。
あと妙に右側だけ汗をかく。

つまり、ぼくの右側は未だポンコツである。
ただでさえ、人間性がポンコツなのに!

でも患った直後は、もっと酷かった。

利き手と効き足は全く動かなかった。
一人で立つこともままならず、今まで当然のようにできていたことができなくなった。
右側についているのは「手」や「足」ではなく、意志が通じない「肉塊」と化していた。

さてここで重要なのは、そんな動かなかった手足がどうして今はまがりなりにも動いているのか、であろう

何か特別な治療をしたのか?
それとも新薬を投与したのか?
あるいは海外で特殊な手術でもしたのか?
もしかして、ナントカカントカのカミサマを信じることによって奇跡の力で復活したのか?

先に断っておくけど、これはスピリチュアルな心の在り方の話でも、なんとかの神を信じれば治る的な話でもない
そういう話はもっと胡散臭そうな人たちに譲る。

不安な状態では、何かを信じたり、心の安寧を求めることは必要だ。
けど、超常的なものを「信じる心」が麻痺の症状を改善してくれるなんてことはない

はっきり言う。
断じて、ない。

そんなものを信じている暇があったら、自分を信じたほうがよっぽどいい。

では麻痺症状を乗り越えるために真に必要なものはなにか。

答えを先に書けば、ぼくの場合は
スパルタとも思えるリハビリを毎日続ける
ことであった。

ただ全ての麻痺患者が同じ答えで何とかなるわけではないだろうから。
あてはまらない場合は、許してほしい。

ともあれ、ぼくは入院中、
理学療法士さん、作業療法士さん、言語聴覚士さんと共に行うリハビリ以外の時間は何もすることがなかった。
なので、フリーの時間はほぼ自主リハビリに時間を充てた。

耳にiPodのイヤホンをつっこんで、
ラジオ「伊集院光 深夜の馬鹿力 Podcast」を延々と聞きながら、
伊集院氏のバカ話にニヤニヤしながらリハビリを行った。
下らない話を聞いていないと、笑えない状況だった。

そういえば毎日1人でリハビリばかりしていたからなのか、入院していた時はテレビを殆ど見てなかった。
テレビカードがだだ余り状態だったことを思い出す。
日曜日のスーパー戦隊と仮面ライダーだけは別。
いくつになってもヒーローは勇気をくれる。
ただ様子を見に来た看護師に生暖かい視線を送られていた気がする。
たぶん気のせい…大の男がワクワク顔で朝っぱらからヒーロー番組見てることなんてよくある…はず。

本筋に戻そう。

半身麻痺になった人にとって、体を動かすことはキツい。
今までのあらゆる動作が重くなる。身体を起こすだけでも一仕事だ。
だから入院してる間、大半をベッドで過ごしたくなる。

でも、ベッドに居座っている限り「理想の改善」はない

理想に近づきたければ、過酷なトレーニングを行うスポーツ選手の如くリハビリをすべきだ。
リハビリ、リハビリ、リハビリ

もちろん、病院や病室を同じくする人々に迷惑をかけてまでやってはいけない。

無論、体調を崩すまでやってもいけない。
その辺りはケースバイケースだ。

メニューは自分のリハビリを担当してくれていた方々と相談したものをやった。

こんなことを繰り返して意味があるのかわからなくても、リハビリを繰り返すしかない。
効果がすぐに出るわけではない。
効き目があるのか無いのかわからないリハビリを続けるのは、ゴールのないマラソンみたいなものだ。
その辛さは本人だけにしかわからない。

しかし、言いたいことはこの一点に尽きる「リハビリは辛いが、効果があった
それはぼくが実証済みだ。

手術!とか、薬!ではなんともならないのが麻痺患者の辛いところではある。
ただ、逆を言えばそれらが無くても改善していけるということだ。

さて今後はたまに思い出したように、経験談を書こうと思う。

主には自分の記憶用だけど、同じく麻痺などで辛い人、若い人に「不安ばかりではない」んだと思ってほしい。


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