見出し画像

生成AIを活用したLayerX新規事業立ち上げのリアル


2023年の年末にBtoB事業開発アドカレ祭りなるものが開催されており、尊敬するLayerX BizDev大先輩のスワッチさんに懇願して1枠頂きました。
今回は生成AIに関して今Bizサイドで見えている世界をざっくばらんに共有できればと考えております。




はじめに

LayerXでBizDevをやっておりますChadです。LayerXは立ち上げから参画しておりまして、ブロックチェーンのBizDevから始まって今は生成AI(LLM)の事業立ち上げとBizDevをやっております。
今回は生成AI(LLM)を使った新規事業にどうやってトライしているのか、まだまだ道半ばですが、生成AI(LLM)の事業立ち上げ7ヶ月を記載してみました。今後新規事業を作りたい方や、LayerXの中を立ち上げを覗き見したい方、生成AI(LLM)で何か挑戦してみたい方などに少しでも参考になると嬉しいです。


早速脱線ですが、各会社にはそれぞれの得意な戦い方があり、勝ちパターンを研究してみると面白いなと感じております。
例えばCyberganetさんの場合、ある程度成熟している/成熟することが明らかなマーケットに対して、エネルギーの高いメンバーの強いコミットメントで事業を立ち上げにいくパターンが多い印象があります。
LayerXの場合は、新しいテクノロジーの要素を上手くプロダクトに落とし込み、圧倒的な体験の良さを実現させることで新たな価値を提供するというパターンが今のところワークしている印象です。

現在LayerXでは得意な戦い方である新しいテクノロジー、具体的には生成AI(LLM)を活用した新規事業に取り組んでおりまして、今日はそんな新しい技術を活用しつつ新規事業を作ることのリアルを共有出来ればと思います。
※以下で生成AIのことをLLM(Large Language Model)と表現します。



なぜ生成AI(LLM)にかけるのか?


個人的には事業を考える際に2つのポイントを意識しており、今回のLLMはそれらにのポイントに当てはまっているためコミットメントを決めました。

1つ目のポイントは、事業特性として川の流れが速い場所を選択するという点。川の流れの速さとは、世の中の不可逆な流れ、特にその不可逆な流れの中で社会へのインパクトが大きな領域のことで、スマートフォン、ブロックチェーンなど新しい技術の出現、また排出権取引、大麻の解禁などの法的な変化などが挙げられます。
今回のLLMも上記のようにゲームチェンジが起こりうる可能性が非常に高い領域だと思っておりまして、そこで発生する変化に最速でアジャストすることで世の中に大きな価値を提供していきたいと考えています。
2つ目のポイントは、長期的にみてこの技術の流れは不可逆かという点。10年スパン、30年スパンで見た時にLLMが世の中に大きなインパクトを及ぼすことはほぼ確定された未来だと考えています。
両方を満たすことで、大局的にはチャンスに溢れたマーケットが出現しますので、今後数十年にわたってビジネスのボーナス期が到来します。




生成AI(LLM)って何が凄いの?


LLMの凄さはChatGPTを触られている皆様であれば釈迦に説法かもしれませんが、私が衝撃を受けたのは「エンジニアでなくても、誰もが簡単にAIの仕組みを使えるようになり、システム自体が自己学習が可能な状態になっている」という点であり、大きなブレイクスルーだと考えています。
これまではAIで何かモデルを作ろうとすると、非常に多くの準備とテクノロジーの理解が必要でした。それ故に将棋や囲碁などルールが決まっている限られた領域で人をのみ人間を超える成果を残してきました。
LLMの登場で、モデル作成の準備が非常に少なくなり、誰でも自分の業務にアジャストして利用することができるようになっていきます。自分の良きアシスタントとして活用することで各々の生産性を大きく向上させることができるのです。

SoftBankの孫正義さんは、これから約20年以内にAIと人間の知能差は、人間と金魚ぐらいの差が出ると言っており、これまで人間の特権とされてきた思考・情報の取捨選択が置き換わる未来はワクワクしますね。

https://www.youtube.com/watch?v=h3052XnZhVI より引用


自分は20年後金魚なんだと考えるとキャリアプラン、教育などありとあらゆる場面で前提条件を変える必要も出てきそうです。
孫さんの動画は本当にワクワクするので必見です。まだ見ていない人はぜひ見てください。



LayerXではテクノロジードリブンな事業をどうやって作っているの?


LayerXではその技術とどう向き合い、どう事業化に取り組んでいるかをお伝えします。
まず、LLMと言っても活用可能な領域は多岐に渡るので、その中で特にどんな領域に取り組むべきかを決める必要がありました。

最初に決めたのは非チャット領域に絞るということ。背景としては、ChatGPTを始めチャット系のサービスというのはあくまでLLMを使った手段の1つであり、なんでも入力できてしまうが故にユーザーのプロンプトエンジニアリング次第で効用が大きく変わってしまうという事実が見受けられました。LLM黎明期にここをユーザーに依存させることは、プロダクションにおけるユーザーの負荷が高くなりすぎるのではないかと考えました。
例えば、エンタープライズでAzure Open AIなどを導入したものの、使いこなせている社員さんがほとんどいないという話を様々な場面で伺います。
上記の理由により、まずは非チャット領域で、ホワイトカラーが日々行う大量の情報を扱う業務、具体的には情報の統合・要約・取捨選択などをサポートするパートナーとして生成AIを活用してみようという初期仮説を作りました。




新しいテクノロジーを事業に変換する難しさ


新しいテクノロジーは不確実な技術なので、新規事業の複雑性が高くなるなと感じております。具体的には、サービスを作る上では日々お客様が行っている業務の中でLLMに相性の良さそうなバーニングニーズを発見する必要があります。
当社では第一原理に基づき、LLMを活用できる前提で現在の理想の業務を0から構築する際に最も理想的な業務フローは何かという観点で業務を整理し理解することで、LLM誕生前ではバーニングニーズに対象にならなかったポイントが発見されることがよくあり、実際お客様とのディスカッションのなかで、これまでwebサービスがほとんど入り込んでいない領域でソリューションの種が複数見つかっています。
第一原理を使った業務整理は非常に時間がかかりますし、お客様にうまく質問しないと表面上のバーニングニーズにたどり着けなかったりするので大変です。

バーニングニーズが見つかったとして、次に壁になるのがそこにフィットするアウトプットを本当に作れるかという部分です。
新しい技術を使うことで、お客様が抱える問題に対して既存のシステムでは解決できないアプローチ手法をとれる一方で、新しい技術不確実性によって、そのソリューションは実現不可能という罠が所々に出現します。LLMを使った際にお客様が求める精度を担保できるのか、そしてLLMが作成するアウトプットは本当に業務で使えるほど信頼できるのか。そのクオリティがシステム投資を実施するに値するレベルになっているのかなどです。
より具体的に精度面でお伝えすると、その業務の正確性は80%で十分なものか、90%必要なのか、99%でも不十分なのかは実際の業務内容ごとに異なります。そして現時点でのLLMで何%まで精度をチューニングかという問いと、他の機能でどこまでをその不足分を担保できるのかという通常のweb開発では直面しない複雑性が発生します。

我々が4年前に取り組んでいたのもまさにそこに壁があり、ブロックチェーン技術は非常に素晴らしいものだったのですが、真価を発揮するにはまずデータブロックチェーンに貯める必要があり、そこに至るまでのお客様の説得コストや時間軸と、我々が期待しているビジネスのスケール軸にギャップがあり非常に苦労しました。

その際に感じたのは、テクノロジーはあくまで手段であり、目的になってはいけないということ。テクノロジーは、お客様への価値最大化のために必要に応じて必要な箇所で使えばよく、今回のLLMもあくまで手段の1つに過ぎないことは注意しながら進める必要があると考えております。



LayerXで生成AI(LLM)に挑戦する意味


LayerXではエンジニアがビジネス感覚を持って検討を一緒に進めてくれるので、この技術的な限界点の把握やシステムのブラッシュアップが非常にやりやすいなと感じております。
例えば、プロジェクト発足の初期は代表の松本が会社で先陣を切ってこの領域を研究するLLM Labsというものを作り、自身で手を動かしながら顧客と対話をしながら1歩1歩進んでいったため、この限界点とお客様との期待値コントロールがある程度実現できたのではないかと考えています。

一方で今回のLLMは世の中のありとあらゆる領域に侵食し、業務効率化できるチャンスがあるため、どんな山の登り方をするかが非常に難しく、そこを0から考えていける機会があるというのはなかなかないチャンスだとも考えております。
我々はお客様との共同プロジェクトが多いため、まだまだオープンに出来ない事がたくさんあるのですが、10年後には当たり前に使われている仕組み必死に作っています。
これからどんどんLLMが進化していく中で、今は当たり前のように出来ないことが、魔法がかかったかの如く実現できるようになる未来はテクノロジーカンパニーの醍醐味です。



ここまで読んでいただきありがとうございます。
BizDev*LLMという領域に関してもっと知りたいよー話を聞いてみたよーという方がおられたら、ぜひお気軽にお声がけください。
一緒に働く仲間もこっそり募集しております。10年をかけるに値するテーマなので、どこで挑戦しようかと悩んでおられる方がおられましたらぜひカジュアルに面談しましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?