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水槽の詩


僕のいない世界で

君がいると知った時

君は誠に幸せに生きていると知った時

僕はもう死んでいい

水槽のぶくぶくに

一縷の希望を託していた


君だけだった


君の呼吸が美しくて

君の呼吸が僕の呼吸で

君の吐いた泡にキスをしていた

コンクリートで固められた世界のなかの

唯一の幸せだった

もうそれが君じゃないと知った

ただの機械だと知った

この世界は君じゃないと知った

もう僕は死んでいい

君のいない世界で

僕は死ぬよ


茶埜子尋子

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